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レストランの配膳タイミングはどちらがいい?

久しぶりに高倉町珈琲で朝食をとった。

私はエッグスラットモーニング+ほうれん草とキウィのスムージー、同居人はリコッタパンケーキ+ホットコーヒー、前回より値上げしていたが、コーヒー豆もキウィも高騰しているので仕方がないのだろう。

── それはともかく。

エッグスラットモーニングのプレート
リコッタパンケーキ

ウェイトレスは、
「リコッタパンケーキは少し時間がかかりますが、お飲み物は先に持ってきていいですか?」
と尋ね、間もなくして飲み物が2つ届いた。
こんな経緯から、
(おそらく、私の『エッグスラットモーニング』が先に配膳サーヴされるだろう)
そう思っていた。

けれど、予想に反し、しばらく後に、2つのプレートは同時に持ってきた。
── もちろん、それ自体はまったく問題ない。

問題なのは、おそらくはパンケーキと同じタイミングで配膳サーヴされることになったエッグスラットが、本来とは異なる料理になってしまったことである。

エッグスラットというのは(今、由来を調べたら)ロサンゼルス発祥の料理で、小瓶の中に味を付けたマッシュポテトを敷き詰め、その上から卵を割り入れて湯煎しています。
スプーンで半熟卵とマッシュポテトを混ぜ合わせていただくもので、私の好物です。

それが……卵が固茹でになってしまっている!

ガラス瓶はまだ熱く、湯煎時間を間違えるという初歩的ミスを犯したのでなければ、
パンケーキが出来上がるのを待っている間にガラス瓶の中で加熱が進行してしまったのだ!
本来半熟であるべき卵が固茹でになってしまっては、別の料理になってしまっている!

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30代初めに留学生候補となり、20代半ばの米国人(♂)とGRE試験対策を練っていた時、彼と喫茶店で定食やパスタ類の昼食を取ることがあった。

そんな時、彼が洩らすのは:
「俺は日本のレストランが好きだ。チップをもらわないのに店員は誰も親切で愛想がいい ── ただ、最大の不満は、料理を同じタイミングで持って来ないことだ

もちろん、日本でも、あるレベル以上のレストランは、複数の来客が別々の料理を頼んだとしても同じタイミングで皿をテーブルに運んで来る ── よほど無理がある場合以外は。

「そんなのどうでもいいじゃないか。ほら、先に食べろよ、冷めるぜ」
と促すと、渋い表情で食べ始める。

その後留学してわかったのは、確かにアメリカのレストランは ── ウェイトレスにチップを出すような店は必ず、同じグループ客の料理は同時に持って来ようとする。
これが客数4-5人以上になり、ひとりで同時に配膳サーヴするのが困難な時は、他のテーブル担当の同僚も手伝い、とにかくそのテーブル全員のもとに同時に料理を届けようとするのである。

うん。それ自体はもちろん、悪くない。

高級レストランならば、調理時間の異なる料理も逆算して同時に、かつ最適な状態で配膳サーヴできるように調理を行うだろう。
しかし、想像していただければわかると思うけれど、それには限界がある。
《同時配膳サーヴ》を価値観の最上位に置くことで犠牲になるものもある。 ── ミディアムレアのステーキが待っている間に温度が低下するだけでなく、その過程で焼き過ぎになったりする。

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価値観は人ぞれぞれなので、この『アメリカ式』にケチを付けるつもりはない。
でもね、私は食べ始めるのがまちまちになったとしても、それぞれの料理の最適状態で食べたいし、料理人もそれを望んでいるじゃないかと思う。

私の父は天ぷらを揚げるのが好きで、家族は彼が、
「ほれ、食べろ、ほれ」
と揚げたてをテーブルに運ぶ傍らから次々食べていった。
父自身は、最後まで揚げ終わり、割烹着(!)を外してから残った天ぷらをつまみに酒を愉しんだ。
姉が結婚した時、この『Home天ぷら会席』のテーブルについた義兄は、
「どうしてお父さんを待たないの!」
と家族をとがめた。
「いや、お父さんは揚げたてを食べさせたいんだよ」
そう説明したが、納得はしなかった。
── これも、価値観の順序に起因する。

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BGMは必ず Beatles Number のその店では、ちょうど、Ringo Starr のボーカル曲『With a Little Help from My Friends』が流れていた。
殺された John Lennon と並びグループ最年長だった彼は、80代半ばになったはずだ。

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