見出し画像

短編小説『初雪』

返信まだかな〜

送ったばかりだというのに、LINEがきていないかすぐに確認してしまう。
そんなすぐ来るわけないのに。
ベッドに寝転び天井を眺めた。
が、
腕はすぐにスマホへと伸びていく。
やっぱりきていない。


同じクラスの彼に好意をもったのは夏休み明けくらいからだった。
文化祭準備を通してどんどん仲を深め、好きも増していった。

でも、
最近特に仲がいいとはいえ、彼が私のことを好きかどうかなんてわからない。
ここでこんなに考えても仕方ないことだ。

うん!今は試験勉強に集中しよ!

しかし、
机に向かってみたものの全く集中できない。
あ〜LINEきてほしい。
頭の中はそのことでいっぱいだった。

その時だった、

ピコン。

さっきまで私が触らなければ光らなかったスマホが、自ら光を放っている。
私はすぐに手に取り内容を確認した。

「話し変わるんだけど、相談してもいいかな?」

彼からの返信にはそう書いてあった。

やった〜、彼からのLINEだ!!!

すぐに返信したい気持ちに駆られたが、グッと堪える。
どこかで聞いたことがある、
返信はすぐにしちゃダメだよって。
ベッドに寝転び、嬉しさのあまり彼からのLINEを何回も読み返した。

でも、相談って何だろ?
さっきまで、お互いの理想のデートの話ししてたのに。

「私でよければ聞くよ!」

ソワソワしてきた私は、10分も経たずにLINEを送った。



彼からのLINEはすぐに返ってきた。

私が思いもしなかった、聞きたくもなかった内容を引っ提げて。

永遠とも感じられる時間、
スマホの画面ではそれが映し出されていた。

「実は俺、
 村井のことが好きでさ。
 どうやって誘えばいいかな?」

彼が好きだという子は、私の親友だった。
目の前はいきなり真っ暗になった。
何が起きてるかも理解できない。

何もできずにベッドに潜り込んだまま数時間が経った。
今も何が起きたのか理解できていない。

でも、
好きな人がせっかく相談してくれた。
好きな人の力にはなりたい。
そう思うと、
ベッドの上に転がっているスマホに手が伸び、
指が動いていた。

「ディズニーとかはどう?
 千春、ディズニー大好きだよ」

「おっ、そうなの?
 でもいきなりディズニーって大丈夫?」

今まで彼からこんなに早くLINEが返ってきたことはなかった。

「たまたまチケットもらったんだけどどう?
 って誘えば大丈夫!
 ディズニーだし、
 赤井から誘われたら断る理由ないよ」

「ありがとう!
 ディズニー誘ってみるわ!
 村井と仲良い井上に相談できてよかった。
 そういえば、井上は好きな人いないの?」



「・・・ううん。
 
 いないよ。

 それより頑張ってね。・・・応援してる」


ふと外を見ると、初雪が降っていた。
窓を開けて手を伸ばす。
目の前で花びらのように舞っている雪は、
伸ばした手のひらに落ちてはすぐ溶けた。
儚く散り、
冷たさだけが、いつまでも手に残った。

あれ、さっきまで何ともなかったのに。
いつの間にか私の視界はぼやけていった。

(おわり)

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?