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幸せのオレンジほっぺの鳥

その日は私たちの結婚記念日だった。それなのに。前日から続く夫婦ゲンカに疲れ果て(それも過去最大級の大ゲンカ)、私たちは会話もなくなり、ぐったりしていた。それにまつわる理由で 私は仕事を辞めることに決め、もうどうにでもなれと投げやりになっていた、そんな日。

ベランダに、1羽の鳥がやって来た。上のほうからパタパタと飛んできて、外壁に とまった瞬間を私は見た。“ん?”と注視したのは、見たことのない鳥だったから。全体的に白くて、顔の一部にはオレンジ色が見えた。どう見ても野生の鳥ではない。私はこれまでに、十姉妹、セキセイインコ、コザクラインコを飼ったことがあった。でもこの鳥は何という鳥かわからない。その見た目で調べようと「鳥」「顔」「オレンジ」など、思いつくワードで検索。まだいる、まだいる、と、私たちは窓の外を確認しながらパソコンで調べた。

どうやら「オカメインコ」という鳥らしかった。やっぱり人に飼われていた鳥だったのだ。それがわかるまでの 短いような長いような ある程度の時間、鳥はずっとベランダにいる。「お腹すいてないかな、野生の鳥みたいに自分で食べるもの調達できないし」と私が言うと、夫が何も言わずベランダへ出て行き、両手でそっと鳥を捕まえた。

「とりあえず、お水とエサあげよう。それから飼い主を探そう。」

そう言った夫に、私はびっくりを通り越して呆気にとられた。夫は鳥がダメだったはず。幼少の頃、可愛がっていたヒヨコを近所の猫に仕留められ 無残な亡骸を発見してしまい、深く傷ついたと聞かされていた。現に夫自身も、鳥を保護したことについて、あの時の行動力は何だったのか自分でも謎だと言う。

その後、飼い主さんは見つからず、我が家の家族として迎えることになった オカメインコのロッシー。ある日 突然 現れ、険悪なムードから救ってくれたロッシー。

あれから9年。私たちは、ご先祖さまが“ケンカしないで仲良くしなさい”と言いたかったんじゃないか、そうなるように導いてくださったんじゃないかと、今でも密かに思っている。

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