【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った 第一章 1/岩井三四二
第一章 死と隣り合わせの任務
一
埼玉県の所沢には、陸軍が造った“日本初”の飛行場がある。
もともと芋畑だった二十三万坪の敷地の中に幅五十メートル、長さ四百メートルほどの滑走路をそなえ、三階建ての気象観測所や格納庫、兵舎なども設けられている。
ここには五機の飛行機がおいてあるが、そのうちの一機、アンリ・ファルマン式飛行機がいま、滑走路に引き出されていた。
「やっぱり凧のお化けとしか思えねえな」
陸軍“初”の操縦訓練生である錦織英彦工兵中尉は、いまだにそういう感想