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#47 わたしたちは銀のフォークと薬を手にして

30歳前後ってちょうど中途半端、
確かに、そう思うし、中途半端ってことは自由でもあると思う。

【このnoteはネタバレを含みます】

丁寧と粗雑と

健康だから
病気じゃないから
それだけで人は人の体をびっくりするほど粗雑に扱う。

わたしたちは銀のフォークと薬を手にして/島本理生

この本の主人公は恋愛をして、その愛の宛先は
エイズに感染している年上の男性でした。

自分がそうだからこそ、彼は丁寧に人と触れる、
丁寧すぎてまどろっこしく感じるくらいに。

やっぱり人は他人ですが、自分でもあるなと感じます。

・・あの子が他人も自分も大事にしていなかったことの重みを今なら理解できる。・・

わたしたちは銀のフォークと薬を手にして/島本理生

自分を雑に扱うときはきっと相手も雑に扱ってしまう。
丁寧に自分と向き合うと、相手とも向き合える。

「病気」だからじゃなく
自分も丁寧に扱えるかなと思いました。

一方で、これが「恋愛」だからこそ難しい。
粗雑に扱うことが相手に気を許している表現の一つにきっとなっていて
粗雑に扱ってもらって、普段の自分を見せてくれているようにも感じる。

愛の感じ方はそれぞれなんだろうけど
そんな気持ちもわかる。

でもきっとこの丁寧さと粗雑さを織り交ぜながら
一悶着二悶着しながら、少しずつ距離を縮めていく過程がやってる側も
見てる側も面白いし、すごく人間らしさなのかなと思う。

だから、「恋愛」っていうテーマはずっと物語になる。

裏と表と

この小説では、基本的には全12章のうち
9つの章は同一の主人公と
2つの章はその友人の視点で描かれます。

1章だけ、主人公がすごく苦手だった妹の視点です。

お姉ちゃん側から見たらすごく嫌な妹で
痛い目見ればいいのにって思っていたのに
両面なんだなとこの章で感じます。

相手に強く出てしまう人は、もしかするとこわばっていて
硬い部分が当たっているだけなのかもしれない。
そしてこわばっている理由は、周りの影響かもしれない。

柔らかさと硬さの両面を
裏と表のそれぞれから見ることができました。

最後に

改めて記事をまとめながら、二項対立を作りたがる生き物だなと
感じました。

そうしてこの世界を理解する。

けどきっと二項対立のように見えて
そこは交わっていく、曖昧なグラデーションなんでしょうね。

人という生き物は面白いですね。

また、わたしはちょうど今30歳なので
非常に共感しながら、この本を読了しました。

自由で、中途半端な30歳は非常に最高です。
バンプを聞いて、恋人ができる度にメールアドレスを変えていた
30歳前後の皆様、ぜひ読んで見てください。


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