長い夜を歩くということ 10
彼女は三年後、他に男を作り、子供連れて出て行った。不倫相手はジムで知り合った男性だと言っていた。
私は彼女のことを恨むことはなかった。それ以前に不倫をしていたという彼女の告白に対して感情を感じることはなく「そうなのか」とあっけらかんと答えていた。
泣きながら懺悔していた彼女とは全く対照的であり、私の言葉を聞いた彼女は顔を上げ、私の顔を見て絶句していた。
彼女の告白は、私にとって病院に患者が救急搬送されてくることと同じであり、緊張感はあるものの、結婚をした以上、当たり前に起こりうる可能性の一つだと私自身思っていたのかもしれない。
彼女が出て行った後、その場所は私の居場所となったわけではあるが、空気が固まってしまったかのように重く、冷蔵庫の稼働音がはっきりと聞こえるほど空虚だった。
しかし、これが私の日常であると安心をしている自分もいた。
その女性に出会ったのは独り身の生活が三ヶ月ほど経ち、慣れ始めてきた頃だった。