メロンパン戦士
メロンパンが世界を救うことだってある。
これは嘘偽りのない本当の話。正真正銘、世界を救った奇跡の物語。
☆
いつもと変わらぬ朝、都立甜瓜高校前の路地。
「…は?」
気の抜けた返事をしながら振り返ったのはカナコ。視線の先にはいつものタケル。頬は上気し明らかにご立腹だ。
(かわいい…)
カナコがそう考えた刹那、
「バカ!」
いきなりの殴打。タケルの恐るべき左フック。しかし次の瞬間、カナコのカウンターがタケルの顎を打ち抜く。電光石火。
間抜けな声とともに倒れたタケルをカナコは冷たく見下ろす。
(かわいい…)
タケルは喘いで言った。
「…お、お前、メロンパン」
その時だった。二人は同時に、この世に非ざる不吉を感じ空を見上げた。
唇。
そこにあったのは街を覆わんばかりの巨大な唇。タケルは声にならない声を上げ、カナコは表情ひとつ変えずに唇を見つめる。
(おばちゃんの唇に似てる…)
唇はそんな二人をあざ笑うかのように、にたりと笑い始めた。
【続く】
きっと励みになります。