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読書感想 ~幽世の薬剤師~

先日投稿しました「夏の新潮文庫」に記しましたが、最初の1冊目に「幽世の薬剤師」を選んで読みました。


私は薬剤師なので、タイトルだけでも目を惹かれました。その上、表紙のイラストを見ると単に医療現場で働く薬剤師を描いた作品ではないのだろうなとも想像できたために読んでみたくなリました。


私の中では、この作品は以下の2点を注目しています。

①異世界で活躍する主人公


薬剤師は医療の現場では表立って仕事してる訳でないから目立ちません。
複数人の患者さんが入院できる病院だと、
医師と看護師と比べると立場は弱いです。

私が就職する前の時代と比べれると顕著じゃないようですが、そんな力関係を感じてしまいます。
そんな影響があるために職能を発揮している実感が湧かないこともあります。

だから、主人公の空洞淵 霧瑚が職場で抱えている不満が理解できます。
もし私が霧瑚のように作品に書かれている幽世という異世界に移ってしまったら、彼と同じ心境になるでしょう。
現世と常識が異なる幽世の世界観に戸惑いながらも、薬剤師としてのやりごたえを感じるでしょう。

②神秘的な宗教観


ヒロインの御巫 綺翠は異世界の巫女であるため、現実世界とは異なる宗教観を持っています。
神の存在を信じる、というよりも、
人々の祈りや畏怖が長い年月をかけて積み重ねて神性を形成していった、という旨を語っています。巫女は人々が信仰心を形成し続けるために存在しているように思えます。

世界には数多くの宗教があり、その宗派が複数に分かれているものもあります。各宗教はその考え方と価値観は異なっているようですが、
ヒトがより良い生き方をするための道標としての役割は共通なのではと思えます。


私は日本人であり日本で暮らしていると古来からの神道を信じているのだと分かります。
実家である名古屋に帰省した際に熱田神宮へ訪れたくなりました。
各鳥居を通る際と賽銭する時は礼節を重んじたくなります。



薬剤師として生き甲斐を持っている主人公に共感しつつ、ヒロイン達が形成している宗教観に納得できる作品です。
それと、ラブコメ要素もある作品のため、
霧瑚と綺翠の仲が深まっていくことも本作の魅力ですね。

新潮文庫は高校生の頃に図書室で目にしており、
明治時代に生まれた文豪の作品を取り扱う硬派な印象を持っていました。

幽世の薬剤師がある新潮文庫NXは従来のイメージを一新してラノベのテイストを感じます。
老舗の文庫を出版している新潮社の新たな取り組みに好感が持てます。

終☺️

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