各部位,何回トレーニングするべきか?(トレーニング頻度)
各部位を週に何回トレーニングしていますか??全身トレ?分割トレ?分割なら何分割?? ボディビルダーのように5分割にして各部位週1回でトレーニングしている人もいいれば,毎日全身トレーニングの人もいるのではないでしょうか??
今回は,トレーニング頻度について科学的知見をもとに話したいと思います.
筋タンパク質合成;Muscle protein synthesis (MPS)
まずはじめに,筋肥大及び筋力向上には筋タンパク質合成;Muscle protein synthesis (MPS)が重要になります.筋タンパク質合成とは,字のごとく筋タンパク質を合成することです.つまり,筋肉を作ることです.この筋タンパク質合成は栄養摂取とレジスタンストレーニングつまり筋トレによって促進されます.
Phillips, SM, Tipton, KD, Aarsland, A, Wolf, SE, and Wolfe, RR. Mixed muscle protein synthesis and breakdown after resistance exercise in humans. Am J Physiol 273: E99–E107, 1997.
この研究は筋トレ非熟練者における筋タンパク質合成は筋トレご48時間持続することを報告しています.一方で,
Damas, F, Phillips, S, Vechin, FC, and Ugrinowitsch, C. A review of resistance training-induced changes in skeletal muscle protein synthesis and their contribution to hypertrophy. Sports Med 45: 801– 807, 2015.
は,筋トレ熟練者における筋トレ後の筋タンパク質合成はおよそ24時間のみ持続すると報告しています.このように,筋トレの経験によって筋トレ後の筋タンパク質合成反応は異なり,その差は2倍近くになります.筋肥大を最大化するためには,この筋たんぱく質合成反応を効率よく促進する必要があります.したがって,非熟練者では48時間毎に筋肉に刺激を入れ,熟練者においては24時間毎に刺激を入れるのが筋たんぱく質合成を最も効率よく促進するのではないでしょうか?実際に,トレーニング頻度が,筋力及び筋肥大に及ぼす影響を見ていきましょう.
トレーニング頻度と筋力向上
Colquhoun, RJ, Gai, CM, Aguilar, D, Bove, D, Dolan, J, Vargas, A, et al. Training volume, not frequency, indicative of maximal strength adaptations to resistance training. J Strength Cond Res 32: 1207–1213, 2018.の研究はトレーニング頻度が筋力向上に及ぼす影響を検討しています.具体的には,週3回と週6回のトレーニング頻度を比較しています.結果は,週6回のトレーニングは,週3回のトレーニングよりもトータルのパワーリフティングスコアが向上していますが,両者において有意な差はないです.つまり,週3回のトレーニングと週6回のトレーニングが筋力及び,筋肥大に及ぼす影響は類似しています.
一方で,Grgic, J, Schoenfeld, BJ, Davies, TB, Lazinica, B, Krieger, JW, and Pedisic, Z. Effect of resistance training frequency on gains in muscular strength: A systematic review and meta-analysis. Sports Med 48: 1207–1220, 2018.の研究は,トレーニング頻度が筋力向上に及ぼす影響をメタ分析という方法でレビューしています.メタ分析とはすでに分析されたデータをかき集めてさらに分析する手法で,比較研究などの手法よりも質の高い根拠であり,より信頼できるデータです.このレビューは週あたりのトレーニング頻度と筋力向上には用量反応つまり,頻度が高いほど筋力増加が大きいことを報告しています.しかしながら,この関係はトレーニングボリュームが同じ場合見られないことも報告しています.つまり,同程度のボリュームのトレーニングの場合,トレーニング頻度は大きな影響を与えないということです.
しかしこれらの研究にはいくつか不明な点があります.
たとえば,多くの結果は,非熟練者を対象とした研究であり,熟練者への影響はあまり検討されてません.前述の通り,熟練者と非熟練者では,トレーニング後の筋タンパク合成が持続する長さが異なるため,トレーニング頻度が与える影響も異なる可能性があります.さらに,レビュー研究の中の多くの研究は週4回もしくはそれ以下で検討しており,週6回などの超高頻度での影響はあまり検討していません.
トレーニング頻度と筋力向上
これまでは,トレーニング頻度が筋力に及ぼす影響を見てきましたが,この研究はトレーニング頻度がきん肥大に及ぼす影響を検討しています.
Schoenfeld, BJ, Ogborn, D, and Krieger, JW. Effects of resistance training frequency on measures of muscle hypertrophy: A systematic review and meta-analysis. Sports Med 46: 1689–1697, 2016.の研究はトレーニング頻度が筋肥大に及ぼす影響を検討しています.この研究は週2回のトレーニング頻度は週1回のトレーニングよりも筋肥大に効果的と報告しています.しかしながら,筋力を検討した研究と同様に,超高頻度トレーニングが筋肥大に及ぼす影響は不明です.さらに,熟練者への影響もあまり検討されていません.では,超高頻度トレーニングが熟練者に及ぼす影響はどうなのでしょうか?
熟練者と頻度
Saric, Juraj1; Lisica, Domagoj1; Orlic, Ivan1; Grgic, Jozo2; Krieger, James W.3; Vuk, Sasa1; Schoenfeld, Brad: Resistance Training Frequencies of 3 and 6 Times Per Week Produce Similar Muscular Adaptations in Resistance-Trained Men.The Journal of Strength & Conditioning Research 33:122-129, 2019. は,超高頻度トレーニングが熟練者における筋力及び筋肥大に及ぼす影響を調査しました.実験参加者はランダムに週3回トレーニングするグループもしくは6回トレーニングするグループに分けられました.両グループとも全身トレーニングを6週間,週あたりのトレーニングボリュームは同等で行いました.測定項目はベンチプレス・スクワットの1RM,きん持久力測定のための,60%1RMでの最大反復テスト,そして,筋サイズを6週間のトレーニング前後で実施しました.
結果は,スクワットの1RMはトレーニング前後で変化なし.ベンチプレスはトレーニング後に向上したがグループ間で差はなし.筋持久力の向上も見られなかった.上腕三頭筋,大腿直筋,外側広筋の筋サイズは両群においてトレーニング後に有意に向上したが,グループ間の差はなし.上腕二頭筋は週3回トレーニングした群のみでトレーニング後に向上.
したがって,トレーニングボリュームが同じ場合,週6回のトレーニングは週3回と比較して筋力向上及び筋肥大により良い効果があるわけではない.
結論
つまり,トレーニング頻度はトレーニングボリュームが同じ場合,トレーニング熟練者においては,筋力向上及び筋肥大に重要な要素ではない.
これらの研究結果をまとめると,おそらく,各部位に週2回はトレーニングするべきであり,3回以上やっても効果はあまり変わらないので,好みや,スケジュールに合わせて使い分けると良いでしょう.また,サイクル毎に頻度を変化させるのもいいと思います.
さらに,トレーニング頻度を上げることによって,トレーニング強度やボリュームを上げることが簡単になるので,高強度や高ボリュームでやりたい方,やりたいときはトレーニング頻度を上げると良いでしょう.
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