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社員旅行は復活するか?

少し前、表題に『社員旅行』が入った短編小説を書きました:

しかし、職場の飲み会ですら敬遠される現代にあっては、部署の(ほぼ)全員で泊りがけで出かけるなんて《悪夢》以外の何モノでもなく、想像すらできない、と言う人も多いことでしょう。

実際、私が新卒で就職した時期には『社員旅行』というより『泊り宴会』としてかろうじて残っていましたが、それから5年ぐらいの間に、研究開発系の職場では絶滅しました。

総務系の職場ではもうしばらく残っており、女子社員も多いためか泊りの宴会では『かくし芸大会』のような出し物もあって、終業後に何人か集まり密かに練習した、というエピソードも同期から聞きました。

しかし、チームワークを重んじる生産現場ではけっこう残っていて、生産会社と共同開発した製品のリリースが決定したり、チームが社内表彰を受けたりした時は、組織の垣根を越えた合同泊りがけ宴会がありました。

いやあ、それはホント、絵に描いたような古典的宴会で、最初に職場長があいさつし、乾杯の音頭をサブリーダーあるいは最古参のジーサンが執る、時々ビールを持ってお酌に回る係長のような人、悪酔いして絡みだす人、途中で麻雀室に消える4人組、……。

その時代は、職場対抗のバレーボール大会やソフトボール大会、社員の家族も参加しての運動会なんてのもありましたが、張り切り過ぎてアキレス腱を切った人が出て、以後取り止めになりました。

けれど、これも生産会社では非常に重要な行事で、国内ではもちろん、米国の会社でも、職場対抗の駅伝レース大会はたいへんな盛り上がりでした。

産労総合研究所の調査によれば、2020年でも宿泊を伴う社員旅行を3割近い会社が行っていたのですね(想像以上)。

https://www.e-sanro.net/research/research_jinji/shanaiseido/shanai_event/pr2101.html

これにトドメを刺したのがコロナ禍でしたが、最近また自粛していた社員旅行が復活、というような記事も見かけます。
また、畳敷きの和室で宴会する『昭和型社員旅行』に注目する向きもあるようです。

いいトコ採りだけすればけっこう楽しいけれど、『真の昭和型宴会』はセクハラ発言あり、お酌プレッシャーありで、女性社員 and/or 飲めない社員の中には不愉快な行事と捉える人もけっこういたことでしょう。

コロナ禍による行事自粛期間が終わった後、その前と一番大きく変わったのは、一定のリモート勤務率の維持転職率の高さ、それに副業を認める企業が増えたことでしょうか。
『職場への忠誠』より『ジョブの完遂』の方が、はるかに価値が高くなりました。

こうした環境の中で、旅行会社は、「今こそ、再び」と大きな宣伝キャンペーンを行っています:

しかしおそらく、『昭和型社員旅行』は復活しないだろう、と私は思います。

『職場』から『地域』に目を転じても、町内にはかつて『老人会』なるものが存在し、私の住む町でも20年ほど前までは老人会宿泊旅行が行われていました。
もちろんこれも、復活はしない。

旅行会社もそのあたりはよくわかっていて、『推し』や『趣味』を核とした『同好の士』をくくった宿泊団体旅行にマーケットを移しているように思います。

さて、それ以外にどんな団体旅行ニーズがあるでしょうか?

個人的な経験ですが、高校時代のクラス会で、有能な幹事さんが企画した、かつてそのクラス(1年間だけですが)で経験した、
・遠足旅行
・修学旅行(は実施しない学校だったため、これに相当する山行)

を辿る旅
への参加者がけっこう多く、50代になっていましたが、貸し切りバスの中で飲んで歌ったりなどして盛り上がりました。

……いや、『団体旅行』自体が、仮想空間での疑似体験に移行していくのかもしれません。あるいは、メタバースでアバターとして参加する形態に移行するかもしれない。

それならば、『昭和型社員旅行』に参加するのも面白そうだ、と考える人、多いかも。

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