第94回アカデミー賞予想
本日は現時点でのアカデミー賞予想を書いていきたいと思います。
◎→確実
○→ある程度確実
作品賞
◎『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
◎『ウエスト・サイド・ストーリー』
◎『ドリームプラン』
◎『ベルファスト』
○『コーダ あいのうた』
○『Licorice Pizza』
○『DUNE / デューン 砂の惑星』
『ドント・ルック・アップ』
『チック、チック…ブーン!』
『マクベス』
次点
『ナイトメア・アリー』
『愛すべき夫妻の秘密』
『スペンサー』
『ハウス・オブ・グッチ』
ダークホース
『ドライブ・マイ・カー』
『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』
『Pig』
今までは5~10作品の枠でしたが、今年からは10作品固定になった作品賞。
現時点で確実だと思われるのは4作品、抜群の評価で前哨戦を独走するのは『パワー・オブ・ザ・ドッグ』です。『ピアノ・レッスン』のジェーン・カンピオンが久しぶりに本領発揮、女性監督作品ということ、そして内容の男性性を相対化しようとする試み含めて完璧な一作であることは間違いありません。
そしてトロントの観客賞に輝き一気にフロントランナーに躍り出たのが『ベルファスト』です。ケネス・ブラナーは浮き沈みが激しく、前作『アルテミスと妖精の身代金』は大酷評の嵐でしたが、本作は絶賛多数、名誉挽回した感があります。ただ、批評家賞ではノミネート止まりのところが多く、受賞は厳しいのではないかという予想が大半です。
『ドリームプラン』は作品自体は絶賛されていますが、監督の知名度が低く、ウィル・スミスとアーンジャニュー・エリスの演技賞に票は集中するのではないかとの見方が大半です。ただし、今年唯一の黒人映画でもあるのでノミネート漏れはあり得ないでしょう。
企画自体を疑う見方が多数だったのが一変、プレミアされてから一気にBUZZを上昇させたのは『ウエスト・サイド・ストーリー』です。言わずと知れた名作『ウエスト・サイド物語』をリスペクトも込め、かつ現代的な視点も盛り込んだ内容になっているということでとても楽しみです。リメイク作品が作品賞をとるというのは『ディパーテッド』がそうでしたが、オリジナル版は香港映画、アメリカ映画をリメイクしたアメリカ映画が作品賞をとったことはこれまでにありません。もし受賞したら快挙ですが、そこまではいかない気がします。
『コーダ あいのうた』はフランス映画のリメイクですが、昨年の『ミナリ』のような立ち位置を確立しつつあります。今年を代表するインディー映画として候補入りは間違いないでしょう。本作は「ここは受賞間違いなし!」という部門がなく(あえて言えばトロイ・コッツァーの助演男優賞?)、予想以上の伸びをみせるかもしれません。
作品を発表するたびに絶賛に包まれるポール・トーマス・アンダーソンの新作『Licorice Pizza』は前評判通り絶賛、賞レースに名乗りを上げました。ただしコメディ映画であるということ、アジア人差別描写が含まれることが報道され、少しマイナスイメージが付き始めています。
『DUNE / デューン 砂の惑星』はSF映画として異例なほどの健闘をみせており、候補入りはまず間違いないでしょう。ただし続編ありきの作品のため、『ロード・オブ・ザ・リング』のように最終作で受賞という可能性はあっても本作での受賞は考えづらいですね。
残り三枠の争いとなりますが、コメディ政治劇の名手アダム・マッケイの『ドント・ルック・アップ』、絶賛され批評家賞でも候補入りを続けている『チック、チック…ブーン!』、アカデミー賞常連ジョエル・コーエンの白黒映画『マクベス』をあげてみました。ただしこれら三作品にも弱点があり、『ドント・ルック・アップ』は評価が割れどちらかというと否の方が多いこと、『チック、チック…ブーン!』は作品が小さすぎること、『マクベス』はシェイクスピア劇というオスカー受けし辛い題材であることがあります。
そんな中次点としては『ナイトメア・アリー』『愛すべき夫妻の秘密』『スペンサー』『ハウス・オブ・グッチ』をあげました。『ナイトメア・アリー』は『シェイプ・オブ・ウォーター』でオスカーを制したデルトロ作品でありながら絶賛一辺倒というわけではなく、あくまでノワールというジャンル映画であることが弱点です。『愛すべき夫妻の秘密』は前作『シカゴ7裁判』が絶賛された脚本家出身監督アーロン・ソーキン作品ですが、評価自体そんなに伸びていなく、BUZZは下降傾向です。『スペンサー』は評価は抜群ですが、主演女優賞や作曲賞に票が集中すると思われます。『ハウス・オブ・グッチ』はレディー・ガガをはじめとする俳優陣には称賛の声が贈られていますが、やはりというべきか評価はあまり伸びていません。
そこでダークホースとしてはニューヨーク、ロサンゼルス、ボストンといった重要批評家賞を次々と制した日本映画『ドライブ・マイ・カー』があげられます。思い起こされるのは外国語映画賞ですらノミネートされたことがなかった韓国映画『パラサイト』がオスカーを制した二年前でしょう。ただし今回はそれほどの勢いは感じられず、国際長編映画賞、脚色賞、運が良ければ監督賞にあがれば御の字という程度です。もし作品賞にあがれば快挙なので実現してほしいとは思いますが…
また『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』は配給のソニーが作品賞候補として推すとされており、『ブラックパンサー』に続きマーベル映画として二本目の作品賞候補になるか期待したいところです。ただし『ブラックパンサー』は黒人映画であり、社会的意義のある作品になっていたのに対し、本作は確かに絶賛されてはいますが、作品賞候補になるほどかというと…というのが微妙です。
そして『Pig』はニコラス・ケイジ主演作品ですが、不気味にBUZZを上昇させています。最近発表されたウエスタン・ニューヨーク映画批評家賞では作品賞を含む3冠を達成しています。ただやはり作品が小さいことや監督の知名度を考えると難しいものがあるかもしれません。本作支持派はニコラス・ケイジの主演男優賞に票をさせると思われ、作品賞は厳しいかもしれません。
監督賞
◎ジェーン・カンピオン『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
○ケネス・ブラナー『ベルファスト』
○スティーブン・スピルバーグ『ウエスト・サイド・ストーリー』
ドゥニ・ヴィルヌーヴ『DUNE / デューン 砂の惑星』
ポール・トーマス・アンダーソン『Licorice Pizza』
次点
ギレルモ・デル・トロ『ナイトメア・アリー』
リドリー・スコット『ハウス・オブ・グッチ』
ジョエル・コーエン『マクベス』
マギー・ギレンホール『ロスト・ドーター』
ダークホース
濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』
マイケル・サルノスキ『Pig』
シアン・ヘダー『コーダ あいのうた』
本命はもちろん『パワー・オブ・ザ・ドッグ』ジェーン・カンピオン!ほとんどの賞を獲得しており受賞もほぼ間違いないでしょう。対抗は『ベルファスト』ケネス・ブラナーと『ウエスト・サイド・ストーリー』スティーブン・スピルバーグか。スピルバーグは既に監督賞を受賞していること、ブラナーは俳優監督であることが弱点です。ただ候補まではまず間違いないと言えるでしょう。
残り二枠はほとんどの賞で候補に挙がっている『DUNE / デューン 砂の惑星』ドゥニ・ヴィルヌーヴとオスカー常連監督にして未だ受賞経験のない『Licorice Pizza』ポール・トーマス・アンダーソンをあげてみました。ポール・トーマス・アンダーソンはゴールデン・グローブ賞ではまさかの候補落ちとなっているのが懸念材料です。
そんなゴールデン・グローブ賞でポール・トーマス・アンダーソンに代わって指名を受けたのが『ロスト・ドーター』マギー・ギレンホールです。昨年も『プロミシング・ヤング・ウーマン』の女優出身監督エメラルド・フェネルが候補入りしたことからないとは言い切れません。ただエメラルド・フェネルほどの勢いは感じないのが現状です。
『ナイトメア・アリー』ギレルモ・デル・トロは重要賞の一つブロードキャスト映画批評家協会賞で候補入りを果たしておりないとは言い切れません。『ハウス・オブ・グッチ』リドリー・スコットは尊敬される監督でありながら未だ監督賞を受賞していないという点で上昇する可能性はあります。『マクベス』ジョエル・コーエンは既に監督賞を受賞していますが、他が弱いと上昇するでしょう。
ダークホースとして考えられるのはまず『ドライブ・マイ・カー』濱口竜介です。ボストンの批評家賞で監督賞を獲得しており、作品の勢いが出てくれば候補入りも見えてくるでしょう。この部門は外国人監督がサプライズ候補入りすることが多く、ないとは言い切れません。次に先述したように不気味にBUZZを上昇させている『Pig』のマイケル・サルノスキが考えられます。また『ミナリ』の例を考えるならばサンダンスを席巻した『コーダ あいのうた』シアン・ヘダーも考えられるでしょう。
主演男優賞
◎ベネディクト・カンバーバッチ『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
◎ウィル・スミス『ドリームプラン』
アンドリュー・ガーフィールド『チック、チック…ブーン!』
ピーター・ディンクレイジ『シラノ』
デンゼル・ワシントン『マクベス』
次点
レオナルド・ディカプリオ『ドント・ルック・アップ』
ハビエル・バルデム『愛すべき夫妻の秘密』
ダークホース
ニコラス・ケイジ『Pig』
西島秀俊『ドライブ・マイ・カー』
現時点でのトップランナーは『パワー・オブ・ザ・ドッグ』ベネディクト・カンバーバッチ、『ドリームプラン』ウィル・スミスの二人でしょう。ほぼ全ての賞で候補入りを果たしておりかなり有力です。受賞はおそらくカンバーバッチで間違いなさそうです。
彼らを追いかけるのは『チック、チック…ブーン!』で自己最高のパフォーマンスと称えられたアンドリュー・ガーフィールド、黒人俳優のパイオニアにしてマクベス役として最高のパフォーマンスをみせたデンゼル・ワシントン、『ゲーム・オブ・スローンズ』の勢いそのままに曲者街道まっしぐらな『シラノ』ピーター・ディンクレイジです。
次点としてはゴールデン・グローブ賞で候補入りした『ドント・ルック・アップ』レオナルド・ディカプリオ、『愛すべき夫妻の秘密』ハビエル・バルデムがいます。ただしどちらも作品評価が伸び悩んでいることや既にオスカーを獲得済みであることが懸念点です。
ダークホースとしては批評家賞を快走している『Pig』ニコラス・ケイジ、いくつかの媒体で今年最高のパフォーマンスと称えられている『ドライブ・マイ・カー』西島秀俊がいます。ニコラス・ケイジは今まであまりアカデミー賞に縁がなく、ここで候補入りしたら大きなサプライズでしょう。また西島秀俊はアジア人が主演で候補入りすること自体異例な中ノミネートされたら快挙です。そういった意味でもサプライズを期待したいところです。
主演女優賞
◎クリステン・スチュワート『スペンサー』
◎レディー・ガガ『ハウス・オブ・グッチ』
○ジェシカ・チャステイン『タミー・フェイの瞳』
ニコール・キッドマン『愛すべき夫妻の秘密』
アラナ・ハイム『Licorice Pizza』
次点
オリヴィア・コールマン『ロスト・ドーター』
レイチェル・ゼグラー『ウエスト・サイド・ストーリー』
ペネロペ・クルス『Parallel Mothers』
ダークホース
レナーテ・レインスヴェ『The Worst Person in the World』
エマ・ストーン『クルエラ』
『スペンサー』クリステン・スチュワートに加え、『ハウス・オブ・グッチ』レディー・ガガも確実と言ってよさそうです。今のところクリステン・スチュワートがほとんどの賞を受賞しており、受賞も間違いないでしょう。
一時は作品評価が伸び悩んだことから候補落ちを危惧されていた『タミー・フェイの瞳』ジェシカ・チャステインもこのところ持ち直してきておりノミネートは問題なさそうです。対して同じく前評判に対して作品評価が伸び悩んだ『リスペクト』ジェニファー・ハドソンは候補にすらあがらなくなってきており、BUZZは下降を続けています。
『愛すべき夫妻の秘密』ニコール・キッドマンは配役ミスではないかとの声が多かったものの、スターパワーでなんとかBUZZを保っていますが現状はギリギリのライン。入れ替わる可能性は十分にあります。そして『Licorice Pizza』のアラナ・ハイムは演技自体は好評なものの、コメディであることや知名度が低いのがどう働くか。個人的には入ってほしいのですが…
そして次点としてはまずBUZZを一定して保ち続けている『ロスト・ドーター』オリヴィア・コールマンがいます。繊細な演技は称賛されていますが、近年連続でノミネートを受けておりさすがに候補に上がりすぎという感じはします。あとこれは完全に個人的な感想なんですが、『ロスト・ドーター』におけるオリヴィア・コールマンはミス・キャストに感じてしまいました。もちろん魅力的な女優ですし演技は上手いのですが、色んな人に「いい女だ」みたいに言われているのに違和感を感じてしまいました。ジェシー・バックリーがオリヴィア・コールマンになるとはどうしても思えない…
『ウエスト・サイド・ストーリー』レイチェル・ゼグラーはもちろん作品賞候補確実の作品主演ということで有名な「Tonight」を歌う役でもあり有力ではあるのですが、興行的失敗に伴いBUZZが若干萎んできているように感じます。『Parallel Mothers』ペネロペ・クルスはスター女優ですしアルモドバル作品の主演ということで候補入りの可能性はありますが、肝心の作品人気がイマイチ盛り上がらない。今年の外国語映画という意味では『ドライブ・マイ・カー』にお株を奪われている感がありますし、『ペイン・アンド・グローリー』のアントニオ・バンデラスのような勢いをあまり感じないというのが正直なところです。
ダークホースとしては幾つかの批評家賞で候補入りしている『The Worst Person in the World』レナーテ・レインスヴェ、ゴールデン・グローブ賞で候補入りした『クルエラ』エマ・ストーンが考えられます。ただ、レナーテ・レインスヴェはやはり外国人女優という点ではペネロペ・クルスの存在が壁になるでしょうし、エマ・ストーンは既にオスカーは獲得済みで、かつオスカー受けし辛いディズニー作品の主演(前哨戦を快走していた『ウォルト・ディズニーの約束』のエマ・トンプソンが落選したことがある)という点で不利という風に感じます。
助演男優賞
◎コディ・スミット=マクフィー『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
○シアラン・ハインズ『ベルファスト』
○トロイ・コッツァー『コーダ あいのうた』
ジェイソン・アイザックス『Mass』
ジェフリー・ライト『フレンチ・ディスパッチ』
次点
ジェイミー・ドーナン『ベルファスト』
ブラッドリー・クーパー『Licorice Pizza』
マイク・フェイスト『ウエスト・サイド・ストーリー』
ダークホース
ロビン・デ・ヘスス『チック、チック…ブーン!』
ベン・アフレック『僕を育ててくれたテンダー・バー』
唯一確実と言っていいのは『パワー・オブ・ザ・ドッグ』コディ・スミット=マクフィーです。当初は同作品から候補入りするのはジェシー・プレモンスと言われていましたが、蓋を開けてみればマクフィーが完全な独走状態。受賞もこのままいけば間違いなさそうです。それを追うのは『ベルファスト』シアラン・ハインズ、『コーダ あいのうた』トロイ・コッツァーです。シアラン・ハインズはキャリアは長いもののこれまでオスカーとは縁がなかった俳優です。そんな彼を称えたいという票が集中する可能性があります。そしてここにきてBUZZを急上昇させているのがトロイ・コッツァーです。なんとなく昨年の『サウンド・オブ・メタル』のポール・レイシーのような立ち位置を確立する気がします。聴覚障碍者であるという点も追い風に働くでしょう。
残り二枠はサンダンスから出てきた小品『Mass』ジェイソン・アイザックス、『フレンチ・ディスパッチ』ジェフリー・ライトと予想します。ジェイソン・アイザックスはいくつかの批評家賞で候補入りし、なんとなく勢いをつけてきている感じがします。そしてジェフリー・ライトは『フレンチ・ディスパッチ』から演技賞が出てくるなら今のところこの人しかいないなという意味で入れました。
次点としては『ベルファスト』ジェイミー・ドーナンがまず考えられますが、同じ作品からWノミネートは最近あまりないことですし、支持票はシアラン・ハインズにいくのではないかと。そして『Licorice Pizza』ブラッドリー・クーパーは主演タイプの俳優であり、主演作『ナイトメア・アリー』との票割れが心配されます。どちらかというと主演の方で入ってほしい。『ウエスト・サイド・ストーリー』マイク・フェイストは作品の勢いに乗りいくつかの批評家賞でノミネートされましたが、BUZZを保っていけるかがカギになるでしょう。
ダークホースとしては『チック、チック…ブーン!』ロビン・デ・ヘスス、『僕を育ててくれたテンダー・バー』ベン・アフレックが考えられます。ロビン・デ・ヘススはもう少し作品人気が盛り上がれば上昇してくる気配はあります。またゴールデン・グローブ賞でノミネートを受けたベン・アフレックは作品評価が悪く、本選で指名を受けるとは考えにくいですね。
助演女優賞
◎アリアナ・デボース『ウエスト・サイド・ストーリー』
◎アーンジャニュー・エリス『ドリームプラン』
◎キルスティン・ダンスト『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
○ルース・ネッガ『PASSING 白い黒人』
アン・ダウド『Mass』
次点
リタ・モレノ『ウエスト・サイド・ストーリー』
カトリーナ・バルフ『ベルファスト』
ジェシー・バックリー『ロスト・ドーター』
ダークホース
ケイト・ブランシェット『ナイトメア・アリー』
トニ・コレット『ナイトメア・アリー』
演技賞4部門の中で唯一混戦状態と言えるのはこの部門です。ダントツで批評家賞を独走している人がいません。とは言ってもノミネートはこの上位4人はほぼ確定といってよいでしょう。あとは残り1枠の争いとなりそうです。
今のところ受賞数が一番多いのは『ウエスト・サイド・ストーリー』アリアナ・デボースです。オリジナル版でリタ・モレノが演じたアニタ役を見事に演じていると大好評で、同じ役で二人がとったら快挙となるでしょう。『パワー・オブ・ザ・ドッグ』キルスティン・ダンストは作品賞本名作で手堅い演技をみせいくつかの批評家賞で受賞しています。『ドリームプラン』アーンジャニュー・エリスは知名度こそ低いものの、ウィリアムズ姉妹の母親を好演しているということでこれもいくつかの批評家賞を受賞しています。また『PASSING 白い黒人』ルース・ネッガは作品人気があまりないのが懸念点ですが、いくつかの批評家賞を受賞しています。一度オスカー候補になっているというのも強みですね。そして残り一枠として予想したのが『Mass』アン・ダウドです。小品ながらいくつかの批評家賞で候補入りしており、銃乱射事件被害者の親を好演していると少しずつBUZZを上げてきています。長いキャリアの実力派ながら未だオスカー経験がないということで応援したくなる票が集まることが予想されます。
そして次点として考えられるのは『ウエスト・サイド・ストーリー』リタ・モレノ、『ベルファスト』カトリーナ・バルフ、『ロスト・ドーター』ジェシー・バックリーです。リタ・モレノはオリジナル版でアニタ役を演じオスカーを獲得した女優で、映画界の尊敬を集める存在です。そしてリメイク版の本作でも意外と大きな役ということで候補入りが期待されています。同じ映画で二回のノミネートというのは前例がなく実現したら間違いなく伝説になるでしょう。カトリーナ・バルフはジュディ・デンチと共にBUZZを上昇させましたが、作品賞BUZZの縮小と共にどちらも下降傾向、当落線上にいるといえそうです。ジェシー・バックリーは『ワイルド・ローズ』など今最も注目される若手英国女優で、若手を応援したいという層からの票が集まるかもしれません。
ダークホースとしては『ナイトメア・アリー』ケイト・ブランシェット、トニ・コレットが考えられます。ケイト・ブランシェットは言わずと知れた人気女優でこれまで何度もノミネート経験があり、その安定感を求める層からは支持されそうです。またトニ・コレットは個性派として活躍していますがオスカー経験は『シックス・センス』の一度しかありません。個人的には候補入りしてほしいのですが…
国際長編映画賞
◎『ドライブ・マイ・カー』(日本)
◎『The Worst Person in the World』(ノルウェー)
○『Flee』(デンマーク)
○『A Hero』(イラン)
『The Hand of God / 神の手が触れた日』(イタリア)
次点
『Compartment No.6』(フィンランド)
『Hive』(コソボ)
『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』(ドイツ)
順当にいけばこの5作品で間違いないと思うのですが、この部門はかなり番狂わせが起こる部門です。昨年も前哨戦で目立っていたグアテマラの『ラ・ヨローナ~彷徨う女~』、フランスの『Two of Us』が落選するという事態が起きました。
『ドライブ・マイ・カー』『The Worst Person in the World』は落選するということはないと思いますが、他の3作品は微妙なところです。
もし『ドライブ・マイ・カー』が受賞したら『おくりびと』以来2作品目、ノミネートは『万引き家族』以来の快挙となるので受賞を期待したいところです。
長編アニメーション映画賞
◎『ミラベルと魔法だらけの家』
◎『あの夏のルカ』
◎『ミッチェル家とマシンの反乱』
○『Flee』
『竜とそばかすの姫』
次点
『ラーヤと龍の王国』
『ボス・ベイビー ファミリー・ミッション』
ここも上位4枠はほぼ確定と言えるでしょう。残り1枠は『竜とそばかすの姫』と『ラーヤと龍の王国』の争いとなるでしょう。また前作が候補入りした『ボス・ベイビー ファミリー・ミッション』はなくはないと思いますが、可能性としては低いですね。
ここはあまり番狂わせが起こらない部門なので、受賞はこのままいけば『ミラベルと魔法だらけの家』だと思います。
長編ドキュメンタリー映画賞
◎『サマー・オブ・ソウル』
◎『Flee』
○『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド』
『THE RESCUE 奇跡を起こした者たち』
『プロセッション 救済への行進』
ダークホース
『ビリー・アイリッシュ 世界は少しぼやけている』
ここは本命『サマー・オブ・ソウル』と対抗『Flee』の一騎打ちとなりそうです。『Flee』は国際長編、長編アニメとのトリプルノミネートが期待され、その実現可能性はかなり高いと言えます。今までも『ハニーランド 永遠の谷』『コレクティブ 国家の噓』が国際長編と長編ドキュメンタリーのWノミネートを実現していますが、トリプルノミネートというのは史上初だと思います。
ダークホースとしてあげた『ビリー・アイリッシュ 世界は少しぼやけている』ですが、存命のアーティスト、しかも若手のドキュメンタリーは残りにくい傾向にあります。昨年のテイラー・スウィフトの『ミス・アメリカーナ』も有力視されながら候補落ちしました。ただ、若い会員票の支持があれば可能性はゼロではないと思います。
脚本賞
◎『ベルファスト』
◎『Licorice Pizza』
○『愛すべき夫妻の秘密』
『ドリームプラン』
『ドント・ルック・アップ』
次点
『フレンチ・ディスパッチ』
『ラストナイト・イン・ソーホー』
ダークホース
『A Hero』
『C'mon C'mon』
作品賞をとるうえで重要な脚本賞、前哨戦結果からみると『ベルファスト』と『Licorice Pizza』が強いと言えそうです。特に『Licorice Pizza』の受賞数が今のところ多い。それに続くのは脚本家でもあるアーロン・ソーキンの『愛すべき夫妻の秘密』、攻めた脚本である『ドント・ルック・アップ』、手堅くまとまっているであろう『ドリームプラン』でしょうか。
『フレンチ・ディスパッチ』のウェス・アンダーソンの脚本も評価されやすく、可能性はありそうです。『ラストナイト・イン・ソーホー』も時系列を交錯させる脚本が見事だったので入ってほしいですね。
ダークホースとしては『別離』が脚本賞候補にあがったアスガー・ファルハディの『A Hero』、マイク・ミルズの『C'mon C'mon』があげられるでしょうか。
脚色賞
◎『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
◎『ウエスト・サイド・ストーリー』
◎『コーダ あいのうた』
◎『DUNE / デューン 砂の惑星』
○『ロスト・ドーター』
次点
『ドライブ・マイ・カー』
『PASSING 白い黒人』
今年はこの部門が豊作、作品賞本命であり前哨戦をほとんどとっている『パワー・オブ・ザ・ドッグ』、フランス映画のリメイク『コーダ あいのうた』、アメリカ映画のリメイク『ウエスト・サイド・ストーリー』、古典SFの映像化『DUNE / デューン 砂の惑星』は候補漏れはあり得ないでしょう。残り一枠の争いとなりますが、ここでは『ロスト・ドーター』をあげましたが、注目すべきは『ドライブ・マイ・カー』の行方です。世界的作家の村上春樹原作ということである程度の知名度はあるでしょうし、候補入りする可能性は大いにあります。そもそも外国の脚本が候補入りするというのはあまり例がないことで、受賞したのは『パラサイト』だけのはずです。可能性は高くはないですが実現したら快挙です。
美術賞
◎『ナイトメア・アリー』
◎『DUNE / デューン 砂の惑星』
◎『フレンチ・ディスパッチ』
○『ウエスト・サイド・ストーリー』
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
次点
『ラストナイト・イン・ソーホー』
『シラノ』
『ハウス・オブ・グッチ』
『ベルファスト』
ダークホース
『アネット』
『マクベス』
ビジュアル構築には定評のあるギレルモ・デル・トロ、ウェス・アンダーソン作品が強いと思われます。フランク・ハーバートの世界観を見事に映像化した『DUNE / デューン 砂の惑星』の美術も評価されるでしょう。また『ウエスト・サイド・ストーリー』の美術も注目されます。残り一枠はやはり作品パワーを考えて『パワー・オブ・ザ・ドッグ』と予想します。時代物でもありますし。
この部門は従来時代物が強いのですが、その意味でいうと『シラノ』『マクベス』も可能性があります。『アネット』は他で候補にあがらないのならここで評価すべきだと思いダークホースとしてあげました。
衣装デザイン賞
◎『クルエラ』
○『スペンサー』
○『DUNE / デューン 砂の惑星』
『ラストナイト・イン・ソーホー』
『ウエスト・サイド・ストーリー』
次点
『ナイトメア・アリー』
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
『シラノ』
衣装が主役とも言える『クルエラ』が単純に強いと言えそうです。同じく衣装が主役の一つでもある『ラストナイト・イン・ソーホー』も強いと思っていたのですが、作品自体に勢いが感じられず失速してる印象です。
『スペンサー』はダイアナ妃というファッションアイコンが主役な時点で強いはずです。また技術賞総なめが予想される『DUNE / デューン 砂の惑星』もその近未来の衣装が評価されるでしょう。作品パワーを考えると『ウエスト・サイド・ストーリー』『パワー・オブ・ザ・ドッグ』、時代ものという点では『ナイトメア・アリー』『シラノ』の可能性も十分考えられます。
撮影賞
◎『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
◎『DUNE / デューン 砂の惑星』
○『マクベス』
○『ウエスト・サイド・ストーリー』
『ナイトメア・アリー』
次点
『ベルファスト』
『シラノ』
ダークホース
『The Green Knight』
『アネット』
前哨戦結果から考えると『パワー・オブ・ザ・ドッグ』と『DUNE / デューン 砂の惑星』が圧倒的な強さを誇っています。どちらも落ちることはないでしょう。そして常連の『ウエスト・サイド・ストーリー』ヤヌス・カミンスキーも順当に入りそうです。また『マクベス』の白黒撮影が本当に見事だったので希望も込めて入れてみました。技術賞を中心にノミネートされると考えられる『ナイトメア・アリー』も予告編を見る限りだと毎度のことながら素晴らしい撮影なので入ってほしいですね。
次点としては白黒撮影の『ベルファスト』は作品パワーにのって、『シラノ』は時代ものということであげられます。
この部門は『ライトハウス』が他の候補にはあがらずここだけ候補入りした、ということも過去にはあり、他でノミネートされていない作品が入ることも考えられます。その意味でダークホースとしては『The Green Knight』や『アネット』も考えられるかなと思います。
編集賞
『DUNE / デューン 砂の惑星』
『マクベス』
『ドント・ルック・アップ』
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
『ベルファスト』
次点
『ドリームプラン』
『ウエスト・サイド・ストーリー』
『フレンチ・ディスパッチ』
『ハウス・オブ・グッチ』
ここは正直組合賞が発表されるまで全く分かりません。前哨戦結果も散っているので予想しにくいですね。ただ、作品賞をとる上で編集賞はノミネートされていないといけない部門なので、本命の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』や対抗の『ベルファスト』は入ると思われます。
唯一前哨戦で二つの受賞を果たしている『DUNE / デューン 砂の惑星』も強いのかもしれません。後は個人的に編集の力が大きいなと思った『ドント・ルック・アップ』と『マクベス』を入れてみました。どちらも編集が素晴らしい作品なので入ってほしいですね。
メイクアップ&ヘアスタイリング賞
◎『タミー・フェイの瞳』
◎『クルエラ』
○『ハウス・オブ・グッチ』
『ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結』
『シラノ』
ここはショートリストが発表されておりある程度まで絞られています。
その中でもメイクアップによって大変身を遂げたジェシカ・チャステインの『タミー・フェイの瞳』が強そうです。同じくレディー・ガガに見事な変身メイクを施した『ハウス・オブ・グッチ』も強いでしょう。またヘアスタイリングという観点からは『クルエラ』が強そうです。
視覚効果賞
◎『DUNE / デューン 砂の惑星』
『マトリックス レザレクションズ』
『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』
『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』
『エターナルズ』
ノミネートのみならず受賞も『DUNE / デューン 砂の惑星』で決まりと言えるのではないでしょうか。実写化不可能と言われてきた砂の惑星を見事に表現した技術は評価されるべきです。
超大作の『マトリックス レザレクションズ』『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』、そしてマーベルの『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』『エターナルズ』は順当に勝ち上がる気がします。マーベルは他にも『ブラック・ウィドウ』『シャン・チー』がありますが、特殊効果を上手く使っているのは『エターナルズ』なのでこちらの可能性が高いかなと。
音響賞
『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』
『DUNE / デューン 砂の惑星』
『ウエスト・サイド・ストーリー』
『ラストナイト・イン・ソーホー』
『チック、チック…ブーン!』
ここも組合賞が発表されるまで分かりませんが、『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』は音が主役とも言える作品なので可能性は高そうです。
『DUNE / デューン 砂の惑星』は技術的な面では今年最高峰と言えます。またミュージカルの『ウエスト・サイド・ストーリー』『チック、チック…ブーン!』や音楽がキーの一つでもある『ラストナイト・イン・ソーホー』は音響面が評価されるのは想像に難くありません。
作曲賞
◎『DUNE / デューン 砂の惑星』
○『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
○『スペンサー』
『ミラベルと魔法だらけの家』
『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール 報復の荒野』
次点
『フレンチ・ディスパッチ』
前哨戦結果からすると上位3作品は間違いなさそうです。特に『DUNE / デューン 砂の惑星』のハンス・ジマーは知名度もありますし、作品パワーから考えても受賞もほぼ確実と思われます。
知名度という点で言うと『フレンチ・ディスパッチ』のアレクサンドル・デスプラもネームバリューがありますが、作品パワーが弱いのが懸念点です。
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』と『スペンサー』は同じ作曲家が手掛けていますが、前哨戦をどちらもいくつかとっているので候補入りの可能性が高いでしょう。
『ミラベルと魔法だらけの家』のリン・マニュエル・ミランダは監督賞にノミネートされないのであればここで、という可能性があるかなと思いました。『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』は西部劇の音楽が評価されるかもしれないと思い入れてみました。
歌曲賞
◎「No Time to Die」ビリー・アイリッシュ『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』
○「Just Look Up」アリアナ・グランデ『ドント・ルック・アップ』
「Be Alive」ビヨンセ『ドリームプラン』
「Here I Am (Singing My Way Home)」ジェニファー・ハドソン『リスペクト』
「Beyond the Shore」エミリア・ジョーンズ『コーダ あいのうた』
ここはビリー・アイリッシュの「No Time to Die」で間違いなさそうです。現に前作『007 スカイフォール』の主題歌も受賞しています。対抗はアリアナ・グランデ「Just Look Up」でしょうか。
またビヨンセの「Be Alive」はネームバリューから予測しました。
音楽映画からは『リスペクト』『コーダ あいのうた』が強いかなと。
短編実写映画賞
○『The Long Goodbye』
『天空の下で』
『あのクリスマス』
『The Criminals』
『Censor of Dreams』
正直全く分かりませんが、リズ・アーメド主演というネームバリューと差別を描いた内容から『The Long Goodbye』は堅いかなと。
『天空の下で』と『あのクリスマス』は個人的に観ているので入れただけです。あえて言えば『天空の下で』はコロナ禍を描いた作品ということで強いかなと。
あとは予告篇から判断して、『The Criminals』は面白そうなサスペンスなので入れました。『Censor of Dreams』は予告篇がまずすごく変わっていて、何がなんだか分からないのですがとにかく斬新そうだったので観たいという意味も込めて。
短編アニメーション映画賞
○『Namoo』
○『あの頃をもう一度』
○『ことりのロビン』
『Bestia』
『The Musician』
『Namoo』の監督エリック・オーは前作『Opera』でも同部門にノミネートされており連続ノミネートの可能性が高いと思われます。また実話ベースということでも注目されます。
『あの頃をもう一度』はディズニー作品『ラーヤと龍の王国』の併映作品で観ている人も多いと予想しました。
また『ことりのロビン』はNetflixで観られることからみやすさという点では抜きん出ています。
『Bestia』は予告編をみると人形を使ったなんとも不思議な雰囲気で独特のものがあると思ったので入れました。
『The Musician』は音楽ものがこの部門でも強いこと、老人ものが強いことから候補入りの可能性が高いと判断しました。
短編ドキュメンタリー映画賞
『オーディブル 鼓動を響かせて』
『The Queen of Basketball』
『Terror Contagion』
『Coded: The Hidden Love of J. C. Leyendecker』
『The Facility』
ここに関してはマジで分からなかったのでVarietyの予想サイトをそのまま写しました。
Netflixの作品が3作品含まれており、『オーディブル 鼓動を響かせて』はその一つです。他には『私の帰る場所』と『べナジルに捧げる三つの歌』がNetflixです。
ということで今回は現時点での予想を書いてみました。2月になったらまた更新します!
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