noteでどうやって健全に収益を上げるか
唐突ですが。
遊行剣禅さんの記事を読んで「noteでどうやって健全に収益を上げるか」について少し考えてみました。
まず前提として、僕自身はnoteで収入を得ようという気はないです。が。
バターコーヒーを片手に億単位のプロジェクトを右から左にすいっすいっと捌く日々を送っている人間としては(← 信じちゃだめだよ)、いかにして収益を上げるのかという話題はシンプルに興味があって、軽く考えてみたくなったわけです。
さて。
創作活動で生計を立てるという言葉の響きは美しい。ですが畢竟、それもまたビジネスです。
ここで「え!? ビジネス? 僕がやりたいのはそんな面倒なことじゃないんだ」と思う人もいるかもしれません。
でもビジネス(経済活動)とは全ての根幹です。
あなたは世界に対して何らかの価値提供(単純な労働力でもいいし、プログラミングでも物書きでもいい)を行う。それに対して対価を得る。そしてその対価を使ってあなたは生態系から資源を得て、自らの命を維持する。世界にエントロピーが排出され、生命の循環……そして宇宙……。
まぁ要するにビジネス(経済活動)って実は世界の循環そのものであり、生きていくことと直結することなので。それはあなたの生き方そのものだし、だからこそ真面目に戦略を考えた方が良いわけですね。
さて、ビジネスをするうえで最低限踏まえないといけない四つの軸があります。それは「誰に(who)」「何を(what)」「どうやって価値提供して(how)」「なぜそれで利益を上げることができるのか(why)」です。
また、スイス・ザンクト・ガレン大学の Gassmann 教授と Frankenberger 教授の研究によると、成功しているビジネスモデルは55のパターンに集約することができるということです。
それを踏まえて、まずはnoteでの成功事例について考えてみましょう。noteでの成功事例と言えば、やはりまっさきに思い浮かぶのはダイハードテイルズ出版局でしょう!
ダイハードテイルズの収益モデルは55の類型から考えるとフリーミアム+サブスクリプションになります。つまり55の類型のうち、2つのモデルの合わせ技ということになります。
フリーミアム:
無償版で人を集め、プレミアム版で対価を得る。
サブスクリプション:
月額などの定額制。安定した収益をあげることができる。
ニンジャスレイヤーなどのTwitter連載を無償提供してファンを獲得。書籍やnote上の課金コンテンツ(これらがプレミアム版に相当)で収益を上げる。またプレミアム版の提供形態をニンジャスレイヤープラスなどの月額制コンテンツをメインとすることで、安定した収益確保に成功している……ということになります。
先ほどの四軸でも考えてみましょう。
誰に:
メインターゲットはニンジャスレイヤーのファン。長年にわたるTwitter連載やアニメ・コミックなど各種媒体での展開といった広範な背景があり、またTwitter連載による無償でのコンテンツ提供を続けることで新しいファンを獲得することもできる。
何を:
Web小説を主軸に、付加価値をつけたコンテンツ。最近ではゲームなども展開。
どうやって:
TwitterやnoteなどのWeb上のプラットフォームを活用。ファンとの距離感が近くなるという作用もあり、それを活用した定期イベントなどでファン離れを防いでいる。
なぜ利益を上げることができるのか:
無償提供されているコンテンツの魅力により、広範なファン層を獲得。熱意のあるファンをプレミアムコンテンツに誘導することで、月額での安定収益を得ている。
こうしてあらためて見てみると……いやー、すげーな! って感じですね。
成功するべくして成功している感じです。もちろん大前提としてコンテンツの持つ魅力があるわけですが、そのうえであらゆることが好循環を産み出しているなぁと感じました。
書いていてちょっと思ったのが、今、ニンジャスレイヤー第二部がコミカライズされているわけですが、そのように時差のあるメディア展開があることで、ロングテール(これも55類型のひとつ)も狙えるな……なんて感じました。
さて、ダイハードテイルズ出版局のビジネスで重要な点は、やはり安定収益の確保にあると思います。書籍の出版や買い切り型のコンテンツ販売に頼ってしまうと、収益という点では安定せず、言ってしまえばいつ無収入に転落するかもわからないわけです。一方で、その安定収益を支えているのは長年の活動の結果獲得した広範なファン層なわけですね。
そう考えると「参考にならないのでは?」「これを真似するのは無理では?」「やっぱりnoteで収益上げるの無理なのでは?」と思う方も多いでしょう。でもちょっと冷静になって考えてみてください。
あなたがたとえば小説で収入を得たいと考えていたとします。note以外の成功パターンを想像してみましょう。
・出版社の新人賞などに応募して受賞、作家デビューにこぎつける。
・なろうやカクヨムに投稿して人気を得て、出版社の目にとまる。
……無理では?
ましてや作家デビューしたとしても安定収入からは程遠いわけです。
また、従来型の同人活動を想像してみても良いかもしれません。
僕はあまり同人活動には詳しくないのですが、それで相当な収益をあげている人もいると聞いています。でもたとえば自分の作ったものを印刷して、同人イベントなどで販売して……といった労力とコストは相当なものです。それと比較すれば、noteというプラットフォームを利用することは相当に敷居が低いことは間違いありません。(特に同人イベントに参加することが難しい地方在住の方などにとってはメリットが高いと思います。)
つまりnoteを活用して収益を上げるということは、他の手段と比較して敷居は低く、かつ、成功への難度も高いとは言えない、ということになります。そしてちょっとした同人活動での収益などと比較すれば、その難度のハードルもぐっと下がってくると思います。
さて、ここで重要になってくるのが購入する人の心理です。
同人イベントなどで販売した場合、そこには熱意をもって自分で足を運んだという前提と、物理の説得力があるわけです。一方でネットではタダでコンテンツを消費することが当たり前になっています。そのためいざ収益を得ようとすると「え? お金取るの?」ってなってしまうわけです。なぜか対価を得ることが悪いことのように思われてしまう。
そういう点でもダイハードテイルズ出版局がフリーミアム+サブスクリプションを採用していることはうまいやり方だと言えます。つまりコアなコンテンツはタダで得ることができる。それ以上の体験を欲している熱心なファンに対しては、リーズナブルな定額で濃厚なコンテンツを提供する。ダイハードテイルズ出版局は安定した売上を確保し、一方、熱心なファンも月500円程度で凄まじいボリュームのコンテンツに触れることができる。まさにWin-Winの関係です。
ダイハードテイルズ出版局の事例から読み取れることとして、noteで収益を上げる場合「え? お金取るの?」という悪感情をいかに減らしつつ、売上を安定させるのか、それを考えることが重要だと言えるでしょう。
ここでキーワードとなる言葉は「信頼」です。「え? お金取るの?」という言葉は言い換えれば「裏切られた」という感情です。一方でお金を払って購入してくれる人はそのコンテンツやコンテンツの提供者に対して信頼感を抱いているからお金を払う。
以上を踏まえると、もしもnoteで健全に収益を上げようと考えるなら、最低でも次の2点は戦略に組み込むべきです。
1. いかに自分とそのコンテンツを信頼してくれる人を増やすのか。
2. 「裏切られた」と思わせない課金タイミングの設定。
1 に関してnoteはそのあたりが弱い感がありましたが、これからどんどん改善されていきそうですね。
そういう意味でもnoteというプラットフォームには可能性があります。
なんだか当たり前のことしか書けませんでしたが、とりあえず以上です!
【おわり】
きっと励みになります。