死闘ジュクゴニア_03

第10話「大元帥バガン」 #死闘ジュクゴニア

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前回

「お前にはわかるまい。俺の、俺たちの後ろに立つ人々を! 俺たちは独りじゃない! 俺は、俺たちは、決して屈しはしない!」

 凄まじい回転とともに跳躍するハガネ! 目を見開くミヤビ!

「うぉおおおおぉーーー!!!」 ズォン!!

 弾丸のごとき勢いで、ミヤビの体を貫いた!

くっそっがぁっーー!!!

 体をひねり、跳躍するカガリ! その周囲を埋め尽くすように青白い炎の玉が次々と出現していく! 爆発的な数の火球、それが凄まじい勢いで宙を飛び交っている。その量は街を焼き払った時ですら比較にならない!

「燃え尽きてっ……死ねよっお前っ!」

 カガリはツンドラに向け、その両腕を振り下ろした! ーーその瞬間、カガリはツンドラの眼差しを感じた。それは虚。そして絶対零度。まるで世界のすべてが静止したかのような、虚無と静寂。絶対零度の視線。

(なんだ? なんだ、これわっ……?)世界がまるでスローモーションのよう流れていく。カガリに向けられたツンドラの右腕、その手のひらがゆっくりと閉じられていった。

 飛び交っていた火球が次々と消えていくのが見える。(!? なんだこれっ……なんだこれっ!)まるで時空間ごと停止したかのように、カガリは空中で静止していた。カガリは自らの生命、そのエネルギーすらも停止していくのを感じた。ツンドラは冷たく言い放った。

「無駄なんだよ、アホのカガリ……。全てが無駄なんだ。ほら。見てみなよ、ミヤビ様が。ミヤビ様の花鳥風月が。今、咲き乱れようとしている……」

「「愚かなり。愚かなりっ!」」

 年端もゆかぬ少年のような声音で、突如轟いた大音声。それは超自然の力でライの心の中に鳴り響いた。

「……新手っ!」 移動幕営ジンヤを眼前にして、ライは背後の敵へと振り返った。彼女は何者をも恐れはしない。己の電光石火、その圧倒的な強大さを理解しているからだ。……しかし、この敵の異常さはいったい!

 振り返った先、そこには光り輝く少年が立っていた。黄金の髪、そして黄金の瞳。美しく、それでいて野性的な顔立ち。歳が10にも満たない少年のような背丈でありながら、それには見合わない引き締まった筋肉質の体。黄金色の装束を纏ったその姿は、さながら神話世界から抜け出した半神のようであった。

 その少年めいた敵は口を動かさずに、その子どものような声音でライに告げた。

「「それだけの素晴らしき力を持ちながら、道に迷い、我らジュクゴニア帝国に楯突くとは。誠に愚か。そして実に哀れである!」」

「ふっ」ライは鼻で笑った。「何を言い出すかと思えば、実にくだらない。お前もジュクゴニア帝国、その力の支配が自明だと考えるクズの群れの一人のようだな」

「「……哀れ。フシト陛下の御心も理解できぬ下郎。実に哀れである。よかろう、せめてもの手向け。我がじきじきに成敗してくれよう!」」

 直後、大地が揺れ、まるで電撃が走ったかのような衝撃がライを襲った! 凄まじきジュクゴ力(ちから)のプレッシャーであった!

「「聞くがいい、下郎よ。我こそはバガン! ジュクゴニア帝国大元帥、バガンである!」」

 雷鳴のごとき咆哮とともにバガンがライに迫る! まるで巨大な山脈が迫ってくるかのごとき迫力と脅威! ライは身構えた。この敵には電光石火の超スピードですら通用しないであろう。そうであるならば……!

「いいだろう! 私には覚悟がある。我が命を削り、そしてお前に見せてやろう。電光石火、その真の力を!

【第十一話「花鳥風月」に続く!】

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