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2022年観た映画ベスト10


金持ち一家も、貧乏一家も別に悪人ではない。
本当の悪はこの映画の中にはいないんです。
     ―――――ポン・ジュノ 映画監督
     『パラサイト 半地下の家族』インタビューにて


▼▼▼年間ベスト10映画▼▼▼

読んだ本年間ベスト10のことを昨日書いていたら、
今年見た映画ベスト10は、
いったいどうなってるんだ、
と自分で知りたくなった。

僕は映画を観ると、
1行か2行で所感をEvernoteに書き、
タグで★1~★5まで、
レーティングを残す。

2022年でソートをかけて、
★5の映画を全部抜粋すると、
以下のタイトルが抽出された。

・空白
・花束みたいな恋をした
・燃ゆる女の肖像
・レイディオ
・プロミシング・ヤング・ウーマン
・コーダ あいのうた
・ちょっと思い出しただけ
・サマーフィルムにのって
・漁港の肉子ちゃん
・RBG 最強の85歳
・浅草キッド
・ディパーテッド
・劇場版 きのう何食べた?
・香川一区
・孤狼の血 LEVEL2
・ドライブ・マイ・カー

うわー。

16個ある。

10個、選べん。

でも、心を鬼にして
(心を鬼にするのが僕は得意だ)、
選んでみようじゃないか。

このなかから、
マジで深く考えずに、
1位から10位まで、
ざっくりとランキングしてみよう。

たぶん長考すると結果は変わるだろうから、
敢えて瞬発力だけで決める。

1位 浅草キッド
2位 漁港の肉子ちゃん
3位 コーダ あいのうた
4位 ドライブ・マイ・カー
5位 香川一区
6位 空白
7位 RBG 最強の85歳
8位 ちょっと思い出しただけ
9位 劇場版 きのう何食べた?
10位 レイディオ


▼▼▼YouTubeでけっこう語ってた▼▼▼


ライムスター宇多丸さんによると、
もう、1位から5位は全部1位、
ということになる。
言ってる意味が分からないが。
でも、本当にそうで、
全部「1位タイ」って感じだ。

なんかこうやって振り返ると、
それを見た状況や季節や、
文脈が思い出されて、
2022年を振り返るような気持ちになる。
このひとつひとつについて解説してたら、
それこそ本が1冊書けるぐらいの文字量になるので、
そんなことはしない。

知りたい人は個人的に聞いてください。
こっそり教えて上げます。

たしか、いくつかはYouTube/Podcastで解説したので、
リンクを貼っておこう。

▼参考動画『映画「香川一区」を観た』


▼参考動画『映画「ドライブ・マイ・カー」を観た』

▼参考動画『映画「コーダ あいのうた」を語る』

▼参考動画『映画「浅草キッド」を観た』


▼▼▼漁港の肉子ちゃんとRBG▼▼▼


、、、けっこう語ってるのね。
語ってないやつをここでさらっと紹介しておこう。
まず『漁港の肉子ちゃん』。
これは伊集院さんがラジオで言ってて観た。
ラジオで言ってなかったら、
そしてそれが伊集院さんじゃなかったら、
絶対に観ようとは思わなかっただろう。

この映画、明石家さんまさんがプロデューサーで、
元奥さんの大竹しのぶさんや、
さんまさんの親友のキムタクの娘のCocomiさんが、
声優をやってる。

もう、ずぶずぶやないかい、
という感じがして、
吉本興業臭がすごくて、
普段なら敬遠する。

でも、伊集院さんが号泣したっていうから、
それは見るしかない。
伊集院さんが号泣したものなら、
僕はスクリーンに2時間ウンコが映っている映像でも見に行く。
僕は伊集院さんの犬なのだ笑。

さて。

結果、

、、、

、、、

号泣した。

あれはずるい。

興味ある人は是非、観て欲しい。
西加奈子さんの原作がそもそも良いのだけど、
大竹しのぶさんの演技力と、
最後の展開。
あれはずるい。
映画は2度観たし、
原作も読んだ。

あと、RBGっていうのは、
ルース・ベイダー・ギンズバーグという、
米国最高裁判所の判事で、
差別や中傷と戦いながら、
女性の権利のために戦い抜いたアイコンだ。
彼女以前の米国では、
「女性が結婚したという理由で解雇する権利」が、
雇用者側に認められている州があった。
「これは憲法違反」というド正論で判例を積み上げ、
現代の、まだ括弧付きだが、「男女平等」のアメリカをつくった。
世界で一番格好良い女性ではないだろうか。

この方が亡くなったあと、
同じ状況になったとき、
オバマの民主党が長年の「紳士協定」で、
判事の指名を控えた期間に、
トランプは恥知らずにも、
保守派の判事を任命した。

ギンズバーグがカッコ良すぎて、
僕は2000円でRBGがプリントされたTシャツを
Amazonで購入した。
まだ着てないけど。


▼▼▼なぜ映画を観るのか▼▼▼


、、、あとは、
もう語る時間がありません。
『ちょっと思い出しただけ』。
これ、良いですよ。
『花束みたいな恋をした』にも言えるのだけど、
男女の恋愛を描く映画は多いが、
その恋愛が終わるところを、
ちゃんと、真正面から逃げずに描いた映画は少ない。

『ちょっと思い出しただけ』は、
オズワルド伊藤くんの妹の伊藤沙莉さんと
池松壮亮さんの演技、
それからクリープハイプの楽曲、
さらに松居大悟監督の編集の妙が素晴らしい。

コロナ禍という時間経過の描き方とか、
もう、最後は切なくて切なくて、、、。

鬱で体調悪くなり始めたときに2回観た。

こうやって並べてみると、
僕が興味を持ち高く評価する映画に共通するいくつかの要素がある。

・格差
・障害者
・性的少数者
・社会的被抑圧者
・夢を選ぶ生き方
・友情、師弟関係
・切なさ、別れ、喪失
・狂気

こういったものに僕は興味があり、
惹きつけられるみたいだ。

映画は具体的な個人を描く。
、、、でありながら、
その外にあるシステムの悪を示唆する。
映画は具体的な個人を描く。
だからシロでもクロでもない、
グレーな部分を味わうことができる。

だから映画を撮る。

いつだったか、たしか村上春樹だと思うが、
「この小説はひとことで言うと何を言いたい小説なのですか」
みたいな質問をされたとき、
「ひとことで言えるならわざわざ小説なんて書きません」
と答えた、というのを読んだ。

本当にそうだ。

「ファスト映画」を観る人々は、
村上春樹さんが言ってる意味が多分
分からないのだろうな。

映画も同じで、
映画は「意味」に還元されない。
だから複雑なものを複雑なまま扱うことができる。
結論は留保される。
映画を観た結果、「もやもや」したなら、
それは正しくその映画を観られているということだ。
バカと広告代理店ががつくった空っぽの映画でなければそうなる。
だからファスト映画はその本質において誤謬なのだ。

「論破」に代表されるひろゆき的な知性のあり方に、
僕はとても強い違和感を覚える。
ひろゆきさん自身は頭の良い人だと思うが、
彼を称賛している人が絶望的に頭が悪い。

その頭の悪さをいまだにうまく言語化できないが、
たぶんそれは、
知性をデジタルな二進法に還元する風潮、
みたいなものに対してなのだと思う。
AI、パソコン、デジタルは、
ゼロとイチの二進法で構築されている。

しかし、人間の真実はゼロとイチの間に宿る。
かつてビートたけしが本に書いていた。
あの人は数学オタクだから、
そのへんのことがよく分かってる。

どこの似非インテリがそんなこと言ってるか?
ビートたけしがいったい何者だっていうのか?

、、、

、、、

、、、

芸人だ馬鹿野郎!


終わり


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参考文献および資料
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・『それでも映画は格差を描く』町山智浩
・『漁港の肉子ちゃん』西加奈子
・『村上春樹にご用心』内田樹
・『全思考』北野武

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