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【ゲーム企画 BOOT CAMP!!】Part4 長く遊ばせるための「ゲームサイクル」

クリエイターの皆さん、こんにちは。CAMP隊員ほりきりです。
集英社ゲームクリエイターズCAMPをご利用いただきありがとうございます。

本日は「ゲーム企画 BOOT CAMP!!」の第4回をお届けいたします。
この連載では「GAME BBQ Vol.2に応募してみたいけれど、企画書ってどう書いたら良いのかわからない」という方に向けて、CAMP隊員ほりきりがプロの現場でゲームプランナーとして培ってきた経験を元に、ゲーム企画の考え方から企画書の書き方までを、なるべくわかりやすく解説していきます。

連載は全5回を予定しており、各回で取り上げるテーマは以下を予定しております。

  1. 企画書は何のために書く?

  2. コンセプトは迷える開発者の指針!

  3. ゲームシステムとゲーム性

  4. 長く遊ばせるための「ゲームサイクル」(今回)

  5. 頭に入ってくるプレゼン方法

本連載や「GAME BBQ」の主旨については、第1回の記事で解説しておりますので、まだご覧になっていない方は、ぜひ先にそちらをご覧ください。

それでは今回の解説に入りましょう。

「プレイ時間の長さ」は重要?

さて、今回のタイトルには「長く遊ばせるための」とありますが、そもそもゲームは長く遊べるほうが良いのでしょうか?

もちろん、必ずしもそうではありません。
10分で遊び終わるミニゲームと、100時間以上かかる超大作、どちらかが絶対的に優れているということはありません。

ただし、ゲームのプレイ時間は「価格」に少なからず影響します。
これは買う側の立場で考えてみれば、頷けるのではないでしょうか。10分で遊び終わってしまうゲームに1,000円を払うのは難しいと思いますが、10時間遊べるのであれば納得しやすいと思います。

もちろん、自分で作って自分で売るのであれば、価格をいくらに設定するのも自由です。ただ多くの人は「価格に見合ったものか」を考えて購入を検討しますから、その納得感を作る要素の一つとして、プレイ時間は重要であると言えます。

ちなみに、制作者の心理としては「制作期間」で価格を決めたくなるかもしれませんが、これはあまりオススメできません。
お客さんにとっては「制作者がどれだけ時間をかけたか」はあまり関係がなく、それよりも「面白さ」や「プレイ時間」のほうが、自分の体験に影響する重要な要素となるからです。

ボリュームに頼らずプレイ時間を延ばしたい

ここまでプレイ時間の重要性についてご説明してきました。
では、プレイ時間を延ばすにはどうすれば良いでしょうか?

真っ先に思い浮かぶのは、やはり「ボリューム」です。
市場に並ぶAAA(トリプルエー)と呼ばれるような大規模タイトルは、広大なマップと膨大なコンテンツ数を有しており、100時間遊んでも遊びきれないようなボリュームがあります。

とはいえ、個人や少人数で制作している場合、ボリュームには限界がありますので、それに頼らずにプレイ時間を延ばす方策を考えたいところです。
そこで重要になってくるのが「ゲームサイクル」です。

「ゲームサイクル」とは

多くの場合、ひとつのゲームにはさまざまな要素があります。
街やダンジョンの探索、ショップでの買い物、装備やキャラクターの強化、モンスターとのバトル、などなど……。

ゲームサイクルとは、それらのゲーム要素をモチベーションの矢印で繋いだ、プレイヤーの辿る軌跡です。

上図は、典型的なRPGのゲームサイクルです。

モチベーションの矢印とは、「バトルに勝ちたいから、装備を強化したい」というように、プレイヤーの「○○したい」という気持ちによって、どのゲーム要素がプレイされるかを表したものです。

「ゲームが長く遊べる」ということは、つまり「ゲームサイクルが回り続ける」ということです。
逆に「ゲームサイクルの終着点」が「ゲームの辞めどき」です。
なので、モチベーションの矢印がどこにも繋がらない「終着点」へすぐに辿り着いてしまわないよう、ゲームサイクルを設計すれば良いわけですね。

飽きづらいサイクルを作るには?

ゲームサイクルは、すぐに「終着点」へたどり着かないことが重要ということをご説明しましたが、これは単に「行き止まりが無ければ良い」という話ではありません。

なぜなら、人は何度も同じサイクルを繰り返していくと、次第に飽きてしまうからです。飽きて「○○したい」という気持ちが無くなってくると、モチベーションの矢印が途切れて「終着点」になってしまいます。
大規模なAAAタイトルでは、そうならないように「広大なマップと数多のダンジョン、さまざまなキャラクター、いろんな敵とのバトル、多種多様なアイテムの収集」などなど、大量のコンテンツを用意しているわけですね。

ボリュームに頼らず何度も同じサイクルを繰り返し遊んでもらうには、ゲームサイクル内の各要素に、何度遊んでも飽きづらいような「耐久度」を持たせる必要があります。

「耐久度」を作る方法として、代表的な例をいくつか挙げます。

レアアイテム

モンスターを倒したりダンジョンを探索することで、アイテムを入手できるシステムはよくあるとおもいます。
このとき、アイテムの入手確率を個別に設定できるようにしておき、滅多に入手できない「レアアイテム」を用意すると、それを目当てに何度もプレイしてもらえます。

もちろんアイテムだけでなく、イベントやモンスターをレアにしても良いでしょう。
大切なのは、「次はレアが出るかもしれない」という期待感を作ることです。それにより、同じバトルやダンジョンを遊び続けていても飽きにくくできます。

スコアやタイム

シューティングゲームなどでは、敵を倒したりアイテムを取ることでスコアが加算されていき、クリア時に何点取ったか記録されるシステムがよくあります。
またレースゲームなどでも、「どれだけ速くゴールできたか」というタイムが記録されます。

このように「記録」を取ることで、同じステージでも「より良い記録を出そう」というモチベーションが生まれ、飽きにくくすることが可能です。
他のプレイヤーと記録を比べることができれば、さらにモチベーションは上がるでしょう。

ミッション

「ノーダメージでクリア」「1分以内にクリア」など、単にステージをクリアするだけでなく、特定のミッションを満たすことで追加報酬が貰えるようなシステムもあります。

ゲームの難易度は上げるほどクリアしづらいので、コンテンツの消費スピードを落とすことはできますが、一方でクリアできずに辞めてしまう可能性もあります。
ミッションを設けることで、「普通のクリアは簡単だが、ミッションは難しい」というように、初心者には優しくしつつ、上級者がやり込む余地を作ることができます。

最後にまとめと補足

今回は、以下のことを解説してきました。

  • プレイ時間は価格に影響する

  • ゲームサイクルは、ゲーム要素をモチベーションの矢印で繋いだ
    プレイヤーの辿る軌跡

  • サイクルを何周しても飽きづらい「耐久度」の作り方

ただし、今回ご紹介したゲームサイクル工夫についても、全てのゲームに対して有効というわけではない点にご注意ください。
その理由は、第2回の「コンセプト」に関するお話を読んでいただければわかると思います。
そう。大切なのはコンセプトであり、そこで定義された「このゲームはどう面白い」というUXです。

例えば「物語に没入する」というUXを重視したアドベンチャーゲームに、「このチャプターを5分以内にクリア」のようなミッションを入れてしまうと、物語を味わう暇が無くなってしまいます。

長く遊んでもらうことの本質は「モチベーションの矢印を途切れさせない」ということなので、「プレイヤーは何をしたいのか?」という視点は忘れないようにしましょう。

また、今回ご紹介した「耐久度の作り方」はあくまで一部であり、世の中のゲームにはもっとたくさんの工夫があります。
ぜひこれからゲームをプレイする際には、「このゲームはどうして飽きずに続けられるのだろう?」あるいは「どうしてすぐ飽きちゃったんだろう」と考えてみてください。
そうすることで、「耐久度」を作るための工夫が見えてくるはずです。

次回は「頭に入ってくるプレゼン方法」というテーマで解説する予定です。良い企画を考えても、ちゃんと理解されないと採用してもらえませんので、そのために重要なテクニックをご紹介します。ぜひご期待ください。

CAMP隊員ほりきり


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