第9話「テロリスト」 #死闘ジュクゴニア
【目次】【キャラクター名鑑】
<前回>
「俺は……俺はテロリストでもなければ、鼠でもない……!」
「ほぅ?」
ハガネの瞳、不屈の二文字が凛と輝く。
「俺はハガネ……不屈のハガネだ!!」
「ふっ……くっはっはっはっ!」
ミヤビは突如、肩を震わせ笑い始めた。
「この鼠は! 自分はテロリストではない。そう言ったか!」
嘲るような声音。それととともに旋風のような剣がハガネの体を切り刻む。一撃、二撃。かすめたその体から、ぱらぱらと花びらが散っていく。
「それでは鼠! 貴様の産み出したこの光景、これはなんだ言うのか!」
凄まじいスピードの刺突! ハガネは辛うじてそれをかわす。ミヤビの剣撃に呼応するかのように一陣の風が吹き抜け、二人の間を花びらが舞った。辺りには瓦礫、そして焼死体。おぞましい光景が広がっている。
「貴様がどのように言い繕おうと! この光景は貴様が産み出したものだ! だから貴様は!」
ミヤビは剣を大きく振り上げた。
「人殺しに過ぎん!」
縦に撃ち降ろす強烈な剣撃! ハガネは半身を引いてそれをかわす。
「だが貴様の罪はそれだけではない!」
下段からの斜め切り上げ! ハガネは前転するようにそれをかわし、後ろに飛び退く。距離を開けたハガネに対し、びしりと剣を突き付け、ミヤビは言った。
「子どもである貴様とて知らぬわけではあるまい。かつて世界に訪れた『崩壊の日』のことを。そしてその後の世界の混沌を!」ミヤビの口調が熱を帯びる。「それを救い、世界に秩序をもたらした者。それは誰か! それはフシト皇帝陛下、そして我らジュクゴニア帝国である!」
バァアアアーーン!! ミヤビの体が爆散! 花びらの暴風となってハガネの周囲を取り囲んだ。
「地獄のような世界。そこにジュクゴニア帝国が秩序をもたらしたのだ。そのもとで人々は安寧を得た。貴様の暴力、それは秩序、そして安寧への挑戦である!」
ゴウゴウと渦巻く花びらの暴風。ミヤビの声が木霊する!
「なるほど、その過程ではたしかに犠牲もあっただろう。だがより多くの人間が救われたのだ。にも関わらず! 貴様は、お前たちは! 身勝手な妄想を抱き、そして己の暴を頼み、その力によって平和を破壊しようとしている! 故に貴様はテロリストである。それ以外の何者だと言うのか!」
「……黙れ」
ハガネは拳をギュッと握りしめた。胸から噴き出していた花びらがピタリと止まる。
「ではなぜ、お前たちはここにいる……!」
不屈の二文字がギュンっと輝く!
「お前たちはここまで、どのようにしてやって来た!」
叫びと共に、ハガネは回転を始めた!
「俺は知っている! お前たちの行為を! ここまでにやってきたことを! お前の言葉が、嘘偽りだと知っている!」
回転の勢いが増していく!
「俺は確かに人殺しだ。しかし! 俺が殺したのはジュクゴニア帝国、その兵士だけだ! だがお前たちは違う。お前たちはここに来るまでにどれだけの人間を殺してきた! どれだけの人々の生を踏みにじってきた!」
ハガネの不屈の二文字が輝き、光の渦を描いていく! 猛烈な回転が風を生み、ミヤビの花びらを吹き飛ばしていく!
「なんだとっ!」
ハガネが生み出した竜巻めいた突風。その渦の中心へと花びらが寄り集まり、ミヤビが実体化していく!
「お前にはわかるまい。俺の、俺たちの後ろに立つ人々を! 俺たちは独りじゃない! 俺は、俺たちは、決して屈しはしない!」
凄まじい回転とともに跳躍するハガネ! 目を見開くミヤビ!
「うぉおおおおぉーーー!!!」 ズォン!!
弾丸のごとき勢いで、ミヤビの体を貫いた!
【第十話「大元帥バガン」に続く!】
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