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長い夜を歩くということ 146

「でも、あれはやっぱり暑いものですよ。熱はこもるし、頭は坊主でも結局帽子を被るわけで、それはそれで暑いですから」

「先生は随分と詳しいのですね」

「ええ。中学までは野球をしていましたから」

「あら、そうだったんですか。先生はエアコンの効いた部屋で本でも読んでそうなものなのに。意外ですね」

「部活動以外の時はご想像の通りですよ」

「では試しに、坊主にしてみるというのはどうでしょう?中学時代の思い出も蘇ってくるでしょ?」

「思い出したいと思えるようなことに心当たりがないのでお断りします」

「記憶さえしていない思い出が、今返ってきた時に、大切だったと気付くこともあると私は思います。そのきっかけは、当時と同じ自分に戻ることではないかと私は最近思うんですよね」

「それはいつ演じた役のセリフですか?何か上手いこと言っていますが、私は坊主がもう嫌で高校では野球をしなかったんです。それだけははっきり覚えているのでやりませんよ」

「先生は頑固ですね。じゃあ…これはどうでしょう?」

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