集英社ゲームクリエイターズCAMP
【クリエイターインタビュー】カードを使ったローグライクゲーム『ハテナの塔』のネタバレギリギリトーク!
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【クリエイターインタビュー】カードを使ったローグライクゲーム『ハテナの塔』のネタバレギリギリトーク!

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塔の上で暮らす少年少女たち。彼らは、なぜ地上を目指すのか? そして子どもたちだけが塔の頂上で暮らす理由とは? ハテナが特盛りのサバイバルローグライクアドベンチャー『ハテナの塔』。高い塔の上に住む子どもたちの日常や発生する問題を追体験しつつ、カードを使ったローグライクなゲームが展開する。

今回は、そんなゲームにまつわるハテナを最も知るおふたりが集結。ひとりは集英社ゲームクリエイターズCAMPのプロデューサー、杉山晃一氏。そして、ハテナの塔の原案でディレクターのゲームデザイナー、池田トムさん。おふたりによるネタバレギリギリのトークを、どーぞ!

――そもそもゲームだと塔があったら登るのが通常進行ですよね。これ塔から降りる理由とは?

杉山
子どもたちの間では“地上には楽園”がある”という噂があります。それで地上を目指すのも理由のひとつです。また、塔の頂上は食糧不足になっており、地上に降りる途中でパンを発見し、頂上へ届けることもある。

もちろん、頂上から地上を目指す過程には危険もいっぱいありますから、そもそも塔を降りる行為について子供たちで論議を行なうこともある。

ゲームはふたり一組のパーティーで行動して、2名ずつ塔を降りていきます。その過程で“地上の楽園ってこういうものなのかな?”というのを、プレイヤーに考えてもらえたらなと思っています。

――ふたり一組にした理由はあるんですか?

杉山
ふたりのほうが、サバイバルと言う部分でリアリティを出せると思いました。

――確かに! それこそ各国軍隊の特殊部隊の入隊セレクションでは、ふたり一組のバディを結成し「仲間を見捨てるか?見捨てないか?」が最大の評価ポイントになると言いますから。さらに、ゲーム内でリアリティを感じさせる部分として、“塔の上での食料不足”という設定があること。今年、中国上海のロックダウンで食料不足がトピックスになり、意外と身近なテーマ。そんなゲーム内で超重要アイテム、かつ主食となるのはパン。これが選ばれた理由は?

トム
共通する概念的なモノを作りたかった。例えば、着るもの=服、子ども=元気、塔と言ったらハテナみたいな。ただ、これが増えるとごちゃごちゃしてしまう。

食料に関しては、おにぎりやミリタリーレーションという意見もありましたが、シンプルにパンとなりました。

杉山
ゲーム内に登場する子どもは多国籍な設定です。おにぎりだと東アジア圏では一般的ですが、それ以外の地域では知られていません。一方のパンは小麦のある地域なら、名称は違っても類似する食物はどの地域にもある。

そしてパンは古代文明では神様へのお供え物にも使われていたという神秘的な要素もある。それもあってパンを選びました。

――ちなみにゲーム内に登場するパンにはモデルがあるとか?

杉山
古代メソポタミアのアカルというパンをイメージしています。実際、書籍のレシピを見て作ってみたんですよ。7、8000年前のパンって、まだイースト菌の手法が発明されてなく、焼くと水分が飛んじゃって堅い。

味は悪くないのですが、とにかく堅い!(笑)。

――杉山さんとトムさんは、そういったゲーム内の設定を煮詰める作業を頻繁に行なっているんですか?

杉山
一応、ミーティングには“雑談”の時間を設けていますが、その雑談のボリュームが大きくなってこういった話をしますね。

トム
自分たちで作った設定を、さらに考察して、最終的にはアカルパンを作ってしまうというね。

杉山
仮に僕が「ゲーム内で子どもたちは、こんなパンを食べてます!」と宣伝で言っても、実物を食べたことがなければ何ひとつ説得力がありませんよね。

トム
いや、このパン作りは雑談から発生したけど、ものすごく重要なことなんですよ。ハテナの塔みたいな意味深なゲームは実体験があってこそ、作品に深みが出る。

コアな部分は正直に作っていかないと、必ずユーザーにアラがバレます。なので、「パンは作るべきだろう!」と自然になりましたね。

――で、若干ニヤけてしまっている杉山さんは?

杉山
もう、秒で「作るならアカルでしょ!」と回答しました(笑)。あと今後は、アカルパンのコラボ商品化もしたいですね。

トム
アカルパンの話だけでなく、開発メンバーにアイデアを振ると、秒で回答してくる。うちには誰かの応えをじっくり待つみたいな雰囲気はありません。

開発メンバーみんなの方向性は一緒なんです。

――ゲーム内のパンは、食料として以外の使われ方も?

杉山
あります。入手したパンを「神様に捧げるか? 自分たちで食べるか?」という論争を子どもたちが起こします。

トム
そもそも、塔の上での生活が苦しいから「神に捧げたほうが楽になる」という考えもあります。

――それ、最近の小学校で行なわれる「自分たちで飼育した魚を食べるか? 放流するか?」を論議する授業みたいな感じですね。

トム
それに近いです。ゲームの根底には「生きるか?死ぬか?」というテーマがありますから。

杉山
もともとトムさんがハテナの塔でメインテーマに据えたのが“命の尊さ”です。戦闘での勝ち負けよりも“食べ物がない!”というほうが、リアリティが出ますから。

トム
その辺はイベントでのセリフまわしでも表現しようとしていますね。

あと例えば、パンはゲームシステム上で通貨的な役割もします。パンを神様に捧げることで、パラメーターがアップするという。

――食料か? 能力アップか? 究極の選択を迫られるワケですね。

トム
ファンタジー色を強めると、“伝説の○○”みたいな宝石を通貨的に扱いがちですが、「極限状態では宝石なんて役立たないでしょ!」というのが、開発メンバーの一致した意見でした。

杉山
もともとのテーマが、子どもたちを主人公にして“命の尊さ”を、どうリアリティを持って表現するか? でしたから、やっぱり宝石じゃないんですよね。

――それこそ、今年ロックダウンされて食料不足に陥った上海のタワマンでは、ぶつぶつ交換の最強アイテムが【コーラとタバコ】だったそうですから、“極限状態は宝石じゃない!”というのは十二分にリアリティありますよね。

トム
その上海のロックダウンと、ハテナの塔はぜんぜん遠い話じゃないです。僕もマンションでステイホーム軟禁が続いたときに自然と形になった企画ですからね。

――そもそも“塔”がゲームの舞台というのも最初から決まっていたんですか?

トム
はい。でも、その理由は言えません。塔が舞台で、なぜ塔を降りるのか? その理由はちゃんとあって、それは開発当初から何も変わっていません。

――これは壮大なネタバレフラグ?

杉山
はい(笑)。ただ、最後まで辿りついたプレイヤー同士が、いろいろ考察する。そして話し合うことで、ゲームの魅力が広がる作品になっていると思います。

――ところで、おふたりが仕事をするようになったきっかけとは?

杉山
知り合って10年近いですよね。お蔵入りになったネタもありつつ、やっと共同でゲーム制作をできたのがハテナの塔です。

――トムさんとしては、やはり初見は“杉山晃一”という名前から突っ込んだのですか? 

トム
寄せてるのかな?と思ったけど、ひらがな表記じゃないから、この10年間ずっと放置してます(笑)。

杉山
ゲーム業界なんで、名前で突っ込まれることは多いですよ。堀井雄二さんに名刺をお渡しした時は、「ひらがな表記にしていいよ」と言ってもらえたので、事実上の公認です(笑)。

トム
それ、公認になってないでしょー(笑)。

ただ、杉山さんとは一回話しただけで、カチッとハマった。一緒に仕事をして思うのは、いきなり深いとこまで方向性を決められること。会社の建前的な部分をスルーして、クリエイティブのコアな部分をしっかり引き出せるプロデューサーですよね。

――杉山さん、大絶賛されてますけどッ!

杉山
クリエイターさんの中には言葉ではなく、作品そのもので自身が表現したいことを僕らプロデューサー側に伝えようとする人が多いです。

正直、作品からそれを読み取るのは多くの経験が必要で、とても難しい。一方で、トムさんは「これ、どうゲームに使いますか?」と聞けば、言葉で返してくれる。

コミュニケーション能力が高いクリエイターなんです。ただ、トムさんは自分から「ここが重要です!」って教えてくれないですよね?

トム
絶対に言わない(笑)。結局、偏屈なんですよ。重要なことは言わないけど、それは作品に散りばめているから、それを拾って聞いてきたらいくらでも説明しますというスタイル。

逆にそれを拾ってきた人間としか仲良くできないし、仕事も難しいでしょう。

――具体的に杉山さんが“拾ってきた”エピソードってあるんですか?

トム
ハテナの塔の挿入歌の歌詞に、杉山さんにしかわからない“ワード”を入れたんです。どうせ忙しいから「歌詞を細かくチェックしねーよな」と思ってたら、「トムさん、アレ入ってましたね!」と即拾ってくる。

あれは嬉しかったですよね(笑)。

――恋人同士かよ! そんな和やかムードのおふたりは、仕事上で上下関係があったりするんですか?

トム・杉山
ないですねー。

トム
お互い「ジジイになるまでゲーム作りたい」と言ってる仲ですから、仕事関係というより、戦友です。

あのー。YouTubeで水彩画を描く動画を配信している柴崎春通さんという方がいるんです。

この方は、75歳でも絵を描き続けて、YouTubeで配信してるだけでもすごい。さらに、視聴者からのコメントにはすべて返信する。

「何のために絵を描いてるかわからない」と悩む視聴者へのコメント返しでは、「お互い最後に描く作品を最高の作品にしましょうね」って。

こんなこと言えるの最高じゃないですか! こんな素敵なコメントが言えるまで、現役でゲームを作り続けたい。

柴崎さんは、コメントだけでなく画家としても素晴らしいので、いつか一緒に仕事したいですね。

――では、ハテナの塔のビジュアルについても、お願いします。

トム
絵柄は本当に気を使いました。アニメ的でもダメ、ゲームにより過ぎてもダメ。だから、なにものでもない絵柄を追求しました。

杉山
良い意味で個性を削ぎ落としたシンプルなビジュアルで、人によっては花華がない絵と感じるかもしれません。でも、その個性を極限まで削った絵に共感してくれる人もきっといます。

十人十色で感じ方が違う絵にしたかった。

トム
仏像と同じですよね。アルカイク・スマイル、仏像理論です(笑)。

――キービジュアルにある「ハテナの塔」のロゴ。これも作品のイメージを高めているなと感じたのですが、これにはどんな試行錯誤が?

トム
ありません。満場一致で決まりました。ハテナの塔の制作では、ビジュアルのコンセプトから、パンのようなシステムまで、ほとんどが満場一致で決まるんです。

杉山
トムさんやアートディレクターの納口龍司さんのやりたいことが、他のメンバー間にも共通認識としてあった。例えば、トムさんがアイデアを発表すると、他のメンバーも「あー、それそれ!」と、世界観やアートのイメージが共有されてる。それもかなり解像度が高い状態で。

よく“モメた回数が多いほど名作になる”と言うけど、逆にハテナの塔は満場一致で進行し続けているプロジェクトなのがおもしろい。

トム
それ、今後のベンチマークになりますよ。満場一致プロジェクトの(笑)。

杉山
もちろん作品を仕上げるまでの試行錯誤はなんぼでもあります。ただ、メンバー全員が同じ方向にバンッ!って一気に進んで作ってるから、満場一致プロジェクトの方が絶対におもしろいものになると思ってます。

トム
プロジェクトは満場一致だけど、ハテナの塔の主人公たちは好き勝手に意見をぶつけあって結構揉めてます(笑)。制作現場とハテナの塔の現場の温度差が感じられるあたりも、制作していてとても楽しいプロジェクトです。

そういった面でも、今後のゲーム開発のランドマーク的なタイトルになると思っています。

――ハテナの塔のサウンド面はどうでしょうか?

トム
音ゲーです。

杉山
音ゲーじゃないって(笑)。曲は全部良いです。これは音ゲーじゃないけど、とにかく聴いて癒やされ、自然と口ずさみたくなるサウンドになっています。

トム
僕、ゲームの企画を立ち上げるときに、まず作るのが曲なんです。企画を作曲家の福田淳さんに話し、曲を作ってもらう。

仮に、福田さんの作曲意欲が浮かばなかったら、その企画はぜんぜんダメ。しかし、ハテナの塔の場合は、福田さんがどんどん曲を作ってくる。

ある意味、僕のゲーム作りにとって福田さんの作曲はベンチマークですよね。それを考えるとハテナの塔は、ここまで最高の進行です。

トム・杉山
サントラ、出したいっすねー。

――ところで、そのような有能なメンバーはどのように招集したのですか?

トム
コアメンバーは、もともと僕と意思疎通ができてる人間。それをはじめに揃えました。

具体的に説明するのは難しいですが、日常にあるハテナなことに、フワッと目が行く。その目線が一緒のメンバーです。

そして重要なのは女性がいること。今回のメンバー構成だと多いときは12名いて、半分が女性です。

特に、ハテナの塔はシナリオ的にも繊細な部分が多く、女性がいないと成り立ちませんでした。

――開発チームが男女混合なのも、塔の上で暮らす少年少女を彷彿させますね。では最後に、開発メンバーが語るハテナの塔の推しポイントとは?

杉山
まずは世界観が気になった方は是非触ってみてほしいです。絵の雰囲気ももちろんですが、音楽が抜群に素晴らしいので、何時間プレイしても飽きません。

それとローグライクはあまりやったことがないよ、という方でも、“ちょっと頭を使って不思議な体験をしてみたい”と思ったらプレイしてほしいです。

トム
ハテナの塔って、森林浴みたいなゲームなんです。心地よい音楽と物語と絵を浴びながらハテナな出来事に浸れる。そして、プレイいただいた後は、皆さん自身の毎日が実は"ハテナ"の森林浴そのものだったんだなと、毎日がもっと楽しく過ごせるようになっていただけたらとても嬉しいです。

杉山
ほんと、それ! 例えば、僕らの日常生活って“本当に食べ物がない!”って状況は、ほぼありませんよね。一方、戦争地帯やロックダウンされた都市では、リアルに起こっている。そういった部分へちょっと視線を向けることが“ハテナ”の始まりで、ゲームを通して考察するきっかけになるのではと考えています。

トム
日常にあるハテナなことって、考えはじめたらきりがない。例えば僕は最近、ベッドから落ちて、足を捻挫したんです。それで“重力スゲーな!”と(笑)。そして重力のことを調べはじめる。こんなハテナ考察があってもいいんですよ。

ただ、そういったハテナを考えはじめたらキリがねーなと(笑)。まー。それが、おもしろいんだけどね。

――ゲームを楽しむだけでなく、プレイ後もプレイヤーそれぞれに“ハテナ”の余韻が広がる、ハテナの塔。こちらはSteamから年内中に配信予定ですよ!


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