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長い夜を歩くということ 150

「それに坊主なんてことしたら、それはもう思い出ではなくて、ほとんど呪いですよ」

私は言った後に自分の言葉に気づいた。驚いた。彼

女を見た。彼女も驚いていた。

そして、なぜだか嬉しそうに微笑んだ。

「呪い?ああ、呪い、ね。うん、その方が良いじゃないですか。残酷な先生には私からの呪いを与えるくらいが丁度良いのではないですか?」

「女優というお仕事もなかなか残酷みたいですね。それとも麗華さんだけですか?」

「女は少し悪いくらいのほうが可愛げがあるのよ」

首を傾げて笑いかけた。

彼女の顔はどうしても美しく、窓の外の蕾を吹き飛ばしてしまうくらいに可憐だった。

「呪い…」

私が溢したはずなのに、吐き出した言葉が苦しめる。

彼女の細い腕が私の首を通り抜けて、心臓のさらに奥にある何かを両手で握りしめていた。

知らなかった温度という概念をその何かは初めて受け取り、痛みとともに暖かさを知り、消えていくという冷たさを予感していた。

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