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『内閣改造に女性登用期待』に、「あえて言うけど、優先順位はそこじゃない」

昨日(9/9)の朝刊を見て、
「おいおい、天下の日経新聞がここ止まりですか……」
と情けない気持ちになりました。
来週に予定されているという内閣改造関連記事です。

岸田文雄首相は13日に実施する内閣改造で女性閣僚の積極登用を探る。民間に一層の女性登用を求めながら、現内閣は19人中2人にとどまる。政治分野の男女格差は世界最低水準にある。上積みできなければ女性活躍への本気度を問われかねない。

日本経済新聞2023年9月9日朝刊4面
内閣改造、女性登用探る  民間目標水準には5~6人 若手の抜てき求める声 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

女性閣僚の積極登用:もちろん、反対ではないし、基本、賛成です。
ただし、閣僚に選ばれるべき人間として、最も重要な条件は(当然のことながら)、
《閣僚としての能力があり、その能力を発揮できること》
です。
「女性にはその能力がないって言うのか!」
いえいえ、そんなこと、言っていません。

日経新聞の記事、続きを読んでいきましょう。

今回の内閣改造で取り沙汰されるのは閣僚経験者では上川陽子幹事長代理や小渕優子組織運動本部長らだ。
新顔も候補は絞られる。自民党では衆院当選5回、参院当選3回以上が入閣の目安とされる。
この条件にあてはまる女性議員のうち閣僚未経験者は衆院の土屋品子氏、阿部俊子氏や参院の上野通子氏らに限られる。
女性閣僚の拡大を優先し、衆院当選3回の加藤鮎子氏ら若手を抜てきすだとの声もある。

日本経済新聞2023年9月9日朝刊4面

どうした、日経!
《閣僚は国会議員から選ぶ》
という永田町の常識を、現状肯定的、いや現状追認的に書くだけでどうするんだ!

日本国内には、閣僚が務まる能力があり、その能力を発揮できる女性はたくさんいることでしょう。
なぜ、候補者を国会議員に限定するのでしょうか?

憲法68条第1項を見ましょう:

内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。

日本国憲法68条第1項

即ち、国務大臣の半数未満ならば、非国会議員から選べるのです。しかし、現状そうはならず、失言失態で内閣の足を引っ張る困ったチャンも含め、毎回ほぼ全員が国会議員から選ばれています

某短編小説にもこんな記述がありました:

「政治家、特に国会議員は違います。仕事をするから給料がもらえるのではありません。選挙に当選したら、自動的に歳費 ── 給料が約束されるのです。さらに、何もしなくてもボーナス ── 夏冬の手当が支給されます」
 見学者の多くがため息をついた。
「だから、選挙に勝つことが、国会議員にとってもっとも大事なことなのです。いや、それがすべて、と言ってもいい。もちろん、国会議員ですから国会で質問したり、議員立法に加わったり、実務もやります。でも、それも、選挙に勝つために行うのです ── 政治家という職業の本質は、選挙に勝つことなのです。ですから、このブースでは、その《職業展示》を行っているわけです」
「わかったよ。でもさ」見学者から手が挙がった。
「国会議員はそうかもしれないけど、大臣は違うよね。実際に行政の責任者なんだから」
「おっしゃる通りです。でも」元・秘書は静かに答えた。
「内閣総理大臣は国会議員から選ばれていました。そして、国務大臣の半数は国会議員から選ばれなくてはならなかった。けれど、半数にとどまらず、ごく少数の例外はありましたが、ほぼすべての国務大臣が国会議員から選ばれた ── 副大臣も同様です ── そんな必要はまったくないのに。なぜか?
知名度を上げて、選挙に勝ち易くするためね!
その通りです。ですから、政治家の本質は、国会議員だけでなく、首相を含む行政府の幹部にとっても、選挙なんです。私のボス ── センセイも大臣になりましたが、大臣在職中もずっと、選挙のことばかり考えていた

《絶滅危惧職》保存館にようこそ【3/3】(短編小説;4000文字)|谷 俊彦 (note.com)

選挙に勝つために、古参議員を勝たせるために、総理大臣は必ずしも《ベスト・チョイス》ではない人材を、国会議員から指名しているのです。
── 総裁選挙で票をもらうために。

「……そんなこたあ、わかってるさ。でも、それがオトナの社会の現実じゃないか」
と記者は言うかもしれません。

いやいや、記者サン、「永田町の論理」に染まらないでよ!
こうした記事の度に、しつこく、しつっこく、何度でも何度でも、
「票を集めるだけが取り柄の(と、これは言い過ぎにしても)国会議員よりはるかに有能な女性を、非国会議員から閣僚に選んでいただきたい」
と書いて欲しい。

そしてもちろん、女性閣僚の選択のことだけを言っているわけではなく、男性を含めた閣僚全般である

現在の憲法下(68条第1項は改正しなくてはいけない、と思っていますが)で制約があるぎりぎり過半数は国会議員から選ぶとしても、残りは全国民に候補者を広げて、最適の人を選んで欲しい

翌日9/10の新聞を見て書いた、関連記事です:

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