海路歴程 第十一回<下>/花村萬月
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遣り取りをする相手がいなくなると、一日が長い。どのみち昼も夜もひたすら横たわっているのだが、伴助は昼間を嫌悪した。陽射しを避けて、顔まで含めて全身を筵で覆って転がっている。
日が翳ると、筵を剝いで無窮の闇に瞬く星々にいつまでも眼差しを投げる。ひたすら独りで喋る。精神が分裂したかのように、一人二役で遣り取りする。
その晩、ざわわと雨風が伴助を擽った。船乗りなので風の種類は肌が覚えている。降雨を直感したが、遅えよ──と伴助は胸中で苦々しく呟き、舌打ちを付け加え