見出し画像

心理的安全性のある組織

チームを構築する上で心理的安全性が大事だよね、という話を皆さんもよく耳にするかと思います。
確かにめっちゃ大事だと思います。一方で心理的安全性という言葉の理解の仕方によっては本来あるべきチーム像から離れてしまうリスクもあるんじゃないか、と思ったので書いてみました。

そもそも心理的安全性とは?

ググってすぐ出てきたサイト様より引用させていただくと、このような定義らしいです。

「心理的安全性(psychological safety)」とは、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態
〜中略〜
心理的安全性が高い状況であれば、質問やアイディアを提案しても受け止めてもらえると信じることができ、思いついたアイディアや考えを率直に発言することができます。

株式会社リクルート 人材育成・研修・マネジメント用語集より

雑にいうと誰でもが安心して発言できる環境=心理的安全性が高い環境ということかなと思います。

そういったチームにいた経験がある方は共感できると思いますが、心理的安全性が高い状態のチームは議論が活発で、その分そうでないチームより多くの論点を考慮できて、アウトプットの質がものすごくよいです。

「なるほどよっしゃ、明日から思ってることはなんでも言おう、俺は心理的安全性を布教するために何でも包み隠さず発言していくんじゃ!」、と思った方(んなやついないとは思いますが笑)ちょっと待って下さい。

言いたいことを好き勝手言える環境=心理的安全性が高い、というわけではなく、言いたいことを気持ちよく言い『合える』環境が心理的安全性が高い状態なのではないかと考えています。
最悪の状態から目指すべき状態に持っていくためには、いくつかのステージを経て、チーム全体のコミュニケーションの質を改善する必要があるように思います。

フェイズ1 何も言えない状況

言わずもがなでこれが最悪です。リーダー(でなくてもいいですがよくあるパターンがリーダーなので便宜的にリーダーにしておきます)がいて、その人が論破王であるとか、怖いとかで、怯えてしまったり、意見する意味が見いだせなくて発言したくなくなってしまう状態です。

これはリーダーが問題なので意識改革をするか、リーダーを代えるかくらいしか私には解決策が浮かびません。

フェイズ2 言いたいことを好き勝手言える状況

リーダーに代わってもらうなり何なりして最悪の状況を脱すると、チームのそこここから発言が見られるようになると思います。
このフェイズ2を経るか否かは多分にチームメンバーのスキルに依存するのですが、もしここに至ってしまうと少し厄介かもしれません。

リーダーはみんなが意見してくれてることから、心理的安全性は高いだろうと認識しますし、メンバーは自分の意見が言えてることで聞いてくれているだろうと満足します。
そのため問題意識を持ちづらい、それがフェイズ2の状態です。

言いたいことを好き勝手いうのですから議論が散らかったり、本質的に議論されるべきところではなく、実現可能性の低いアイデアについて長い時間議論をすることになったりなどなど。
人によっては悪意の有無はさておき、毛羽だった(?)物言いをしてしまったりするので、逆にリーダーが萎縮してしまい心理的安全性が一方通行になってしまったりすることもあります。

リーダーはみんなの意見を集約して前に進めないといけないですが、とっちらかっているので収束に労力がかかり、収束の過程で漏れたアイデアがあれば発言者は「なんで採用されないのかな?」というストレスや不信を募らせてしまいます。

リーダーは疲れ(ときに怯え)、メンバーは不満がたまるので、リーダーの能力によってはフェイズ1のときよりもアウトプットの質が悪くなる可能性すらあります。

出てくる意見の質に関してはリーダーまたはファシリテーターの方向性づけの意識が、コミュニケーションの質の問題に関してはメンバーが適切な否定の仕方や代案の出し方に問題があるケースが多いように見受けられます。

フェイズ3 代案なき否定をしない状況

フェイズ2の状況に陥ってしまった場合、半ば強制的に状況を緩和するやり方として、「何かを否定するときは代案とセットにする」、というやり方があります。

これを導入すれば安易かつ非建設的な否定論は減り、前向きな議論が多くなります。
当然個々人の経験やスキル差で代案の質が低く、フェイズ2とそう変わらない状態になることもあるとは思いますが、殺伐とした「議論のたたき台」殺しの発生はかなりの確率で防げると思います。
せっかく勇気を持って議論のたたき台を用意したのに、「そのアイデアは実現不可能ですよね」みたいなヘッドショットのリスキル連発されたら即引退したくなりますよね。ゲームで例えちゃったのでこの文章はわからなくて大丈夫です。

一方で、絶対放置してはいけない論点で、なおかつ代案が思い浮かばない状況に対してNOを封殺してしまっているので、リスクもかなり背負ってしまっている状況ともいえます。
※フェイズ3の状況下でNOを言うなとは言ってないです。プロジェクトもみなさん自身を守るためにもヤバそうなものにはNOをつきつけましょう。

最終フェイズ 誰でもが安心して発言できる状況

フェイズ3をしばらく続けていると、代案は出ないけどアラートをあげなきゃいけない状況というものにも遭遇してくると思います。
ただ一度代案を考えてから否定するクセをつけておくと、発言の前に思考する時間が増えてくるはずです。

誰かの意見と違う意見を持っているときに、「なぜその人はその意見に至ったのか、どういう制約や背景、目的があってその選択肢を選んだのか」を考え、その上で自分の意見を発信する。
自分の専門領域外の人の発言に対してその発話者の背景を汲み取りその発言に至った思考をトレースするという離れ業をやろうぜ、と言っているので、無理ゲーと言っても差し支えないかもしれません。

しかし、発言前の数秒が積み重なることで、自分の主張したいことを構築する前に相手の主張の背景を考える時間が生まれます。
相手の発信に考えを巡らせ、理解し、その上で自らも発信するようにすると、発言自体が双方向性を持つようになります。

相手の思考のトレースを精度高く実行できる必要はなく、異なる意見の背景を理解しようとする姿勢からの発言は、フェイズ2の一方通行のコミュニケーションとは決定的に異なってきます

結局、心理的安全性において論理的であることや、自分が正しいということを通すことは必ずしも譲れないものではなく、お互いの状況や目的を理解しようとする姿勢が重要になってくるように思えます。
更にいうと、自分の中でその姿勢をめちゃめちゃ強く持っていても周りからそう見えなければ超意味ないので、周りからそういう姿勢で臨んでいるんだということが理解されている状態まで持っていく必要があります。

まとめ

心理的安全性は何でもかんでも言いっぱなしにできる環境のことを意味するのではなく、立場に関わらず相互の立ち位置を想像した上で、活発な議論を行える環境なのではないか、と考えています。

活発な議論を行うには、専門領域を超えたコミュニケーションスキルが職種に関係なく必要になってきます。
一朝一夕で身につく技能ではないので少なくとも姿勢として持つことが大事なんじゃないかと思います。
気にしすぎて何も発言できなくなってしまうのも本末転倒ではあるので、相手のことを慮れているのだろうか?という問いを常に持ちながら行動するのが大事っていうことでしょうかね。

ちなみにマネーフォワードのカルチャーの中にはRespect 感謝と尊敬を忘れずに、誰に対しても誠実であり続けようというものが含まれています。
私達も完璧ではいられないのでまだまだ発展途上ではあるのですが、少なくとも会社として周囲へのRespectを失わないようにしようよ、ということを文化としています。

当然うちの部署でもそれを意識してプロジェクト運営を心がけています。
その一端が下記のインタビュー記事でもちらっと垣間見えるかなと思います。

例えば何かしらおかしな点を私が発見して指摘したとするじゃないですか、そのときに持ち帰らないでその場で決めるというイメージが凄く強いです。
いちいち「◯◯さんに聞いて」とか回されることもなく、その場のミーティングとかで「そうですね、そうしましょう!」とすぐ決まる感じだなぁと。

そんな心理的安全性の高い組織を目指しているチームにご興味ある方はぜひご一報ください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?