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【エッセイ】初心と慢心


あなたには、何か継続しているものは無いだろうか。

仕事、趣味、ダイエット
どんな種類のものでも良い。

それらを初めた時のことを思い出してほしい。
どんな気持ちだったか。

「うまくやっていけるかな」
「言われた通りにできるかな」
「きちんと続けられるかな」

きっと不安があって、緊張していたのではないだろうか?

動作は慎重になり、目の前のことに精一杯。
どんなに単純で簡単な手順でも大切にしている。


不安以外には、希望もなかっただろうか。

「社会に貢献したい」
「プロみたいに上達したい」
「モデルみたいな体型になりたい」

きっかけになった目標やビジョンがあり、達成に貪欲な自分もいたはず。

この不安と希望が混ざりあった状態、それが初心というものなのだろう。


経験を重ねていくと2つの変化が訪れる。

1つ目は”慣れ”

動作や環境の勝手がわかり始め、心理的な負担は減る。
抑えるべきポイントは明確になり、対応もどんどんスムーズに。

過去の積み上げから、自信もついてくる。
多少のトラブルがあっても、冷静に対処することができる。

周囲から評価される機会も出てくるだろう。
それによって、2つ目の変化が現れる。


それは”満足”だ。

上司から褒められる、
友達が変化に気付く、
体型の変化が目に見える、

暫く続けていると、努力が報われ始める。

だが、この”満足”が厄介だ。
なぜなら、中毒性があるから。

一度結果が出てしまうと、同じかそれ以上の結果を求めてしまう。

誰かに認められれば、より大きな承認を。
体重が減れば、もっと減らしたくなる。

そして、既に得た”満足”は忘れられず、
失くなることを恐れ、執着してしまう。

しかも、この”満足”は予期しない形でやってくることが多い。
ビジョンに邁進していた過程で偶然得られたり、本来の目的とは外れる。

特に、気を付けたいのは他者からの評価。
ひときわ中毒性が強い上に、「付きやすく離れやすい」という変化に富む。
しかも、音を立てずに忍び寄ってくる。

この種の"満足"は、幻想を際限なく生み出し、僕らを惑わせる。
その幻想は強烈で、無意識にズルズルと引き込まれていく。

早めに気付けば引き返せるが、ずっと引き込まれていると、そのうち幻想に支配される。

そして他のことを全て忘れてしまう。
当初の目標やビジョンでさえも。


経験を重ねることは素晴らしいことだ。
技術から無駄が削られ、洗練されていく。

ただ、同時にビジョンまでも削り取ってしまっていないか、そう自問自答してもいいのかもしれない。

流砂から抜け出せるうちに。

自戒を込めて。

2021.5/15 目からウロコ







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