死闘ジュクゴニア_マガジン

第32話「暗転」 #死闘ジュクゴニア

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前回
「ミヤビ……っ!」

 新たなる戦いの予感にハガネの不屈が凛と輝く!
 そのハガネの眼前、宙に刻まれし恐るべきジュクゴが光を放った。そのジュクゴ、それこそは

 復 活 !!

 ハガネは振り返った。その視線の先、死んだはずのミヤビの肉体がその形を変えていく。

 ミヤビの体であったもの、そこから伸びる脈打つ肉色の茎。それは大地に根を張り、同時に宙に向かって急激に枝を伸ばしていく。そしてその頂点に巨大な蕾を形成した。

 ハガネにとって、これははすでに見た光景であった。故に──

「させるものかっ!」

 走り出し、猛烈な勢いで回転跳躍。ハガネの翼が肉茎を切り裂いた! ズバァン! 巨大な蕾が宙を舞う!

 しかし!

はっ……ははははははっ!

 ミヤビの笑いが響き渡った。くるくると宙を舞う蕾、その周囲を螺旋のように花びらが渦巻き、禍々しい輝きを放った。そして蕾が開き……宙に大輪の花が咲いた。

「ハガネ。我が美は不滅。不滅なのだ!」

 凄まじき閃光を放つ大輪の花!

 ブァンッ!

 炸裂する大輪の花。突風と化した花弁が渦を巻き拡がっていく。その爆発の渦の中からミヤビが現れ、大地へと降り立った。その体を狂ったように乱れ散る花びらが覆っていく。そして美しくも禍々しい、邪神のごとき鎧を形成していった。

「ハガネ……貴様の先の攻撃。その翼をバネのように使い、自らを弾丸と化した……さしずめそういったところだろう」

 ハガネの不屈が凛と輝き、再びその翼が意思を持つようにゆらゆらと動いた。

「……だとしたら、なんだ」
「ふんっ」

 鼻で笑うミヤビ。それと同時。空を再び夜の帳が覆い、荒々しい楽の音が鳴り響いた。そして嵐のように花びらが渦巻き、新たなるジュクゴを宙へと刻んでいく! それは……

 鉄 壁 !!

 ミヤビの肌の色がみるみるうちに鉄色(くろがねいろ)へと変わっていく。さらに畳み掛けるように新たなるジュクゴが花びらによって刻まれた。それは

 石 墨 烯 !!

 六角形の格子状構造。それがミヤビの鉄色の肌を覆っていく。しかしそれだけではない! さらに刻まれるジュクゴ。それは

 麒 麟 児 !!

 ゴゥッ! ミヤビの全身を超自然の炎が覆う。

「はっはっはっ! わかるか、ハガネ。今や私の肉体は地上の何よりも硬く、そして強靭となった」

 腰の剣へと手をかける。

「そしてそれだけではない。麒麟児の力によって身体能力、そして反応速度もまた超人とも言うべき域に達している。もはや貴様の攻撃、一切通用せんと思うがいい! そして!」

 抜刀!

「もう貴様にもわかっただろう。私は死なぬ。永遠にな。何度倒れようとも、何度でも私は復活し続ける」

 ミヤビはハガネへと剣を突き付けると、自信に満ち溢れた表情で──そして楽しげに──言い放った。

「もはや貴様に勝ち筋はないぞ。さぁ、どうする。どう出る、ハガネっ!」

 それはまるで「お前ならばそれでも対抗してくるだろう」と言わんばかりの挑発であった。

 しかしハガネは何も言葉を発さず、何も応えない。ただその表情だけが透明な覚悟に染まっていく。そして……瞳の不屈がばちりと音をたてて輝いた。

 次の瞬間!

 超スピードで距離を詰め、ミヤビの眼前で拳を振るうハガネ! その拳を剣で受けるミヤビ!

 ズゥン!!

 遅れて生じた衝撃波が唸りをあげ、二人を中心として拡がっていった。その周りを荒々しく花びらが舞い、そして散っていく。

「はっははっ! それでこそ。それでこそだ! ハガネ!」

 ハガネは思った。ミヤビの顔、左半面の消えない傷跡。ミヤビは無制限に回復できるわけではない。そこに、必ず勝機がある!

俺は決して……決して屈しはしない!

 ハガネの翼が鞭のようにしなり、大地を弾く。ザンッ! ダンッ! ザンッ! 残像ともなう弾丸のごときスピードで攻撃を繰り出していくハガネ。しかしその悉くをミヤビはさばいていく!

 一方、土壇場の上!

 再び距離を取り、対峙するライとフウガ。目に見えない、聞こえることのない裂帛の気配が二人の間に充溢し、そして張り詰めている。

 その空気を破るようにまず動いたのはフウガであった。ゆらりと足を交差させるような奇妙な歩法。続いてライの手刀がぴくりと動いた。

 しかし、その時──。

 ふわり。

 二人の間に音もたてずに降り立った者があった。

 不気味。

 それはただひたすらの黒。文字通りの暗黒。すべての光を喰らう真なる闇に包まれた、影のような不気味な男であった。

 「「!?」」

 その異様な状況に気がついたのはライとフウガだけではなかった。土壇場の下、激突を繰り返すハガネとミヤビにもそれははっきりとわかった。その男が放つジュクゴ力(ちから)。それはあまりにも不気味であった。そして明らかに異質であり……そして強大である!

「ふっくっくっくっ……」

 肩を震わすようにして男は笑った。その胸を貫くようにして、突如として腕が現れた。それは超スピードで繰り出されたフウガの指突であった。容赦のない果断なる攻撃。

「ふっくくっ……」
「てめぇ……っ!」

 しかし直後、苦痛で顔を歪めたのはフウガであった。男は一切を意に介さぬように、のけぞるようにして笑った。

ふっくっくっ……地獄っ……! すべては地獄……!

 男の体から蛇のように闇が伸び、フウガの体へとまとわりついていく。「くっ……!」もがくフウガ! そのフウガの顔を男の掌が鷲掴みにした。「くそがっ……」呻くフウガを見つめる男の瞳──その暗黒が不気味に歪む!

ふっくくっ……わからせてやるっ……お前たちにも……わからせてやる! この世界は……地獄……だ……っ……とっ……!

 男の体から、闇が溢れ出した!

【第三十三話「闇に溺れる」に続く!】

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