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価値の設計図「コンセプトの教科書」
こんにちは、ナカムラです。今回は「コンセプトの教科書」という書籍を紹介したいと思います。
本書は、TBWA/HAKUHODOでCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)を務める細田高広さんの著作で、曖昧模糊としている『コンセプト』という概念に、明確な定義を与えてくれる書籍となっています。
noteでは、その定義と、コンセプトの作り方に焦点を当てていきます。
1)コンセプトとは
本書では、辞書的な定義とビジネスシーンにおける定義が記述されています。
<コンセプトの定義>
・辞書的な定義:全体を貫く新しい観点
・ビジネスシーンにおける定義:なんのために存在するのか(WHY)
例として挙げられているのは、ザ・ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』というロック史上初のコンセプトアルバムです。
それまでは、シングル曲を束ねたものをアルバムと呼ぶのが一般的でしたが、このアルバムは”架空のミリタリーバンドが20周年を祝うショーを開催する”という設定のもと製作されました。この”架空のミリタリーバンドが20周年を祝うショーを開催する”という設定=全体を貫くストーリーがコンセプトに該当します。
他方、ビジネスにおけるコンセプト例として、以下のようなものが挙げられています。
<ビジネスにおけるコンセプトの例>
・エアビーアンドビー:世界中を自分の居場所にする(Belonging)
=現地で暮らすような時間を提供する
・スターバックス:第3の場所(3rd Place)
=家と職場の間にくつろげる場所を提供する
・エバーレーン:徹底的な透明性(Radical Transparency)
=ファッション業界の闇にメスを入れる
例を見ると、各社がなんのために存在するのか(WHY)を示す言葉になっていることがわかります。すなわちビジネス世界において、コンセプトを作ることは、新たな意味を創造することであると定義できます。
コンセプトの役割
抽象度の高い定義に留まらず、本書ではコンセプトの役割についても触れられています。
<コンセプトが果たす役割>
①判断基準になる
②一貫性を与える
③対価の理由になる
⇒すなわち、『価値の設計図』として機能する。
事業運営には多くの人がさまざまな役割を持って関わりますが、コンセプトがあることで、それぞれの領域において意思決定を行う際に「それはコンセプトに合致しているか?」と立ち返ることができます(①判断基準)。
その判断基準の下に形作られることで、外からそのブランドを眺めた時に、整合性の取れた存在として認識してもらうことができます(②一貫性)。
そして何より、コンセプトはそのブランドが存在する意味・価値(WHY)を示すので、顧客がお金を払う理由としても機能します(③対価の理由)。
これらの役割を担うことで、コンセプトは作り手にとって『価値の設計図』として機能する、と説明されています。
コンセプトの条件
実際にコンセプトを作る際に、コンセプトがこれらの役割をきちんと果たすことができるかを見極めるチェックポイントが存在します。
<機能するコンセプトの条件>
①顧客目線で書けているか(valuable)
5GBのMP3プレイヤー ⇒ 1000曲をポケットに
②ならではの発想があるか(original)
高品質なものを、低価格で ⇒ LifeWear
③スケールは見込めるか(scalable)
映画の専門店 ⇒ エンターテイメントのセレクトショップ
④シンプルな言葉になっているか(simple)
ビジネスの身だしなみのひとつとして香水を ⇒ 香りをビジネスウェアに
この4つの条件を満たし、+αとして、その言葉で自分の体温が上がるようなワクワクがあるか?が重要であると語られています。
2)コンセプトの作り方
そんな優れたコンセプトをどう作ればよいのか?が特に気になるポイントです。ここからはコンセプトの作り方について触れていきます。
良いコンセプトは良い問いから
いきなりコンセプトを何にしようかと考えるのではなく、コンセプトを導く問いを立てることが重要であるとされています。そしてその問いの質が、コンセプトの質に直結することになります。
<良い問いの条件>
良い問い=自由度×インパクト
・自由度…発想を広げられるスペースがある
・インパクト…①広いインパクト(影響範囲)/②深いインパクト(影響深度)がある
また、一つの問いから答えを導くのではなく、問いを変えることで解決策の可能性を広げるリフレーミング(枠組みを変える)という手法が推奨されています。
問いの種類
リフレーミングするにあたり、問いを複数立てなければいけません。本書では、そんな時に使える問いの切り口がいくつか紹介されています。
<問いの種類>
①全体の問い…部分最適ではなく全体に目を向ける
もっと速いエンジンをつくるには?⇒レース全体を通して勝てるマシンは?
②主観の問い…自分の想いや不満から考える
白Tを流行させるには?⇒白Tをみんなの正装にするには?
③理想の問い…現実的な状態ではなく、ぶっ飛んだ理想を掲げる
交通事故を減らすには?⇒人的な交通事故がなくなる世界を作るには?
④動詞の問い…名詞ではなく動詞に着眼し、行動を再発明する
新しいコップを作るなら?⇒水を運ぶ新しい手法をデザインするなら?
⑤破壊の問い…何を作るかではなく、何を破壊すべきかで考える
今売れるパンプスとは?⇒パンプスは窮屈だという常識を覆すには?
⑥目的の問い…対象物を手段とした場合の、真の目的を考える
鉄道事業をどう発展させる?⇒鉄道を手段としたら真の目的は?
⑦利他の問い…誰がどう幸せになるのかを考える
自社技術で他にないサービスを作るには?⇒自社技術で誰をどう幸せにするか?
実際に自分でも問いを作ってみて、上述したようなBefore⇒Afterのイメージを持っておくことが大事だと感じました。まずは左側のありがちな問いを立てて置きつつ、①~⑦の切り口で問いを変換していくと、差分も明確になり、その問いを使って思考するイメージが湧くように思います。
ストーリーの骨子を作る
前述した問いをもとに、コンセプトの種が生まれてくるので、それが本当に価値になるのか?を検証するステップが必要です。
本書では、一つの物語(ストーリー)にすることで、価値を伝えやすくなり、コンセプトも洗練されるとされています。インサイト型ストーリーとビジョン型ストーリーの2つが存在しますが、前者を例にご紹介します。
<インサイト型ストーリーの骨子>
1. 昔々あるところに、△△で困っている生活者がいました。
2. しかし、世界中の誰も助けることができません。(競合には××という問題がありました。)
3. そこで、○○は自らの特殊な力を使って手を差し伸べました。
4. つまり、□□という解決策によってユーザーは救われたのです。
このストーリー骨子に当てはめることで、いわゆる3C(CUSTOMER/COMPETITOR/COMPANY)の視点を踏まえた上で、コンセプト(価値)を明確にすることができます。
言葉を研ぎ澄ます
コンセプトを一言で言い当てるのは、プロでもない限りとても難しい作業です。ただし、一言に凝縮するための考え方を知っておくことで、キーフレーズを生み出すことができるかも知れません。
まず、コンセプトを以下の文章のような構造で整理します。
![](https://assets.st-note.com/img/1715479164417-cD1PWuCuyI.png?width=800)
実例も挙げておくと、このようなイメージになります。
■スターバックス
顧客:都市生活で疲れた人たち が
目的:街中でくつろぐ ために
役割:職場と家のあいだにある憩いの場所 の役割を担う
■Kindle
顧客:世界中の誰も が
目的:あらゆる書籍を60秒以内に手に入れる ために
役割:書店 兼 電子書籍リーダー の役割を担う
その上で、ここから言葉を削ぎ落とし、キーフレーズにしていきます。その際に参考になるのがキーフレーズの3類型というものです。
![](https://assets.st-note.com/img/1715479426222-4k7atsqEO0.png?width=800)
要するに、前述の3行構造の内、目的をコンセプトワードにするか、役割をコンセプトワードにするか、或いは連結して作るか、の3パターンに分かれるということです。
先に挙げた例で言えば、スターバックスは役割型、Kindleは目的型となります。
3)最後に
本書の内容、構成はとても洗練されていて、読みやすいのと同時に、きちんと理解しながら、間にあるワークを解いていくことで実践的な学びが得られるものでした。
改めて感じたのは、「問い」と「引き出し」をどれだけ豊富に持てているかが重要であるということです。
7種類の問いの型がありつつも、具体的にはどんな言葉で、どんな問いの一文になるのか?を各パターン毎に持っていないと、実践でつまづくことになると思いました。
また、世の中の優れたコンセプトをただ1行の言葉として知っているだけでなく、本書で紹介された構造でインプットし、複数の引き出しとして持てているかも、実際のビジネスシーンでは重要であると思います。
以上、価値の設計図「コンセプトの教科書」でした。最後までお読みいただきありがとうございましたm(_ _)m
ナカムラ
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