なぜ非加熱のはちみつ販売にこだわるのか?/沖縄:蜂楽園【一次産業取材レポ】
今やスーパーなどでどこでも手に入る「はちみつ」。
サイズや産地、価格までさまざまな種類が販売されています。
外国産のものや、成分が調整されて100%天然ではないもの。
加熱されたものと、非加熱のはちみつ。
いろいろなものがありますが、
産地によってどのような違いがあるのでしょうか?
養蜂家さんは一体どのような想いではちみつを採取されているのでしょうか?
取材を通して見えてきたことを生産者の方のストーリーを通してご紹介します。
▼舞台は沖縄
今回取材を受けていただいたのは
沖縄で養蜂所、【蜂楽園】を営む山崎 柊平さん。
沖縄各地に30箱ほどの巣箱を設置、昨年は20kgほどのはちみつを採取しています。
「できるだけ自然に近い形で営むことを大切にしています」
と語る山崎さん。なぜ、沖縄であまりイメージのない養蜂を営むようになったのでしょうか?
▼公務員を目指していた大学時代
もともと養蜂家を目指していたわけではなく、安定を求めて公務員になろうと考えていた山崎さん。大学も教育の道に進み、教員免許も取得されています。
そんな大学生活の中、琉球大学との交換留学制度で、沖縄へ。暮らしていく中で沖縄が好きになった山崎さんは沖縄で暮らしていく決意をします。
もともと地域おこしに関心があったこともあり、その時募集のあった沖縄県の地域おこし協力隊へ参画。
そのまま3年間を過ごします。
▼ミツバチとの出会い
地域おこし協力隊として、沖縄のいろいろな生産者の方の取材を行っていた山崎さん。
その中で無農薬農法を採用されているパイン農家さんから聞いたお話に衝撃を受けます。
「ミツバチは人間が普段食べている作物の多くの受粉を担っている。もしミツバチがいなくなったら…」
そこからミツバチについて調べ、なんと食用作物の6〜7割の受粉をしていることがわかります。さらに、環境の変化によりその数は減少の一途を辿る。
自分たちの全く知らないところで、小さな命に支えられていることに衝撃を受けた山崎さんは、
「自然環境と共生しながら、自然を大切にできる仕事がしたい」
と養蜂家になることを決意。
山崎さんのミツバチと歩む人生が始まります。
▼沖縄での養蜂の難しさ
そもそもあまり養蜂のイメージのない沖縄。
それもそのはず。
はちみつはその土地に咲いている植物が違うので、沖縄のものと本州のものでは味も香りも変わってきます。
本州で育つ(アカシアのような)たくさん蜜の取れる植物が、沖縄では育たないからです。
花の種類は非常に多いのですが、どれも蜜が少量。
結果、いろんな植物の蜜が混ざってしまう。これを「百花蜜」と言います。
しかし、社会的に需要があるのは「単花蜜」。
(一種類の花からとれた蜜。美味しい。)
なのでほぼ100%「百花蜜」になる沖縄は養蜂があまり盛んではありません。
ただ、蜂も人間と同じでいろんな花の蜜とってきた方が健康状態は良くなるそうで、百花蜜の方がより自然に近い状態になります。(単花蜜でも問題は特にありません)
さらに大きな要因としてあるのが、沖縄の亜熱帯気候。
ミツバチたちは巣箱の中でをつくる際に、羽根であおいで水分を飛ばします。そうすることによって糖度が高くなるのですが、沖縄は1年を通して高湿度。糖度を高めるのに、どうしても時間がかかってしまいます。
そして何より、山崎さんには師と呼べるような方がおらず、養蜂のノウハウは独学。書籍などの情報も本州での採取向きのものばかりで、沖縄では通用しないことも。
周囲に聞ける人もほとんどいない。
とにかく試して、検証をしていくしかありませんでした。
その経過で、うまく採蜜ができなかったり、場合によってはミツバチが減ってしまったりもしてしまいましたが、行なったことと起きたことをメモに残し、一つずつ改善。
今では巣箱を30箱にまで増やすことに成功しています。
▼できるだけ自然に近い状態で
30箱まで増えた巣箱から取れた蜂蜜は2021年の春では約20kg。
養蜂家としてはあまり多くはないそうですが、
このくらいの量になっているのには理由があります。
巣箱の数ももちろんありますが、一番は採取しているはちみつの量。
「養蜂家がはちみつを作っているわけではなく、ミツバチが蜜を集めて作ってくれている。1匹のミツバチが集められる蜜の量はティースプーン1杯程度。私たちはそのはちみつを彼らから分けていただいてるんです」
と語る山崎さん。
そのため採取する蜂蜜は、巣箱にあるはちみつの多くても半分程度。
残りはミツバチのためにそのままにしておくそうです。
「できるだけ自然に近い状態で」という想いで
製品のはちみつも採れたまま、非加熱での販売をしています。
非加熱にすることで、酵素が生きたまま、はちみつ本来の効能を享受することができます。
▼自然とともに生きること
「人間だけを大切にするだけではなく、自然と環境とミツバチとか他の生き物への感謝の気持ちを忘れずに作るはちみつをやりたい」
大量生産、大量消費、工業的な作り方ではなく、少量でも自然からの恵みをいただくこと。それを大切にしていきたいと山崎さんは語ります。
「そういうものを欲しいと思っていただいている方々に面と向かって、ちゃんと届けられるようなはちみつを今後も作っていきたいと思ってます」
大手食品企業が販売している、成分調整されたはちみつではなく、自然からいただいた、そのままのはちみつを提供していく。
ミツバチとともに、自然とともに進んでいく山崎さんの挑戦はこれからも続いていきます。
蜂楽園さんのアカウントはこちらから
instagrams:beeparadise_okinawa
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