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死闘ジュクゴニア あとがき

ネタバレだらけなので、
本編未読の方はお気を付けください。

そう、あれは2018年の終わりが見えてきた頃だった。

何気なく第一回逆噴射小説大賞に参加したしゅげんじゃは「あれ。小説書くのってめちゃくちゃ楽しいな……?」と創作の喜びに目覚めた。そして逆噴射先生の教えに従い、まずは一本、物語を仕上げることを目標に掲げたのだった。

そうして始まったのが「死闘ジュクゴニア」の連載だった。それから約二年。正確には一年と八か月。長いと言えば長いけど、体感的にはあっと言う間の時間が過ぎ去り、今、物語は一つの終わりを迎えた。

……というわけで、「死闘ジュクゴニア」の後書き、いきます!

連載当初に考えていたこと

小説を書くのは初めてなので、まずはサクッと終わらせるものにしよう。そんなことを考えていた。当時はそう考えていた……。そして連載する内容は第一回逆噴射小説大賞に応募した作品の続きにしようと考えた。連載候補はいくつかあったけど、当初の最有力候補は死闘ジュクゴニアとは別。

こいつだった。

今の自分からは想像もできないことに真面目に設定なども書き出し、大雑把ではあるけどプロットみたいなやつも書き、ちゃんと三幕構成になってることも確認し……いざ書き始めようと思った時、天啓のように閃くものがあった。

いや、待て待て。最初の連載はこっちだろ! こっちにしよう! と。

そしてそのまま設定もほとんど決めず、プロットも書かず、とにかくその場で思いつくままアドリブで書き始めた物語……それが「死闘ジュクゴニア」だった!

というわけでほとんど直感で決めた連載だったけど、その際に、うっすらと考えていたことが二つあった。

ひとつ:続けていくために限りなくハードルを下げよう。
ふたつ: かっこつけずに、みっともない内容でもいいから休まず定期的に公開していこう。

ハードルを下げる……これは続けていくうえで、めちゃくちゃ重要だったと今でも思っている。死闘ジュクゴニアは少年漫画ノリで行こうと決めていたけど、その際のハードルの下げ方として「キン肉マンのゆでたまごぐらい、いい加減でいいんだ」と自分に言い聞かせていた。

つまり「そうはならんやろ」という「謎理論」を平然とお出しし、死んだはずのキャラがしれっと再登場し、矛盾だらけなのに気にせず物語をドライブさせる。そんな感じでいこうと決めた。そしてそう決めたことで、物語のタガが外れた! 風呂敷を広げることへの躊躇がなくなった。これは大きかったと思う。

そしてみっともなくてもいいから休まず定期的に公開を続ける……これも良い方針だったと思う。連載中、今読み返すと悶絶してしまうような文章が大量に産み出されたけど、それにも怯むことなく一定のペースを保つことができた。「数年後、もっとうまくなったら書き直そう」と自分に言い聞かせながら、物怖じせずに公開することができた。

そして自分がどれぐらいの質でどれぐらいのボリュームを書くことができるのか、だんだんと理解できるようになっていった。連載最終盤になってくると日常の生活や仕事などもしっかりこなしつつ、だいたい 7,000 ~ 12,000字ぐらいを週一ペースでゼロからでも書き上げられるようになっていた。これは自信になった! 今後の自分にとって大きな財産になったと思う。

そんなこんなで書き始めたのが、2018年11月20日。その時は「ハガネが突っ走ってどんどん敵を倒して、最後にフシトを倒して終わり! たぶん20話ぐらい!」というノリだった。そう、当時はそんなノリだった……。

どんどん変わる想定、物語、キャラクター

実際に書き始めると……当初の想定からどんどん外れ、物語は都度変わっていった。ひとつの要因は登場人物たちの自己主張。もうひとつは脳内編集者の存在だった。せっかくなので覚えてる範囲で、なにがどう変わったのかを書いていこうと思う。

花鳥風月のミヤビ
ミヤビ、実は最初、序盤の強敵ぐらいの位置付けで考えていた。性格も「貴族然とした嫌みな奴」ぐらいのイメージだった。ところが書き始めると鎧を着込んで剣を構えた完全な武闘派として登場。さらにはハガネに倒されて退場するはずが「認めんッ!」とか言い出して立ち上がってくる始末。これには書いててびっくりした。あー、キャラクターが勝手に動くってこういうことなんだ、と思った。この段階で彼のキャラクターは確立され、ハガネのライバルとなった。そしてザーマとの戦いの後、刑場でハガネと雌雄を決して今度こそ最期を迎える……はずだったのにその時もそうはならなかった! いったん退場こそするものの、パワーアップして復活。最終決戦ではハガネと肩を並べて闘うことになった。フシト戦ではあんな風に語り、あんな風に決定的な役割を果たすとは! 想像すらしていなかった。物語を通じて一番成長したキャラだと思う。ところで最終話、ハガネと「決着をつける!」と息巻いていたミヤビ。しかしその後のエピローグで名だたる群雄たちの名が出てきた際に、ミヤビのミの字も出てこなかった。どういうことだ! 果たしてミヤビはどうなったのか……あっさりハガネに敗れていて、このまま二度と出てこないことだってあり得る……いずれにせよ、死闘ジュクゴニア弐をお待ちください。

劫火のカガリ
カガリも当初の想定から完全に変わったキャラ。実はストーカーみたいに執拗にハガネの命を狙うキャラ……のはずだった。まさかあんな風になるとは全然、想像していなかった……。ところでミヤビにしてもカガリにしても、最終決戦でハガネと共に戦うことになる前に一度「死」を迎える。あまり意識してなかったけど、あれは「擬死再生」の過程なんだよなぁ、と今になってみると感じる。つまり象徴的な死を経ることによって、ハガネと肩を並べて戦うことができる存在になる。そういうイニシエーションのような過程だったんだなぁ……とか思ったりする。

電光石火のライ
ライは……最初のイメージでは男のはずだった。なんとなく「ハガネの憧れの人」というイメージを膨らませていったら、あぁいう男前の女性になっていた!

最強のバガン
バガンはゴリラ🦍……のはずだった。ゴリラみたいな大男のおっさん。ところが書き始めると半神的な輝ける少年として登場したのですね。結果として彼のその描写は、その後に登場したフシトをはじめとしたボス格存在の描写や風格に影響したなぁと思う。意外と気に入っているキャラだったりする。そういえばバガンが「極限概念」とか言い出したせいで、慌てて設定を考えたのだった。いい仕事をしてくれたと思う。

摩訶不思議のハンカール
ハンカールは……ジジイのはずだった……しかも雑魚キャラのはずだった……なんであぁなった……。でもハンカールって名前はたしか南アジア辺りの古い信仰に出てくる「傲慢」を司る悪魔だかなんだかだった気がする(うろ覚え)。そういう意味では、それらしい存在としてふさわしい振る舞いをしてくれたな、と思う。なにより、ハンカールがいたからこそ物語の設定や世界観(全部後付け)に芯が生まれた気がする! ありがとう! (花びらになってしまったけど!)

道化芝居のピエリッタ
ピエリッタは……もともとジュクゴニア帝国に対抗する勢力のエージェントぐらいのイメージだった。ジュクゴも「神出鬼没」にするつもりだった。しかも男のはずだった。でもなぜかああなった。ピエリッタも好き勝手動いてくれたキャラで、けっこう気に入っている。エピローグで登場した道化仮面の女は果たして……第二部をお楽しみに。

世界五分前仮説のミリシャ
もともとバガンの凄さを強調するための、過去の回想に登場するだけのキャラ……となるはずだった。それがまさかラスボスになるとは……。当然のように、当初はハンカールとの関係なども想定していなかった。彼女はもうちょっと凄みを描写してあげたかったなぁ。そのための犠牲もせっかく用意していたのに……(後述)。死闘ジュクゴニアを書き直した際には、そういった描写をしっかり追加していきたい!

六道のゴウマ
ゴウマは漠然と「実はバガンの兄弟」みたいなことを考えていた。そしてそれを匂わせる描写まで書いてしまっていた! しかしバガンが「極限概念」とか言い出し、フシトが「余が産み出した」とか言い出したせいでその設定は消えてしまった。書き直した際にはその辺の描写をマルっと削り、無かったことにしてしまいたい! あとゴウマもミリシャと同様に、終盤が駆け足になった影響で凄みの描写が足りなかったなぁ……と思ってる。書き直す際にその辺もしっかり加筆しておきたい。

屍山血河のフォル、星旄電戟のバーン
この二人を登場させた頃にはミリシャを終盤に復活させて暴れさせようと考え始めていた。そこで……そのミリシャの凄み描写の生け贄として用意されたキャラが、この二人だったのだ! 世界五分前仮説の力でフォルは「転落死」に、バーンは「焼死」にジュクゴを変えられて、あっさりとその通りに死んでいく……哀れ! そういう役目を果たすために生み出されたキャラ! だから名前もフォルとバーン(超安易)! ところが書いているうちに二人とも気に入ってしまったんだよなぁ……。特にフォル。だからフォルは第二部でも重要な役割で出てくるはず。バーンも第二部に出そうと思っていたけど、勢いで殺してしまった……ごめん……。

剣山刀樹のミツルギ、銅頭鉄額のアイアーン
この二人はカガリを活躍させるためだけに登場させたキャラだった。そこで終わりのはずだったのに……! まさか終盤、あそこまで頑張るとは……。なお二人とも第二部にも登場するわけですが、特にミツルギはエピローグに登場した修羅のジョウドのメンター的な役割を果たす予定(予定)。本当はエピローグでその辺りも描きたかったんだけど、ボリュームが膨らんでしまうので削ってしまった。

無敵のアガラ
無敵のアガラではなく、出オチのアガラと化してしまったアガラ君……。本当に申し訳なく思っている。彼は本来、単独で出現して猛威を振るうはずだった。ところが、なぜかピエリッタに連れられて現れたもんだから、あんなことになってしまった……。悲劇。書き直し版ではきっちり活躍させてあげたい。それこそ最終盤、復活ミリシャや覚醒ゴウマと対等に渡り合い、壮絶死を遂げる……そんな感じにしてあげたい。

脳内編集者
物語が想定から変わったり、膨らんだりした理由のひとつに脳内編集者の存在がある。たとえばわかりやすいやつだと、ライが磔にされて、そこにピエリッタが現れるというエピソード。あれはもともとは単にピエリッタが現れて密かにライに接触を果たす……というだけの話になるはずだった。ところがその時! 脳内編集者はこう言った。「しゅげんじゃさ~ん、それだけの内容で盛り上がりますか? 読者が満足してくれますか? もっと盛っていきましょうよ~!」それで、あぁ、そうかよ。仕方ねーなぁ、と思い、その場で「創世の種」を考えた。まさかそれがその後、物語のキーアイテムになるとは……。ついでにフォルとバーンを登場させることにして、ついでに新キャラとして震天動地のシンキと蛟竜毒蛇のダカツを考え出した。彼らもその後、いい仕事をしてくれたなぁ……。そんな感じで都度、脳内編集者がもっと盛り上げろとケツを叩くので、話は膨らんでいく一方だった。でもそのお陰で間違いなく面白くなったと思う! ということで脳内編集者さん、これからも宜しくお願いします!

書き直したい!

すでに書いている通り、全体的に書き直したい気持ちが凄くある。いろいろと反省ポイントはあるんだけど、大きく分けて

・拙い表現を直したい
・描写に厚みを持たせたい
・後付け設定しまくったせいで生じた矛盾を解消したい
・キャラをもうちょっと活躍させたい

の4つに大別できると思う。

【拙い表現をなおしたい】
最初期の頃はニンジャスレイヤーをパクったような表現を中途半端に使っていたなぁ……恥ずかしい。直さないと僕が恥ずかしくて死んでしまう。あと少年漫画ノリということでオノマトペを多用(スガガガガーン! みたいなやつ)してたんだけど、あれも今読み直すとどうかと思う。実はエピローグでもそういった表現を敢えて使っているんだけど、エピローグのやつぐらいコンパクトに効果的に使うようにしていきたい。初期の頃は安易すぎて目もあてられない……。あと全般的に「書き方わかってねぇな」と感じる箇所が多いので大きく手直ししたい。昔の自分を「表現が面倒な時に体言止めに逃げるな!」と叱ってやりたい……。

【描写に厚みを持たせたい】
なんだろうな、小説書くのに慣れていない人の特徴として、描写が薄っぺらいという点があると思っている。ここでの描写の薄さ・厚さというのは修飾が多いとか、解像度が高いとか、そういう話ではなくて。小説書くのに慣れていない人って、描写がト書きみたいになっているなと感じることが多い。そこから小説として成立させるためには、ちゃんと描写に厚みを持たせる、膨らませるということが必要。そして残念ながら、死闘ジュクゴニアの初期の頃はまさにそれって感じの箇所が……。あと初期の方は時間の描写が足りてない! 書いてる本人のイメージでは第一話は夕暮れのはずだったんだけど、どこにもそんなことが書かれていない! なんてことだ!

【後付け設定しまくったせいで生じた矛盾を解消したい】
これは先程書いたゴウマの設定とかがまさにそうなんだけど、最大の矛盾は第一話にある! ジュクゴニア世界はフシトのせいで文明の利器が使用不能になっているはず。なのに第一話でハガネとゴンタがトランシーバーを使ってる……アカン……。そういうのを一個一個潰していきたい。後付け設定の功罪!

【キャラをもうちょっと活躍させたい】
これも上で書いた通り。ミリシャやゴウマ、あとアガラとかをもうちょっとなんとかしてあげたい。あと、終盤になってドカドカと新キャラを登場させたけど、彼らも序盤から少しずつ描写をいれていって、終盤で「あの連中が集結して戦う!」みたいな盛り上がりを作りたい。そうする。あと最序盤の方で反射のレクタ先生が唐突に表れて「誰だこいつ」みたいになってるので、そこもなんとかしたい……。

小ネタとか

・ エピローグでバガンが口を開いて喋っているの、気がついてくれた人はいるのだろうか。彼は人としての生を歩み始めた!
・ 死闘ジュクゴニア、物語の中の時間の流れでは、たった二日間の出来事だったりする。我ながらやりすぎだと思う。
・ ミヤビが語った言葉に対して、フシトが「実に陳腐、実に凡庸」みたいに言うシーンがあるけど、あれは僕自身が感じた印象でもある。でもこの物語は死闘ジュクゴニアなのである。だから圧倒的にミヤビが正しい。死闘ジュクゴニアは小賢しいことは言わず、ハートで突っ走る物語だから、それでいいのだ!

書き終わって思っていること

連載を終えて、あらためて「小説書くの面白ぇな」と思っている。連載の過程で、よく聞く「キャラクターが勝手に動く」という言葉の意味を体感することができた。あと、ある意味では設定なんていくらでも後付けできる、なんなら読者に伏線だったと誤認させることすらできる、ということも学ぶことができた(でも設定やプロットの重要性も理解した)。

文字数は数えてないけど、最終的な文量はたぶん文庫本3冊分ぐらいはいってるんじゃないかなぁ(もっとかも?)。それだけ書き続けたことで、ようやく「あ、なんか小説の書き方わかってきたかも……?」という感触がある。書き終えた今、やっと物書きとしてのスタートラインに立てたかな……という気分がある。

もともとサクッと終わらせる習作のつもりだった「死闘ジュクゴニア」が、自分にとってここまで思い入れがあり、大事な作品になるとは思ってもみなかった。

これもすべて、読み続けてくれた皆様、感想をくれた皆様のおかげだと思ってる。あまり数字的なことは気にしないつもりだし、あれこれ言うのも野暮だけど、死闘ジュクゴニアは少しずつアクセス数が増えていき、最終話近辺では400~500アクセスぐらいで推移するようになっていた(2020年8月段階)。noteの記事としてはしょぼい数字だけど、一般的なWeb小説の数字として考えると、意外と検討している数字だと思う。本当に励みになった。

顔を見ることができない延べ500人前後の死闘ジュクゴニア読者の皆様! 皆様への感謝の気持ちを伝えて、この後書きの締め括りとしたいと思います。

本当にありがとうございました!

(来年掲載予定の死闘ジュクゴニア弐や、これから連載する別の小説もどうか宜しくお願いします!)

きっと励みになります。