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13歳から通っていた美容室オーナーの七回忌フェスに行ってきた美容業界誌編集の話

更新していない間にいろんなことがありました。
そもそも自著が出ることが最大のトピックであるはずが、そのほかにもこんなことがあった。

(※上記Twitter、オタ垢兼消費者との交流・情報収集を目的にしていますので、美容師さん・美容関係者の方はブロックしています。機械的な処置ですでどうか気になさらないでください。)

今日はその一番上。学生の頃から通っていた美容室のオーナーの七回忌に出席してきました。

福岡の繁華街の喧騒から少し離れた、というか私の家から走って数分のところにある一軒屋の美容室・BEEHIVE DELUXE。オーナーは上野達也さん、通称BOSS。

中学1年生の頃に初めて行って、以来転職して東京に来るまで14年通いました。大学で京都に住んでいたときも、帰省のついでに行っていたし(ロング&黒髪ブームだったので来店サイクルが長かった)。大分に住んでいるときは大学時代以上に暇さえあれば福岡に帰っていたので、結局大分の美容室には行かずじまいで。

そんな長いご縁もあって、今回喪主の広子さんに「BOSSチルドレンとして挨拶を」とご依頼いただいたのですが、そのために振り返った思い出を残しておきます。

私が翌日の引っ越しのために中座をせねばならなくて(詳細は「いろんなこと」パート2の「家に住めなくなった話」に続く)、宴の冒頭だったものだから、湿っぽい空気にしたくなく全カットしたんだけど。そんなエピソードです。

「どこで髪切ってるの?」最初で最後の“紹介”で行った美容室

ちょっと、見てほしい写真があるんですけど。

日付見えます? 1999年の3月と4月の2枚の写真。小学校の卒業式と、中学校の入学式の写真です。
そして、わかります?この温度差。入学式の方、明らかに顔が死んでるじゃないですか。寄ってみましょう。

キレてますね。入学式やぞ。

そして、比較すると、たった数カ月でよりブスになっているのにお気づきいただけますでしょうか。これ、校則にのっとって髪を切り、ほぼ久しぶりに肩上にしたらものすごい変な髪にされたのでキレてるんです。傘がダサいからキレてるのもちょっとある。
別に初めて行った美容室ではなくて。でも、母と祖母が行っていた、女性の先生がお一人でされている昔ながらの美容室でした。もちろんそういう老舗サロンを否定するつもりは全然ない。今思えばその先生はドライ状態からレザーで切っていて、直毛で細くて硬いという、当時でいう「現代っ子」な髪を現代風のWash&Goに適応させることができなかっただけなのかなと思うのですが。

親が切ってもニコニコしていたような無頓着な性格と扱いやすい髪だったので、こんなに「髪が嫌」でキレるのはこれが最初で最後の経験でした。

で、入学後。しばらくして仲良くなった隣の小学校の友達に、顔と髪が可愛い子とおしゃれで髪が可愛い子がそれぞれ一人ずついました。
ある日美容室の話になり、2人が同じところに行っていることがわかった。(多分光さんがかっこいいとかそういう話だったと思う。草。元気ですか)

「それ、どこ⁉︎ 私も行っていい?」

それがBEEHIVE DELUXEとの出会いでした。1つ前にこんな記事↓を書きましたが

答えは、周りの素敵な髪形の人に紹介してもらう
「どこの美容室に行ってるんですか?」と聞く。マジでこれしかありません。王道というか、正道、一本道だと思う。

https://note.com/shuko_740/n/n079ad8b983ab

これの根拠ってただの実体験なんですよ。
13歳の秋くらいから27歳の夏まで、ずっと通いました。そして、美容業界誌の編集を丸10年続けてる。
後付けだけど、これがBEEHIVE DELUXEがどんな美容室だったか、BOSSがどんな美容師だったかの答えだと思う。これ以上の根拠と表現を私は持たないです。

単価3,000円、たま〜にフリーで来る“ガキ2匹“を全員で家族みたいに迎えてくれた

今みたいにネット予約がないから、電話番号を調べて自分で電話しました。どんな会話をしたかは全然覚えてないけど、学生カットで新規だからフリーで予約。当時はフリーとか指名とかっていう言葉も知らなかった。

滅多に緊張しない心臓にファーが生えてる私ですが、行くのは流石に緊張した覚えたあります。
でも、緊張するよりも先に、ドアガラス越しに私を見つけたアシスタントさんがドアを開けてくれて「こんにちは!」と声をかけてくれました。

以来14年、いつ行っても誰が受付にいても、人が入れ替わって新人さんが入っても「こんにちは!」と迎えてくれるのはずっと変わらなかったです。

それは、七回忌の日も同じでした。
通っていた当時の馴染みのメンバーは全員独立していて、今のBEEHIVE  DELUXEに私のことを知ってる人はいないんですよ。でも、サロン前につくなり、店前にいたバーツくん↓が「こんにちは!」と迎えてくれました。
20年、人が変わっても変わらない「こんにちは!」に、もう泣きそうでした。

初対面なのに積極的に晒す。King Gnuじゃないです

私と、1年くらい経って、当時小6の弟も一緒に通うようになりました。
ここまでの流れからわかるように、普通子供の頃から通う美容室って親や家族に連れられて行くものだと思うんですが、私と弟は違いました。(※今はなんやかんやあって両親とも同店OBが切ってるが。)

つまり、私たちは「顧客様の子供」でもなんでもない、純然たる「ガキ二人」なわけです。カット単価がそもそも低い、プラスメニューできない。しかも指名料も取れない。美容師さんの利益の面から見ると、なんの旨味もないガキ二人。
どんなお客さまでも全力でおもてなしするのは当たり前だろ、というのは顧客目線の正義には違いないけど、現実問題それがどんなに難しいかわかる今だから、そんな「ガキ二人」のことも、他のゲストと同じ、あるいはそれ以上のあたたかさで「こんにちは!」と迎えてくれた“有り難さ“を噛み締めたりしています。

誰が担当してくれても「次行くのが楽しみ」だった

七回忌の法要の後は、会場を移動して「BOSSフェス」がありました。出し物(?)とかライブとか、BOSSを慕う人が思い出を語ったりとか。

全員独立してるオーナーたち。40代の本気が眩しい。出会ったときは10〜20代だった

眺めてて、私、この写真に写ってるうち隆志さん以外全員に髪切ってもらってたんだな〜ということに気づきました(※隆志さんはこの中で末っ子なので、デビューした頃にはもう指名をしていたからです。めちゃいい美容師さんです。独立されてるよ)。遺影でわろてるBOSSも含めて。

これも、親の影響で通ってたわけじゃなくて、「フリーで行くガキ」だったからなんですよね。もちろん弟のことも全員切ってます。こういう関係性の客も、かなり珍しいんだろうなって。

そこから指名で通うようになった経緯を振り返ると、身も蓋もな言い方で恐縮ですが、その時デビューしたてで客数のキャパに余裕がある人につくようになったんだと思います。その方が辞められた後も、同じようにその後輩の方へ、って感じだった。フリーで行ってた時、担当してもらうのが多かったってことは、要はそういうことだからですね。

それでも、毎回「今日も楽しかった!」「いい感じや!」って思いながら帰路についていたわけです。誰が担当しても、どんなにデビューから日が短い人が担当しても、100%の確率で。だからまた、次回も行く。その繰り返しが14年。

このことから、本職の目線で若干偉そうで恐縮ですが、美容室の満足度って、うまいとか下手を超えたものであるということがわかる。だって、どんなにいい先生のもとで修行してても、デビューしたてのスタイリストより上手い人なんて近所にごまんといるわけです。それでもリピートしない人もいる。

じゃあ、転職前で私の目が肥えていなかったから未熟な技術でもよく感じたのか?というのも違う。多少田舎くさくて垢抜けないながらも、当時の私の写真や映像は、今見てもぜんぜんかわいいです。(かわいいです?)
田舎くさいのは、実際に田舎に住んでいたからだと思います。私の着こなしの問題が8割。
つまり、よく美容師じゃない美容業界人がいう、「大切なのは技術じゃない★」なんて詭弁も、眉唾だということがわかる。

で、BOSSに切ってもらったことも2回くらいあります。1回は強烈に覚えてて、校則通りの長さだと分け目が割れて浮くんですよ、みたいな話を受けてやってくれたダブルバング風の前髪。翌朝セットしないで学校に行けた感動をよく覚えています。
じゃあ、BOSSが一番上手いのは当然として、そうやって感動もしてるんだけど、他の人に切ってもらって「やっぱ BOSSじゃないと!BOSSカットを知ってしまうと他には戻れない!」とはならなかったのは、めちゃくちゃミソだと思ってて。
「なんでだよ!」って言ってるかな、BOSS。いやごめん、私の目が肥えてなかったせいでもあるんだけどさ。あと、私、髪質がいいから割と誰が切ってもサマになるので。

いや、でもやっぱり、BOSSは「そうでしょ〜?」「うちの子たち上手いんだよ」って言うんじゃないかと思うな。

誰が切っても楽しくて、可愛くなって、帰りに必ず広子さんが褒めに来てくれて。
当時は、というか27歳のその時までそれが「当たり前」だったけど、10年間美容業界で働いてみて、当たり前なんかじゃないと今さら強く思うのでした。

14年「美容室に行くのが楽しみ」だった私だから伝えられることが絶対ある

私が美容業界誌の編集に転職すると伝えたとき。カラーの放置中にBOSSは嬉しそうに寄ってきて「取材してね〜」とニコニコしていました。
正直、当時は編集の“経験者“の資格がほしかっただけで、数年で転職しようと思っていたので「いる間にできるといいな」くらいの気持ちでノリよく返事してしまった。

それが今、自分で「天職だなこれ」と思っています。

それは、私がBEEHIVE DELUXEの“一お客さま“のときから美容室が大好きだったからだと胸を張って言いたいと思うんです。
この業界では、編集などの美容師免許を持たない側の意見が美容師さん側の肩を持ちすぎると「視野が狭い」だとか「お客さま目線が足りない」みたいなことを言われるふしがあります。逆に、「お客さまはこんなに美容室がストレス」「歯医者くらい行きたくないもの」ということを積極的に啓蒙し、“世間目線”の自覚を促す人もいる。
私が「一度も変な髪にされたことがない」「美容室が好き」なのを「お客さまの苦しみがわからない」と、適性を否定してきた同業者も何人もいました。

でも、私はそれは逆で、14年間「美容室に行くのが楽しみ」という経験をし続け、その後も公私共に美容師さんに大切に扱ってきてもらったからこそ、むしろ適性が強いと思っています。
そもそも、単に上記の指摘は論理が欠落しています。「経験がない=わからない」と考えるのは知の放棄で、取材者として由々しき発想です。お客さまの不満や悲しみを知るために「取材」という方法があるのでは?というだけの話。シンプルに同業として大丈夫?って感じの非論理性なのですが、それを当たり前のようにいう人も残念ながらたくさんいます。
(つーか歯医者に謝れや、という問題でもある。私今、すごい好きな歯医者見つけて、歯医者行くの超楽しいですよ、というのも補記しておきたい。)

私の「美容室・美容師が好き」なのは、業界誌の編集として好きなのではなく、「子供の頃から10年以上大事にしてもらった一顧客として美容室と美容師が好きで信頼している」という究極のお客さま目線なんです。
高単価・高価値を打ち出すサロンは、お客さまに「美容室が好き」「信頼している」と思ってもらい、人生のパートナーになることをめざしておられるところがほとんどですが、だとしたらその“具体例“が私です。
そう断言できる。

悔やまれるのは、そう断言できるまでに10年かかってしまったことです。
BOSSのつくったサロンのおかげで今の私があるのに、私がここを天職と思っていることに気づくのの10年かかってしまった。10年前の「取材してね〜」とはにかむ顔が、最後に見たBOSSの姿でした。約束を守れなかったことが悔しくてなりません。

でも、BOSSは生粋の技術者なので……10年そこそこの私のことも「まだまだ青い」と笑ってくれるかもしれない。そう思うようにします。

もう1個悔やまれるのは、この立場になってBOSSと話すことができれば、ということも。ただのゲストだった当時にはわからない、オーナーとしての迷いや内部的な課題も抱えていただろうし。それを解決することなどただの編集風情の私にはできませんが、そういう奥行きにも触れたかったな。そんな、子供の目にも魅力的な大人でした。

毎度のごとくとても長くなってしまいましたが、私のバックグラウンド、第二の実家ともいうべき最高の美容室のことを知っていただけると嬉しいです。

いつかあっちに行ったら、中学生のときぶりに髪を切ってもらおう。
そのためにも、みんなに褒めてもらってきた髪質を大事に、健康毛のばあちゃん目指して……。美容業界人としても、もっともっと精進し、BOSSイズムを業界に継承したいなって。
僭越ながら、そんなふうに思います。

★★★2023年3月末・書籍を上梓します★★★

宝塚の座付き作家を推す!   スターを支える立役者たち 七島 周子(著)
四六判  280ページ 並製
定価 2000円+税
ISBN978-4-7872-7453-3 C0074

https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787274533/

ISBN978-4-7872-7453-3 C0074
ISBN978-4-7872-7453-3 C0074
ISBN978-4-7872-7453-3 C0074
ISBN978-4-7872-7453-3 C0074
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