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長い夜を歩くということ 134

「でも、まあ、記者に追われるようなことはもうごめんです。あれは驚くし、いきなり問い詰められるのはいい気分じゃない」

「私たち芸能人の苦労を分かっていただけましたか?」

「ええ。麗華さんの話に初めて共感できました」

私の言葉に彼女は含んで笑い、体を上下に揺らしていた。

彼女の頬に良い血色を見た気がした。

私の体の熱がシャツの中をネズミが這うように掻き回り、ボールペンの持ち手はぬるく染まった。

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