ドイツでジョギング
私は以前ジョギングを習慣としていました。長らくサボっていましたが、最近また再開しました。
昔、ドイツのキールという町に行ったとき、旅先をジョギングしました。走っていると海岸が見えてきましたので、砂浜を走ることにしました。ステキですね。
前方に岩場が見えてきました。当時、私は二十代。岩場なんてピョンピョン飛び越えて走ってやろうと思いました。ところがこの岩場、おかしいのです。すべての岩が上に向かってとがっているのです。ピョンピョン飛び越えるどころの話じゃない。一つ一つの岩にしがみついて移動するしかないのです。引き返すべきでした。しかし無鉄砲な若者だった私は、そのまま岩場でがんばっていたのです。すると陸側から私に声をかける人がいました。
陸側は有刺鉄線で遮られた芝生の敷地で、中からおじさんがこっちにおいで、と呼んでくれました。私は敷地に入り、おじさんの案内で芝生を越えて、岩場の向こう側の出口から出してもらいました。何も考えず、ジョギングを続けました。
最近まで、あの岩場がなんだったのか、あの敷地がなんだったのか、あのおじさんが誰だったのかわかりませんでしたが、やっとわかりました。
あそこは軍事基地だったんですね。キールは軍港で有名なところです。岩場は天然の岩場ではなく、敵の侵入を防ぐために、わざと通りにくいように配置された、要塞の一部だったのです。私を基地に入れてくれたおじさんは軍人なんでしょう。軍服は着ていませんでしたがね。
私も危ないことしますね。時代と場所が違ったらただではすみませんよ。軍事基地に無断で侵入しようとしていたのですから。
90年代でした。平和のなんとすばらしい事。見知らぬ外国人が軍事基地の要塞にとりついていても、軍人が中に入れてくれるのです。
世界に平和が訪れますように。
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イラスト by iimages