長い夜を歩くということ 51
おばあさんを見ると、私に背を向けて扇風機の風を浴びて、何をするでもなくテレビを見ていた。
だから私は一人になることができた。
普段から一人でいることが多かったが、それでも東京では常に何かに囲まれる。
患者、見舞客、看護師、医者。そして、それらを繋いでいる人の思惑や感情がボロ屋敷の蜘蛛の巣のように至る所に存在する。
それなりに上手くかわせてやってこれたと思っているが、それなりに上手くかわそうという考え自体が何よりも人と強く繋がってしまっていたことになるのだろう。
左足のポケットに収まった携帯の存在感がキツくそのことを示した。汗は止まり、びっしょりと濡れたポロシャツは風を冷たく感じるほどになっていた。
ラムネの最後の一口を飲み干すと、ビー玉は綺麗で爽やかな音を鳴らした。
それは少年を新しい旅へ駆り立てる希望を暗示するように透明だった。
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