見出し画像

カタールW杯はコロナ禍の現状を世界に伝えた

 2022年11月20日、2022 FIFAワールドカップがカタールで開幕しました。連日熱戦が繰り広げられており、視聴者数はオリンピックをも凌ぐと云われる通り、「世界共通の話題」として機能し、その人気ぶりは健在です。4年に1度のサッカーの祭典ですが、最近の世界的イベントには必ず憑いて回るものがあります。2020年から世界中で流行した新型コロナウイルスです。今秋に開催したカタールW杯は、コロナウイルスに対してどのように対応したのでしょうか。

 コロナが世界的に蔓延したのは2020年の初頭からです。その年の夏に開催予定だった東京オリンピックは感染拡大を理由に延期となり、大きな軌道変更を余儀なくされました。1年後に開催にはこぎ着けましたが、試合のほとんどは無観客で、少数の関係者によるまばらな声かけしか聞こえてきませんでした。関係者と外部との接触を遮断するバブル方式が採用され、感染防止に関するプレーブックにはマスク常時着用を始めとする多くのルールが規定されています。試合会場も、その周辺までは一般人は来れるものの、敷地内は関係者以外立ち入り禁止で、入口ではものものしい雰囲気で検疫が行われていました。開催後については、日本代表は非常に好成績を収めたにも関わらずその余韻はほとんどなく、とにかく開催だけはしっかり行なって一気に蓋を閉めるように夏の祭典は終わりを告げました。都内では緊急事態宣言下での開催で、毎日コロナの感染者は何人、重傷者・死者は何人と報道されている中、その数分後には「頑張れニッポン」と大合唱が吹き荒れる様子は、とても違和感がありました。
 その半年後の2022年1月には北京で冬季オリンピックが開催されました。開閉会式と試合は中国国内の招待された人が観客として観戦し、一般人へのチケットの発売はありませんでした。東京オリンピックと同じように選手・関係者と外部との接触は大幅に制限され、半年前の夏季オリンピックと同じく「静かな大会」となりました。

 さて、現在開催されているW杯はどうかというと、東京や北京であったような厳しい感染対策はありません。W杯のために訪れる外国人の陰性証明は必要なく、選手で陽性者が出た場合は6日間の自主隔離で済みます。そして何より、ノーマスクの満員の観客です。コロナ禍では見る事が減っていた、マスクをせずに大声を出して応援するスポーツイベントの姿が、今大会では全試合で見ることができます。日本国内のスポーツしか見ない人にとっては今は違和感があるかもしれませんが、アメリカやヨーロッパのスポーツではコロナ以前の姿にほぼ完全に戻っています。これはピッチ外でも同じで、カタールや欧米各国ではマスクをしている人はほとんどおらず、カタールではインフルエンザと同じような感覚のようです。W杯はそのような海外の現在地を、多くの日本人、そして世界に伝えています。
 さらに、こんな面白い記事もあります。W杯を見ている中国人が、カタールでの様子を見て「同じ星とは思えない」という感想を抱いています。

カタールではマスクなしのW杯観戦、中国で「ゼロコロナ」政策に疑問の声
https://news.yahoo.co.jp/articles/9abba9f40f6cc7e5f3f03a3b46f60d6188d9b905

AFPBB NEWS

 日本国内のメディアも、これまでの世界的イベントと異なり、「コロナ」というワードをほとんど出しません。コロナ自体の報道が減少傾向にありますが、直近の2つのオリンピックと違い、そのイベントの報道に集中出来ている感があります。観客・メディアといったソフト面で、コロナに対する姿勢が世界で変わりつつあることを、カタールW杯は意図せず世界に示しているのです。

 ただ、WHO(世界保健機関)はコロナ禍について「終息が近づいている」という声明を発表したものの、先進国では未だに毎日1万人以上の新規感染者を出しています。今のカタールで行なわれているような、コロナ以前とほぼ変わらない行動様式に戻すことが正解とは限りません。ただ、冒頭でも述べた通り「世界で最も多くの人が見るイベント」と言っても差し支えないW杯でそのような様子が毎日流れるのは、今後の日本の、その他世界の人々のコロナに対する認識に大きな変化が生まれてくると感じています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?