第六切断面
おぉ、オォォ……。それは悲しく、寂しく。歌うような断末魔だった。燃え上がる髑髏兵の叫びを見つめながら、男は顔を歪ませていた。また一人、失ってしまった――。髑髏を焦がす炎は盤面を照らしだし、闇に包まれた空間をいっとき橙色に染めあげてゆく。
そこは暗い空間だった。男の前には巨大な卓があり、卓上にはゲーム盤が置かれている。盤は将棋に似た升目で区切られていて、山があり、川があり、都市があり……つまりそこには世界があった。
盤上で燃える髑髏が、卓の向こうで笑う影を揺らしている。男は顔を拭い上を見た。そこにあるのは髑髏とは別の光源。
地球。
それも輪切り状に、縦に四分割された地球だった。奇妙なことにその切断面ひとつひとつに山があり、川があり、都市があり……つまり盤上に似た世界が形づくられていた。
見つめたまま男は自問する。
ここはどこだ?
俺は誰だ?
なぜゲームを?
そして――。
男の背後。闇から獣皮を纏った大男が歩みだし、跪きながら言った。
「次は私をお使い下さい」
ずきりと胸が痛む。彼が何者なのか……思いだせない。でもわかる。燃え尽きようとしている髑髏もこの大男も。みな男の駒であり、同時に家族同然の……いや家族以上の、魂で繋がった同胞なのだと。
男は震えた。恐ろしい。彼らを失うことが? いや違う。男の目はいまだ地球を捉えている。断面のうち左二つは暗く闇に沈んでいる。男がゲームに負けたためだ。そして数えて六つ目。地球の第六切断面。
そこに到った時、俺は滅ぶ。
罪の意識と共に予感があった。なぜ地球が分かたれたのか? それを知り、俺は破滅する。
髑髏はすでに燃え尽き、その暗がりの中を敵の浮遊船団が盤上の都市へと迫りつつあった。敗北は近い。
大男を見た。
「……名は?」
彼は静かに視線を返してきた。それだけで十分だった。すかさず都市を指さす。升が輝きを放つ。大男の名を叫ぶ。
「一剣百殺兵馬大王、降下!」
どれだけ失おうとも、俺は――。
【続く】
#逆噴射小説大賞2024
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