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メロンパン戦士

メロンパンが世界を救うことだってある。
これは嘘偽りのない本当の話。正真正銘、世界を救った奇跡の物語。

いつもと変わらぬ朝、都立甜瓜高校前の路地。

「…は?」

気の抜けた返事をしながら振り返ったのはカナコ。視線の先にはいつものタケル。頬は上気し明らかにご立腹だ。

(かわいい…)

カナコがそう考えた刹那、

「バカ!」

いきなりの殴打。タケルの恐るべき左フック。しかし次の瞬間、カナコのカウンターがタケルの顎を打ち抜く。電光石火。

間抜けな声とともに倒れたタケルをカナコは冷たく見下ろす。

(かわいい…)

タケルは喘いで言った。

「…お、お前、メロンパン」

その時だった。二人は同時に、この世に非ざる不吉を感じ空を見上げた。

唇。

そこにあったのは街を覆わんばかりの巨大な唇。タケルは声にならない声を上げ、カナコは表情ひとつ変えずに唇を見つめる。

(おばちゃんの唇に似てる…)

唇はそんな二人をあざ笑うかのように、にたりと笑い始めた。

【続く】

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