第十二回読書会:カミュ『ペスト』~不条理の文学~レポート
時節柄、あちこちの読書会でも取り上げられ注目されている作品ですが、参加者も多く盛り上がりました。
意外にも常連さんが、軒並み読了できなかったというハプニングも(@_@;)
海外文学は登場人物が多いうえに、日本人にとっては区別がつきづらく苦戦しがちですよね・・・
挫折してしまった方は、オリエンタルラジオ・中田敦彦さんのYouTube大学で楽しく分かりやすく解説されていますので、ぜひ見てみてください!
と、動画紹介では読書会レポートではなくなってしまいますね・・・
まずは登場人物を整理してみましょう。
『ペスト』登場人物
■ベルナール・リウー:主人公。医師。
■ミッシェル老人:リウーが住むアパートの門番
■レイモン・ランベール:新聞記者
■ジャン・タルー:リウーが住むアパートの最上階のイスパニア人舞踏師の部屋によく出入りしている。
■パヌルー神父:イエズス会士
■ジョゼフ・グラン:オラン市庁の吏員
■コタール:自殺未遂を起こした男
■リシャール:オラン医師会会長
■カステル:老医
■ジャーヌ:リウーの妻
■ラウル:密輸のブローカー
■ゴンザレス:密輸のブローカー
■ガルシア:密輸のブローカー
■オトン:幼い息子がペストに罹患している。判事
■マルセル:不良男子高校生
■ルイ:不良男子高校生
ここからは、当日聞かれた声をお届けしていきます!
不条理の文学
まずこの作品の特筆すべきことは、作者カミュがペストの大流行を経験していないという点です。
カミュの鋭い人間観察力と超越した想像力のなせた作品なのです。
不条理の文学といわれるように、ペストは生かす人・殺す人を選びません。
宗教との向き合いかたも問うている作品ともいわれています。
また、ナチスを寓意的に描いているともいわれています。
読みづらいゆえん~書き手(語り手)が最終章で明かされる
正直、誰の視点で書かれているのかぼやけているため、読みづらい作品です。
最終章でその部分は明かされますが、記録書の形態を採用することで、臨場感、リアル感が演出されています。
ジャーナリストでもあった、カミュらしさ満点の手法でしょう。
ヨブ記を彷彿とさせる内容
今回面白かったのは、聖書のヨブ記に似ているという意見でした。
【ヨブ記】旧約聖書中の一書。義人ヨブ(Job)が罪なくして子・財産・健康を失うが、絶望的苦悩のうちにあってなお神を求め、その信仰によってすべてが回復せられ神の祝福を受ける物語。(出典:デジタル大辞泉)
あらゆる困難があっても信仰をあきらめなかったヨブ。
一方ペストに出てくる、イエズス会神父のパヌルーは、悩み苦しみペストに屈するまでの過程が、壮絶な筆致で描かれています。
これは単純な宗教批判というよりは、信仰とは何かという本質的な問いかけになっているように思いました。
抑圧されていた人が好転する
実際に平時に精神病を患っている人が、世の中が混乱に陥ったときに好転することが多いそうで、普段、抑圧されて自分を押し殺して生活している人が、「大変なのは自分だけじゃない」と、逆に元気になっていくそうです。
自殺未遂を犯した犯罪歴のあるコタールも、悪人としてですが、ある意味同じ線上で解釈ができそうです。
コタールや密輸一味にとって、ペストが”福音”になっているのです。
混乱しているときに暗躍する人物は、現実世界のコロナ禍でも出てきました。マスクを法外の値段で売りさばいて荒稼ぎするニュースを見たことがあります。
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アルジェリアにある港町、オランを舞台にした群像劇。
「最も救いのない悪徳とは、自らすべてを知っていると信じ、そこで自ら人を殺す権利を認めるような無知の、悪徳にほかならぬのである。殺人者の魂は盲目なのであり、ありうるかぎりの明識なくしては、真の善良さも美しい愛も存在しない。(カミュ『ペスト』新潮文庫P.193)」
2020年11月8日日曜日開催
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