マガジンのカバー画像

いつかの日記

11
人生で出会った男の話
運営しているクリエイター

2019年8月の記事一覧

カネゴンの話

カネゴンは、隣の中学に通うひとつ年上の先輩だった。わたしはカネゴンと同じ部活をしていたので、練習試合やら合同練習やらでなんとなく知り合い、なんとなく仲良くなった。カネゴンは部活の練習に、いつもママチャリで来ていた。カネゴンのことを思い出す時、わたしの記憶の中のカネゴンは、いつもママチャリを引いている。わたしはその横をてくてく歩く。 カネゴンは背が高くて、ちょっとぽっちゃりしていて、クマみたいな感じの男の子だった。「カネゴン」というあだ名がめちゃくちゃしっくりきていた。優しい

初恋と先輩の話

中学生になったわたしははじめて先輩という存在に出会った。 たとえば小さい頃から野球やサッカー、バスケなんかをやっていたひとならまた違うのかもしれないが、特に習い事もせず、家に引きこもっては絵を描き本を読み、きわめて陰気な小学生時代を過ごしたわたしは、中学生になって入った部活ではじめて上級生との関わりを持った。部活をこなしテストをこなしスカートの短い「先輩」たちは、とても大人びて見えた。 スポ根マンガにハマるあまり(少年マガジンに夢中な小学生女子だった)、ドのつく運動音痴の

前世で兄妹だったひとの話

中学生のころ、彼氏みたいに仲良くしている男の子がいた。 毎日のように一緒にいて、いろんなところに出かけた。マックにゲーセン、カラオケ、本屋さん、映画も何度か観たっけな。趣味もフィーリングも合う男の子だったから、何をしていても楽しかった。わたしはときどき、彼と一緒に歌いながら歩いた薄暗い冬の帰り道のことを思い出す。わたしは彼の、低くて優しい声が好きだった。彼に教えてもらった歌のいくつかを、わたしは今でもときどき口ずさむ。 そういえば電話もよくした。当時はまだ自分の携帯がなか