『音楽好きな脳 人はなぜ音楽に夢中になるのか』

【音楽社会学の定番書籍】その1

『音楽好きな脳 人はなぜ音楽に夢中になるのか』

 著者:ダニエル・J・レヴィティン
 出版社:白揚社
 第1刷:2010年3月30日

音楽好きな脳

1. 本書を読んだ背景

音楽社会学の定番書籍シリーズの第一弾です。
2019年より、日本ポピュラー音楽学会の個人会員となり、2018年からはコンテンツツーリズム学会理事の末席の私ということもあり、このサブカテゴリーを設けた次第です。
本書の発刊は2010年3月ですので、やはり2010年だったでしょうか? 買ったときのこと、読んだときのことはよく覚えていないのですが、音楽社会学関係の書籍にアンテナを張っていた時期でした。
そして、この原稿を書いている今(2020年)になって、本書を検索していたら、茂木健一郎氏が2010年に日経新聞に本書の書評を書かれているのを見つけました。脳科学者のお墨付きですし、全体のまとめは茂木氏の書評をお読みいただいたほうがわかりやすいです(笑

2. どんな人に向いているのか?

サンフランシスコ生まれのレコード・プロデューサーであった著者は、刊行当時、モントリオールのマギル大学の心理学・行動神経科学教授。
音楽がテーマの書籍ですが、日本のレコード会社やマネジメントオフィスのビジネスパーソンが興味を持つとは考え難いですねぇ(笑
ほとんどのクリエーターの皆さんもここまで科学的でロジカルな知見を求めるとも思えません。
となると、やはり認知心理学関係の実務家・研究者、マーケターでも感性マーケティング分野の実務家・研究者の皆んさんでしょうね。

3. 本書のポイント

3-1. 過去、音楽業界でマーケティング・コンサルとリサーチの仕事をしていた私の信条=「クリエイティブとマーケティングはトレードオフの関係ではない」という内容そのものでした。

3-2. 私たちがなぜ、芸能人・アーティスト・ミュージシャンのファンになるのか? その理由を深くかつロジカルに解説されております。

3-3. 音楽のみならず、私たちの趣味・嗜好のスキーマ(ものごとを認識する枠組み)の形成過程もよくわかります。
音楽を“処理”する脳の“配線”が、大人と同じレベルに達するのは大体14歳頃のことで、大多数の人の音楽の好みは18歳から20歳までに固まる(「臨界期」)。
マーケティング分野でも、いくら我が国の少子高齢化が進み、多数派=シニアのターゲティングが活発になろうとも、いつの時代でも“若者”をスキャンすることは大事なんですよ~! 忘れないでくださいね~! ということです。

4. 感想

本書を読んだときからさらに5年前(2005年)、星光堂の音楽シンクタンクの社員時代、「想い出の音楽」をテーマとしたネットリサーチをしたことがあります(自社企画で、具体的に企画したのは当時の私の部下でした)。
その結果のプレスリリースを「ITmedia」(懐かしい・・)に出したところ、Yahoo!のトップページに掲載され、マスコミさんからニュースで取り上げたい旨の連絡が相次いだことがありました。
当時、ビジネスパートナーだった日本能率協会マーケティングデータバンク(MDB)の方からは、「最もマーケティング的ではないテーマ」とダメ出しされましたが(懐
マスコミ受けするテーマとマーケティングテーマはトレードオフのケースが多いということなんでしょうね。

その2005年の調査結果が、5年後に読んだ本書で科学的に裏付けられた、という形となりました。
ですので、私が担当しているミュージックソムリエベーシック養成講座のテキストにこの調査結果(↓)を掲載しております。
そういう意味では、私個人にとっては掘り出し物の書籍、ということです。
現在、本書はamazon.co.jpで新品が5,080円からというプレミアム価格ですね(私が買ったときは税抜2,800円でした)。

20200907_「想い出の音楽」年齢

以上です。

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水琴窟


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