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Blue Blue Sky.

その瞬間、世界が停止したかのようだった。
セオリは精いっぱい微笑み、そしてエンクを突き落とした。その時、彼女の瞳には涙が溢れていた。

上空2万フィート。
エンクは真っ逆さまに落下を続けながら、しかし心は静かだった。足元にはただひたすらに青い空。セオリと共にいた空中城も遥か彼方。ごうと風を切る音だけが鳴り響く。

青みがかった髪と瞳を持つその少年は、この状況でも絶望はしていなかった。この程度では死なない。そのことを彼もセオリも知っていた。彼が内に秘めた力はエンクの死を許さないだろう。

(セオリ。)

彼女の微笑みと涙。風に吹かれてなびく赤みがかった長い髪。エンクは足元に広がる青い空を見つめながら、セオリとの別れの瞬間を繰り返し思い浮かべていた。

(…きっともう、君には会えない。)

心の静寂の中に、深くて暖かい傷のような何かが広がっていった。青みがかった世界が滲み、エンクの瞳から涙がきらきらと空へと散っていった。


【続く】

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