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長い夜を歩くということ 47

 濃い花々の色が太陽に対抗して揺れていた。

私は川岸のブーゲンビリアを見上げ歩いていた。

自分が絵画コンテストの審査員にでもなったかのように、一歩歩くと変わるその景色の中で私の一番を探した。

赤、紫と強い色を放つブーゲンビリアは決して私に同情することはなく、私の網膜を独占し、その足を止めさせようとする強情さまであった。

私はその花に昨日神山さんの話に出た杏奈という女性が重なった。

合間に覗かせるヒペリカムヒデコートは、その黄色の花を小風に揺らして奥ゆかしく笑っていた。

その姿は上品で可愛らしく、樺澤麗華の癖だった口を隠す笑顔によく似ていた。

先へ進むと、太陽を求めて茎が横に伸び、私の頭上は緑に覆われ影になった。

葉が重なる深い緑と、一枚だけで透ける陽気な緑のコントラストは、まるで絵の具を投げつけた前衛芸術のようで強く美しく、葉の隙間から覗く空の青までも、眼前で塗りつけられているような躍動感を持っていた。

葉の隙間から漏れ入った光はレールのように地面まで伸び、漂う塵でさえもドレスの装飾品のように輝いていた。

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