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2023年の新規上場の振り返り

私は東京証券取引所が発表する「新規上場会社情報」を見るのが好きです。

新規上場会社情報
https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/index.html

これは上場承認が出た日の15時に更新されます。
上場日、上場承認日、社名、会社サイト、コード、市場区分や目論見書といったさまざまな情報が一元化されていて勉強になります。

ここで発表されている情報を、私のほうで少しまとめてみました。
IPO業務に従事している方であれば"肌感"としてわかっていることばかりだとは思いますが、改めてデータで振り返ってみたいと思います。



2023年の新規上場承認

2023年は、新規上場承認を得た企業は107社でした。
そのうち7社がテクニカル上場(※ホールディングス化等を目的とし、簡易な手続きにより上場を認める制度)、8社が取り消し、結果として「92社」が新規上場企業となりました。

2023年の新規上場承認

2022年は市場再編があったため比較は難しいですが、95社から3社減ったことになります。


新規上場企業(都道府県別)

企業が集中するので当然かもしれませんが、「東京都」が全新規上場企業の67.4%が本店登記をしています。

新規上場企業(都道府県別)

個人的に注目したいのは、2023年10月4日に上場した「株式会社キャスター」(グロース・9331)です。

リモートアシスタントをはじめとした人材事業を運営している同社はフルリモートの会社として有名が、本店所在地は「宮崎県」です。

フルリモートで上場準備を進めたキャスター社はすごいと思いますし、費用面においても魅力的だと思うのでこの流れが継続するといいですね。


新規上場企業(決算期別)

日本の企業は、従来 3月を決算期とする企業が多かったですが、昨今12月決算の企業も増えています。

新規上場企業(決算期別)

2023年は、92社のうち3月決算企業が24社(26.1%)、12月決算企業も24社(26.1%)と同数となっています。

企業分析の初歩的なミスとして、決算期が異なるため情報の基準が異なるというのがあるので注意が必要ですね。

日本以外の国では、中国のように法で全ての企業が12月決算となっている国もあります。
欧米諸国では12月決算が一般的のようなので、日本でもこれから増えていくのかもしれません。

私は過去に5月決算の上場企業のGameWith社(スタンダード・6552)に勤めていたことがありますが、5月決算の会社は市場では少なく、株主総会の会場探しが容易、繁忙期ではないので監査法人、証券代行・証券印刷の対応が丁寧(な気がしました)といったメリットはありました。


新規上場企業(上場月別)

毎年12月は、新規上場企業ラッシュでしたが、今年は少し違います。

12月上場の企業は16社(17.4%)で最多ですが、6月上場の企業も同数の16社(17.4%)でした。

新規上場企業(上場月別)

2022年は95社中24社(25.3%)だったのと比べると、分散化が進んだと言えます。
これにより投資家の方も分散してIPO銘柄の株式を検討できたと思うので良い傾向ではないでしょうか。

なお、日本では12月に新規上場が集中していたのは、3月決算の企業が多く、申請から上場まで9ヶ月を要するためです。

私が勤めていたウィルグループ社(プライム・6089)は3月決算で、2013年12月19日に東証二部に、2014年12月19日に東証一部に市場変更しています。
当時は大型上場の会社を重ねるといやだなとか、上場日に催される上場セレモニーがバタバタになりそうだなと思った記憶があるので、上場月や上場日の分散は良いことだと思います。


新規上場企業(証券代行別)

"証券代行"は、株主名簿の管理などを委託する機関です。
2023年は三菱UFJ信託銀行が49社(53.3%)、三井住友信託銀行が34社(37.0%)となっており、2社で90.2%を占めています。

新規上場企業(証券代行別)

信託銀行以外にも、日本証券代行、東京証券代行といった企業も同サービスを行っていましたが今年はいずれも0社となっています。

私はこれまで三菱UFJ信託銀行と三井住友信託銀行のお世話になりましたが、提供頂ける資料やセミナーの充実さ、また上場後のIRへの協力などもお願いできたのが良かったです。


新規上場企業(監査法人別)

監査法人は、引き続き分散傾向になりました。

新規上場企業(監査法人別)

それでもトーマツ監査法人、EY新日本監査法人、あずさ監査法人といった大手監査法人と言われる監査法人が計41社(44.6%)となっています。

これに加えて太陽監査法人が昨年に続き11社(12.0%)で4位、12月にPwC京都監査法人とPwCあらた監査法人が合併して誕生したPwC Japan監査法人が13社(14.1%)と、上位5法人で70.7%を占めています。

個人的に注目したいのは、2020年7月に設立された「ESネクスト有限責任監査法人」です。
比較的新しい監査法人ですが上場企業の監査も行っており、2023年11月22日に上場したバリュークリエーション株式会社(グロース・9238)で初の新規上場も果たしています。

スタートアップで働くことが多い私としては、分散することで丁寧な監査やアドバイスが受けられるのはありがたいです。


新規上場企業(主幹事証券別)

"主幹事証券"の集計については、2023年は12社が幹事取引参加者(主幹事証券)を2社以上選定しているため母数が104社となります。

新規上場企業(主幹事証券別)

2023年は、みずほ証券が19社(18.3%)となっていますが、2位は大和証券、SBI証券、野村證券がそれぞれ18社(17.3%)、2022年に99社中26社と1位だったSMBC日興証券も17社(16.3%)となっており、以上5社で104社中90社(86.5%)を占めます。

私も過去に野村證券、みずほ(当時はみずほインベスターズ証券)、SMBC日興証券、大和証券でお世話になっていますが、公開引受業務は長期かつ手間もかかる(迷惑をおかけしました・・)割にコンサルティングフィーはそれほど高いものではないので大変だと思いますが、その業務を提供できる人員を確保するとなるとどうしても大手証券会社に集約されるはしょうがないのだと思います。


新規上場企業(監査法人、主幹事証券組み合わせ)

以上のことを踏まえ、監査法人と主幹事証券の組み合わせ図を作ってみました。
なお、「PwC Japan監査法人」となったPwC京都監査法人とPwCあらた監査法人は別々に集計してあります。

新規上場企業(監査法人、主幹事証券組み合わせ)

私がIRを担当しているときによく言われたのは「誰も監査法人や主幹事がどこかは気にしていない」というものです。

私はそれについて半分賛成で、半分反対です。

私も監査法人や主幹事証券を選定する際には規模で選ぶことはありません。
私の会社をちゃんと評価してくれるか、適切な指導をしてくれるかが大事だと思っています。

そうなると会社側からの要望や要求も発生するので、対応するには人員や経験が豊富な監査法人や主幹事証券に寄ってしまうのではないでしょうか。

ちなみに私は最後は直接話をする「担当者」とお話をさせて頂いて決めています。
異動もあるのでずっと一緒に働くわけではありませんが、上場準備期間中は同じ課題に一緒に取り組む"仲間"としてかなりの時間を一緒に時間を過ごすことになるので最後は「人」で選びます。


新規上場企業(六曜別)

最後に上場日の六曜別に調べてみました。

新規上場企業(六曜別)

普段は意識することがない六曜ですが、新規上場日は全ての企業が1回だけ迎える記念すべき日です。

結婚式などと同様に、せっかくならおめでたいとされる大安がいいのかなとは思いますが、結果は"急用は避けるべきとされる日"とされている「先負」(せんぷ)が26社(28.3%)となっています。

IPO経験者が集まった際に「上場日は選べなかった」という話もありました。
ただ、私が過去に担当した会社では、候補日をいくつか頂き、その中から社長と相談して選びました。
"社長"は、占いを信じたり、縁起を担ぐ方も多いので選べるなら「大安」に集中しそうですね。


以上、2023年の「2023年の新規上場承認の振り返り」でした。
なんのためにもならない豆知識ですがご参考まで。
2024年も多くの新規上場会社が出ることを楽しみにしています!

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