堂島川と土佐堀川の間で | ART OSAKA 2022
ART OSAKAに行ってきました。
さりげなく個人で日本現代美術振興協会の賛助会員にもなっているので、招待枠にて入場させてもらえるということもあり、Expandedとgalleriesともにそれぞれ初日から観覧させていただける感じに(予期せずトートバックもいただいてしまった‥‥大事に使う)
内容としてはあえて忌憚のない感想を述べると「半々」という感じでした。
総じてよかった、とは思います。
もう一方の半分は、どちらかというと自分自身の課題、というか現状的に?そうそうホイホイと作品購入できるほどの者ではありませんので……明確に買いに行くということができない以上フェアという現場にとってはあんまり重要ではないユーザーだなーと。潜在顧客でありたいとは思う。
まして自分は編集者でもメディアでもないので、ごく個人的な解釈でこの文章を残している感じで、なんだかんだ自分は作家サイドにできるだけ立ちながらギャラリーとしての展開を考えている、という部分は以前から変わらず、と言えますが。どういうふうになっていったら「アート」というものが拡がっていくのかなという部分や、どういうスタンスで今回を見るのか、というのは改めて考える期間であったとも思います。
ちなみに前提として
現地の風景とレポートに関しては専門メディアたる美術手帖がよほど偏りなく詳細なのでこちらを確認いただくのが一番良いかなと思います。リンクをぜひ。
https://bijutsutecho.com/magazine/news/market/25778
あと、たぶんそのうちにVRでの公開も始まるかとも(これは公式が運営しているVRコンテンツ)
https://360artroom.net/
関連イベントとして実施されたトークも見ておくのも良いかと。https://www.youtube.com/watch?v=0U5XyhsPxYc
歴史もさることながら周辺の状況、自分の現在の地点からしても(自分の視野が足りてないだけかもしれませんが)知らない部分がまだ多いな、というかだいぶ散らばってる感じなのは……悩ましいところですね。
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さてART OSAKAに話戻って。
まず良い印象の方。
なかなかに盛況でした。特にgalleriesの方、初日のオープンから1時間後くらいのタイミングでしたが、招待枠とプレスのみでありながらけっこうな賑わいだったかと。逆にいうとちょっと手狭な感じでもあったりもしましたが、購入している場面にもアチコチ見かけましたし、いろいろ好調好調な感じだったのではないかと。
Expandedの方は少し手探り感があったようにも思います。最初の小清水 漸(YOD Gallery)作品が一番インパクトとともにまさにExpandedな出展だったと感じましたが(あとアートコートギャラリーの大西 康明作品も今回ならではの形状とに変形していたのも)。あとは面積こそ広くとっているけど、これ従来の会場規模でもできるんじゃない?というか。まぁ大きいといえば大きいけど、いわゆる大型作品という分類にするには若干物足りない感じも・・であったり。全体的に組み合わせで「引き伸ばし」的な感じな感じもして、たとえばアートフェア東京で見た「四代田辺竹雲斎」などとどうしても比較してしまったりもして、まぁ全部が全部「超」が付く大きなモノでもなくてもいいとも思いますが。
アチコチで行われている「芸術祭」や「ビエンナーレ」とどう違うの?みたいなこともちょっと思ったりしながら、アートフェアとして展開するということは「売る」という部分がある?とすると・・?みたいな。これはどうしていきたいのか、ちょっと良くわからない部分も少しありつつ。
でも作品それぞれは見応えあったと思うのです。
GALLEY麟のフロアは夕暮れとともに見れたらホントはよかったのかも……と上記のトーク映像見て思いましたが。
このあたりは「少なくとも2025年の大阪・関西万博まで続けていくことを目指している(美術手帖より引用)」ということで、まずはクラファンの達成も含め支持を受けてスタートできた、という部分が大事なポイントである気もします。
拡張(Expanded)していくとしていきなり最大限・・そもそも最大限はどこだ、という話ですが、目指す領域があるとして、いきなり1から100にはギュインと伸びるのはいろんな意味で負荷ありすぎなので、筋トレよろしくこのあたりはある程度時間をかける必要があるところなのかなと思います。20年やってきていよいよ、ということであるなら、むしろなおさら時間かかるというか。
あと、日本だとやはり大きな作品は海外とは違う土壌を作っていかないといけないのかもしれないなとも。
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galleriesのセクションは個人的で素直な印象を述べると、別にこの場所でやらなくても良かったのではないか?と思うのがひとつ。
やはり少々窮屈に感じましたし、なによりも「国の指定重要文化財の建物」保存と保護の観点から細かい注意点がたくさんあって設営も一般的な会場よりもかなり気を使ったのではないでしょうかね(申し込み規約も読んでます)しかも、出展者が気をつけていても、来場者はそこまで認識していないので、周囲の壁とかもたれかかったりかばん置いたりして、大丈夫なの?と思う点も。
ひと月ほど前のart stage OSAKAの堂島リバーフォーラムみたいにいわゆるイベントホールやスペースに建込みした方が良いのでは?とはまず感じた部分です。
こういう伝統的な建物使うのって、観光や海外からの来場客を視野にいれるとしたらある意味喜ばれる要素のひとつになりえるかなと思うのですが、かつてのTOKYO PHOTOが増上寺で開催したように。
でもまだけっきょくのところ来場者の大部分は日本人でしょうし、フェアなので観光的な要素はそれほど強くなくても良いのでは?とも思ったり。
KYOTOGRAPHIEのように「京都というブランド」のような一般的なイメージとリンクさせる必要があったらまた違うと思うのですが、KYOTOGRAPHIEは逆にアートフェアではなくて芸術祭なので観光要件はむしろ大事な側面だと思いますが……
アートフェアは実際のところ主催団体の顧客は出展社(ギャラリー)で、その出展社にとっての顧客はコレクター(既存顧客と潜在顧客)であるとしたら場所は極力シンプルな方が良いのでは?と思ってしまうのですけどね。
「行きやすい・入りやすい・見やすい・話しやすい」ことはフェアのUX的にもうちょっと高めの設計の方が良いのでは、といいますか大阪市中央公会堂へのアクセス自体はExpandedの会場の北加賀屋駅などよりは街の中心に近いのでいろいろ行きやすいんですが。3階まで進む行程や場内の動線とか間隔みたいなのには難しさもあったような気がします(正面から入れなかったり)。
で、
ここでふと「実際のところ会場費はいくらかかっているんだろう」という野暮な疑問も浮かび。
結論から言うと、コスパを考えたとき実は「大阪市中央公会堂の方が安価である」ということで。堂島リバーフォーラムのart stage OSAKAは5倍くらいコストがかかっていて(ウェブの情報からざっくり試算ですが)
ついでにいうと、Art Fair Tokyoの東京国際フォーラムはさらにその5倍くらい・・?(Art Fair Tokyoは”国又は地方公共団体等が主催する催事で、国際交流に関わる公益性の高い催事”として多少は割り引かれているかもしれませんが・・)
ついでについでに来年TOKYO GENDAIが展開するパシフィコ横浜も「え、そんな金額なの?!」ってさらに巨額なことをはじめて知り・・CP+とかもそういう感じだったんですねーという(笑
アートフェア・・各所の協賛や助成が入っているとしても出展社の出展料がベースになっているものではあると思うので(来場者チケットも多少あるとはいえ)
会場費・各スタンドの建込み・制作進行諸々や広報展開のリソース考えると、けっこうたいへんそうだな・・というか。art stage OSAKAはまったくSNS展開を捨てているような感じだったのは戦略というより、それだけ会場費にかけていたらそもそものリソース不足なのかも?などとも。
ART OSAKAは20年も続いているのはそう考えるとすごいな、と思うともに、常にシステム的に渋い状況にいる感……というか日本においてイベントごとでよくある問題点な気もしますが、大きさなど問わず息切れ・疲弊しがちになってしまっていないか……ある程度大きければ企業や国のバックアップもあるとは思いますが。先に紹介したトークセッションの「企業が取り組む現代アートの活かし方」みたいなテーマが掲げられるのも、ようやく日本で起き始めた動きだからなのかも、とも言えますし。ある種の「日本の小ささ」も実感せざる得ない感じもしますね。課題的であり、これから伸ばして解決していける部分もあると思いますが、そもそもさまざまな点においての「大きさ」には物理的な限界がありそうで。大局的にそうであるとしたら、自分らなど小さい(スタートアップ的な)団体や、まして個人のアーティストは既存のままでは余計にシンドイ感じではないか……と。
ある意味だからこそ当初から自分らは場所を持とう思ってなかったわけでもありますが。
これまでの枠組みの拡張にも期待しつつ、その大きさが拡がっていくのに入っていく……のも必要かもしれませんが、点を外に足していける……ようにもなっていければ良いなと。
アートってその時々の瞬発力みたいなのもあると思うのですが、一朝一夕ではない長い流れとしての意識も必要だなと思った今回の大阪でした。
最後に。いろいろゴチャゴチャ4000字近く書いたものの、今回の展示の中で良かったなと思う作品を挙げるとしたら、MAKI Galleryのミヤ・アンドウ作品
MISA SHIN GALLERYのフランシス真悟作品ですかね。
ごく個人的にはこういうミニマリスト感というか、情報量を削いで削いでいるようで不思議な重厚感を持っている作品がいつも良いなと思います。
マンガやアニメ文化の文脈に乗っていく感じの描写も相変わらずな感じで。嫌いではないのですがちょっと最近消化不良な印象になるのですよね。
その他、Nii Fine Artsやロイドワークスギャラリー、The Third Gallery AyaやTEZUKAYAMA GALLERYも現場で作品見れてよかったなと。
今回、大阪に行ってNii Fine Artsは中津のギャラリーの方にも伺えてよかったです。野口琢郎作品など。
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