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長い夜を歩くということ 55

 麦穂のように金色に染まった満月が部屋の庭にゆっくりと光を降ろしていた。

霧雨がかかるような優しい明かりに、私は電気をつけることを忘れて魅了されていた。

寝起きで呆けた私の記憶の中に同じ満月が映る絵を見つけた時、携帯のアラームが唐突に鳴った。

18:55と表示された画面に私の意識は木槌で思いっきり叩かれたように引き戻された。

急いで携帯とルームキーを握り、部屋を出た。

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