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【ゲーム企画 BOOT CAMP!!】Part3 ゲームシステムとゲーム性

クリエイターの皆さん、こんにちは。CAMP隊員ほりきりです。
集英社ゲームクリエイターズCAMPをご利用いただきありがとうございます。

本日は「ゲーム企画 BOOT CAMP!!」の第3回をお届けいたします。
この連載では「GAME BBQ Vol.2に応募してみたいけれど、企画書ってどう書いたら良いのかわからない」という方に向けて、CAMP隊員ほりきりがプロの現場でゲームプランナーとして培ってきた経験を元に、ゲーム企画の考え方から企画書の書き方までを、なるべくわかりやすく解説していきます。

連載は全5回を予定しており、各回で取り上げるテーマは以下を予定しております。

  1. 企画書は何のために書く?

  2. コンセプトは迷える開発者の指針!

  3. ゲームシステムとゲーム性(今回)

  4. 長く遊ばせるための「ゲームサイクル」

  5. 頭に入ってくるプレゼン方法

本連載や「GAME BBQ」の主旨については、第1回の記事で解説しておりますので、まだご覧になっていない方は、ぜひ先にそちらをご覧ください。

それでは今回の解説に入りましょう。

ゲームシステムはどのくらい説明すべき?

ゲームの企画書を書いていると、ついついゲームシステムを詳細に説明しすぎて、「情報が多すぎる」と言われてしまいがちです。
企画書は「仕様書」ではないので、ゲームシステムを詳細に説明する必要は無いのですが、ではどのくらい説明すべきなのでしょうか?

実はこれにも明確な答えはありません。なぜなら第1回で説明した通り、企画書は「読み手が知りたいことを伝える」ものだからです。つまり、読み手によって記載すべき情報は異なるというわけです。
人によっては「リプレイ性に関わる部分を詳しく説明して欲しい」という場合もあり得ますし、「マネタイズに関わる部分を知りたい」という人もいると思います。

ですが多くの場合、以下のポイントは最低限抑えるべきだと思います。

  • コンセプト実現に必要不可欠な部分

  • ユニークポイントになる部分

「コンセプト」に関しては第2回で解説しましたが、「どんなゲームだから、どう面白い」というように、そのゲームを端的に表した文言でした。

また第2回の中では、「コンセプトは仕様の判断軸」というお話もしました。つまり、ほとんどの仕様はコンセプトの実現のために存在しているはずで、そういう意味ではどの仕様も「コンセプト実現に必要な部分」ではあります。
ですが「無ければコンセプトが成り立たない」というものと「あればコンセプトがより強まる」というものがあるはずなので、前者を優先的に説明しましょう。

また2点目の「ユニークポイント」、つまりこのゲーム特有の要素があれば、優先的に説明しましょう。
逆に多くのゲームで見られるシステムは、詳しく説明しなくても伝わるので、説明は省略しても大丈夫です。例えばRPGの企画で、バトルシステムは特に重要じゃないとすれば、「バトルは一般的なコマンド式」くらいの説明で十分です。

ただし、企画書に記載はしなくても、企画書を作成する前に必要な機能は全て洗い出しておきましょう。
なぜなら、プレゼンのときに質問される可能性があるからです。
企画書に記載していない要素について聞かれたときに、「まだ考えていません」というような回答をしてしまうと、「この人はちゃんとゲームが設計できているのだろうか……?」と疑念を抱かせてしまいます。
企画のプレゼンは、ゲームの内容を説明するだけでなく、その実現性についてアピールする場でもあることを忘れてはいけません。
もちろん、仕様書に記載するレベルまで詳細化する必要はありませんが、一言で説明できる程度には考えておきましょう。

UXとセットで説明しよう

さて「何を説明すべきか」は決まったとして、「どう説明すべきか」を考えてみましょう。
ここで、第2回でお話したことを思い出してください。

上記のようにゲームシステムやシナリオなどを一生懸命に説明しても、「面白さ」が伝わりにくいのはなぜでしょう?
それは「結局、どういう風に面白かったの?」という情報が抜けているためです。

【ゲーム企画 BOOT CAMP!!】Part2 コンセプトは迷える開発者の指針!

だからこそ、コンセプトには「どう面白い」というUXの記述が必要でした。
そして、それはゲームシステムの説明でも同じです。

ゲームシステムを説明する際には、「どういうシステムか」だけでなく、「それにより、どういう体験が生まれるか」もセットで説明しましょう。
「バトルには制限時間があります」とだけ説明されても「フーン」で終わってしまうかもしれませんが、「バトルに制限時間を設けることで、積極的に大技で攻めることを促し、派手でハイテンポなバトル体験を生み出します」と言われれば、より面白そうに感じるのではないでしょうか。

「ゲームシステム」と「ゲーム性」とは?

今度は、説明方法の話からは少し離れて、「ゲームシステムそのもの」についても少しお話したいと思います。

ゲームシステム、もっと言えば「ゲーム」とは何でしょうか?
これには様々な捉え方があると思いますし、絶対的な正解も無いと思いますが、私は「楽しい挑戦」だと考えています。

「強敵に戦いを挑む」
「難しいアクションに挑む」
「恐怖の館に挑む」
などなど、多くのゲームは「挑戦」です。

現実の挑戦、例えば受験勉強なんかは、基本的に辛く大変なものですが、ゲームは「挑戦すること自体が楽しい」ものだと思います。
したがって、ゲームを構成するゲームシステムは「挑戦を楽しくするための仕組み」であると考えられます。

では、挑戦を楽しくするために何ができるでしょうか?
これにも様々なアプローチがあると思いますが、その一つとして「工夫させる」というのが挙げられます。
良く出来たゲームは、何度もプレイするうちに「こうすればもっと強くなれる」という工夫のポイントがわかってきて、上達の楽しみを味わえます。

このようにプレイヤーに工夫させるための仕組みが「ゲーム性」なのではないかと、私は考えています。

「ゲーム性」を生み出すメカニズムの例

ゲーム性が「プレイヤーに工夫させる仕組み」であるとして、それはどのように作れば良いのでしょうか?

市場のゲームをたくさんプレイしている方ならわかると思いますが、ゲームにおける「上手くなるための工夫」は多種多様で、唯一の解はありません。
しかしゲームに含まれる要素を抽象化していくと、多くのゲームに共通で見られる要素がいくつかありますので、その代表的な例を紹介していきます。

ジレンマ

「ジレンマ」とは、「あれもしたいが、これもしたい」というように、二つ以上の目的があり、両方同時にはこなせないという状況です。

こういった要素があると「何をどれだけやれば良いか?」という悩みが生まれ、プレイしていく内に経験からその塩梅がわかってきて「上達」を感じられます。
逆にこれが無いと、明確に「これだけやればOK」という最適解が存在することになります。

代表的なジレンマは、以下のようなものがあります。

  • 取捨選択
    「攻撃すれば防御はできない」のように複数の選択肢から一つを選ばせることで、「今は何をすべきか」というジレンマが生まれる。

  • リソースマネジメント
    有利な行動ほど多くのリソースが消費されることで、「強い技を使いたいが、MPも温存しておきたい」のようなジレンマが生まれる。

  • リスク&リターン
    「強い技だが、スキが大きい」のように、有利な行動ほど重大なリスクを伴わせることで、使うべきかどうかのジレンマが生まれる。

ダイナミクス

「ダイナミクス」とは、動いたり変化したりすることです。
ゲームにおいても、変化する状況に応じて、やるべきプレイが変わるというダイナミクスがよく組み込まれています。

こういった要素があると、プレイしていく内に経験から「いつ、何をやれば良いか」がわかってきて上達を感じられます。

これは先述の「ジレンマ」と組み合わせるとより効果的で、「あれもしたいが、これもしたい」というジレンマの中で、「今は何をすべきか、次は何をすべきか」と状況に応じた判断を行う複雑なゲーム性が作れます。

RPGで例えるなら……
「強い技を使いたいが、MPも温存しておきたい(ジレンマ)」
「相手の攻撃が強いから、強い技で早く倒したい」
「この敵はもうすぐ倒せるから、弱い技でMPを温存すべき」
のような感じです。

不確定性

「情報が一部隠されており、不確実な状況の中を推測で行動する」というゲーム性もあります。
代表的なところだと、麻雀やポーカーなどが挙げられます。

こういった要素があると、プレイしていく内に経験から「○○したってことは、相手は□□を狙っているのでは?」という推測のコツがわかってきて上達を感じられます。

「ゲーム性」は必須なのか?

さて、ここまで「ゲーム性」の話をしてきましたが、これは果たして全てのゲームにおいて必須なのでしょうか?

答えは「NO」です。
その理由は、第2回の「コンセプト」に関するお話を読んでいただければ、わかると思います。
そう、「ゲームに何が必要か」の判断軸はコンセプトであり、「ゲーム性の有無」ではありません。

実際、ゲーム性の扱いを間違えるとデメリットが発生してしまうケースもあります。
ゲーム性は「プレイヤーに工夫させる仕組み」なので、上手く難易度を設計できないと「工夫できなかったプレイヤーは進めない」というリスクがあります。
ゲームの「上手い/下手」は人によるので、自分のゲームを一番プレイしてくれそうな「ターゲット」の視点に立って考えてみましょう。
例えば「ストーリーに没入する」という体験をウリにしているゲームであれば、お客さんも「ストーリーを楽しみたい」と思っているはずです。その場合、下手に複雑なゲーム性を組み込んでしまうと「ストーリーの邪魔」と思われてしまう可能性もあります。

自分が作っているゲームは「何を楽しむ」ものなのか、今一度コンセプトに立ち戻って、よく考えてみてください。

最後にまとめと補足

今回は、以下のことを解説してきました。

  • ゲームは「楽しい挑戦」

  • ゲームシステムは「挑戦を楽しくする仕組み」

  • ゲーム性とは「プレイヤーに工夫を求める仕組み」

ただし、第1回から申し上げている通り、これらはあくまで本記事における解釈であり、絶対的な定義ではないことをご承知おきください。
実際、まったく「挑戦」の要素が無いゲームジャンルも存在します。
そういったモノに対して「これはゲームなのか?」という議論もあるとは思いますが、クリエイターとしては、安易に既存の枠組みに当てはめず「自分にとってどうなのか?」を考えることが大切だと思っています。

また、今回はゲーム性を生み出す代表的なメカニズムとして、「ジレンマ」「ダイナミクス」「不確定性」を紹介しました。
しかし、これらはあくまで一部であり、ゲーム性を生み出すメカニズムは他にもたくさんあります。
ぜひこれからは、ゲームをプレイする際に「ゲーム性がどう生み出されているか?」を考えつつ遊んでみてください。そして「これだ」という要素が見つかったら、抽象化して他のゲームにも当てはめられないか考えてみてください。抽象化した要素であれば、自分の制作しているゲームに合わせて適用できるはずです。

次回は「長く遊ばせるための『ゲームサイクル』」というテーマで解説していく予定です。「ゲームサイクルとは何か?」「ボリュームを増やさず、長く遊ばせるにはどうすれば?」といったお話をする予定なので、ぜひご期待ください。

CAMP隊員ほりきり

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