死闘ジュクゴニア_01

第49話「激突する不屈と最強」 #死闘ジュクゴニア

目次】【キャラクター名鑑【総集編目次】
前回
 見開かれたそのバガンの瞳を見つめ、ハガネは言葉を失った。

 その右の眼には「最」!
 その左の眼には「強」!

 バガンの瞳には刻まれていた。黄金に輝く「最強」の二字が!

『あらためて知るがいい! そして理解せよ! 我こそは全てを圧倒する者! 我こそは全ての力の頂点! 我はバガン! ジュクゴニア帝国大元帥、最強のバガンである!!』

「うわあぁ……うわぁああ……!」

 ライはかすれる声で叫んでいた。全身全霊で、残る力を振り絞るように。それはライの底から沸き上がってきた叫びだった。許すことはできない。この怪物を倒さなければならない。一瞬にして死んでいった人々、その仇を絶対にとらなければならない。この想像を絶する化け物を、今ここで滅ぼさなければならない!

 そのライの叫びに呼応するかのように、それは現れた。その羽ばたきは大破壊によって立ち込めた土煙を貫き、燦然と天空に輝きを放っていた。それはまるで炸裂する火山のように、バチバチと火の粉を撒き散らしていた。それはまるで猛る爆炎のように轟々と渦を巻き、燃え上がっていた。

 それは空を貫く四字の翼。熱く輝くそれこそはまさしく──

 不 撓 不 屈 !!

 ハガネは吠えた。

「俺は……決して許しはしない。俺は決して……お前を許しはしないっ!」

 その両眼。不屈の二字が燃えるように輝いている!

『ふははは! ようやく来たか! 我と同じ、両眼にジュクゴを刻みし者! 瞳に〈極限概念〉を宿す者よ!』

 バガンの双眼、最強の二字がギラリと輝く。天空に浮かぶ霊長類最強の五字が強烈な閃光を放ち、世界を切り裂く。その光のなかに浮かびあがる巨大な人型のシルエット。それはまるで世界終末の光景であった。大気を震わせながら、巨人はゆっくりとその両手を広げていく!

『貴様の力がどの程度のものか……見せてみよ、このバガンに!』

 刹那! 「うぉぉおおお!」
 ゴウッ!
 吠える突風! 輝ける翼が翻り、巨人の胴を横薙ぎに切り裂いた!

『ふはははっ! 面白い!』

 ハガネはその身をさらに捩じる。不撓不屈の翼が回転し、爆炎のごとき光を巻き散らしていく! ハガネは上昇した。光の渦と化し。その渦巻く光は天空できらりと輝きを放つと、直後、急降下。それはまさしく輝ける弾丸であった。高速に回転するドリルのごとき不屈の弾丸! 弾丸は大気を切り裂き向かっていく。巨人の上半身へと向けて!

「うぉぉおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおっ!!」

 ハガネの向かう先! そこには巨人の中に浮かぶバガンの姿があった! 『ふはは! 来い!』バガンを覆う光の膜、高速で回転するハガネの翼。それらが激突し、耀きがバチバチと煮えたぎる溶岩のように撒き散らされていく! ハガネは吠えた! 「バガーッンっ!」

 ブチンッ!

 何かが弾ける音。それとともにハガネは飛び込んだ──バガンを覆う光の中へと。

『ふはははは! そうだ、それでよい! 我に見せてみよ! お前の不屈の力とやらを!』

 光の中でハガネは躍りかかる。拳を振り上げ、バガンに向けて。それを受け入れるかのようにバガンは両の手を広げ、獰猛な笑みを浮かべて待ち構えている。ハガネの不屈とバガンの最強がバチリと輝き、二人の視線の間、バチバチと稲妻のごとき閃光が貫いていく。

「うぉおお!」

 ハガネの右拳がバガンの顔面を撃ち抜く!

『ふふは! なるほど!』

 バガンは笑った。そして喜びに目を見開きハガネを見た。なおもハガネは止まらない!

「俺は!」左拳が唸りをあげてバガンの鼻先を貫く! 「お前を!」右拳、強烈なるアッパー! 「許しはしないっ!」

 ハガネは己の全てを叩き込んだ。バガンの顔面に、不屈の力を込めた強烈なる頭突きを!

『ふははは……!』光の中、たたらを踏むようにバガンは後ずさった。その鼻から、たらりと垂れる鮮血。『やりおる……』バガンは荒々しく笑みを浮かべると、べろりと舌で血を拭った。

『だが……』

 バガンの双眸がギンッと見開かれた。

『非力であるっ!』

「!?」

 衝撃がハガネの腹を貫き、その肺からすべての空気が吐き出された。

「……かっ……はっ……?」

 身を折りながら、ハガネは理解した。バガンの握りしめる右拳。それが己の腹に叩き込まれたのだと。

『ふはは……どうした。どうした。我はちょっと撫でてみた、ただそれだけなのだが?』

 さらにバガンは左手をハガネにかざし、握りしめていく。

「ぐっ………ぐあぁぁ……!」

 不可視の力! ハガネの体が凄まじい力で締め上げられていく。

『ふはは……こんなものか。我は理解したぞ。我以外の〈極限概念〉などこんなもの。呆気ない。実に呆気ない!』

「俺は……」体を締め上げられながらも、なおもハガネは言葉を吐き出していた。「……屈しはしない」

『ぬぅ……?』
「俺は……」

 ハガネの双眸がカッと見開かれた。

「決して屈しはしないっ!」

 その瞳に燃えるは不屈の二字! バチンっ! 凄まじい音とともに、ハガネは不可視の力を引きちぎる。そして再びバガンに躍りかかる!

『ふはは……楽しませてくれる!』獰猛に笑うバガンの右拳!
「うぉおおぉおおお!」吠えるハガネの左拳!

 閃光とともに、二人の拳が交錯した。

【第50話「決して立ち止まるな」に続く!】


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