新 戦国太平記 信玄 第七章 新波到来(しんぱとうらい)7 (下)/海道龍一朗
一方、先に館を出ていた飯富昌景は、元城屋町の屋敷で叔父と対峙していた。
「叔父上、夜分遅くにお訪ねし、申し訳ござりませぬ」
「どうせ、眠れぬ夜を過ごしていたのだ。構わぬ」
飯富虎昌は俯き加減で力なく笑う。
「源四郎、そなたがかような時刻に来たということは、すでに御屋形様へすべてを打ち明けてしまったということであるな?」
「さようにござりまする」
昌景は胸元から何かを取り出し、叔父に差し出す。
錦袋に包まれた短刀だった。
「叔父上、この身を裏切者とお思いになるのならば、