#012 日本からリーダーが生まれない本当の理由

自分で起業したりNPOを設立したりする様なリーダーシップはないものの、この世界のありようについて問題意識をもっていて、出来ることならそれを変えたいと思っているような人にすすめたい生き方、それが「ファーストフォロワー」という生き方です。ファーストフォロワーとは、企業や社会の変革を主導するリーダーを最初に見つけて、この人たちを助けるために手を挙げてフォロワーになる人たちのことです。

本当のリーダーとファーストフォロワーはよく混同されます。大きな変革の方向性を最初に指し示すのがリーダーであり、そのアイデアに賛同していち早く仲間になってこのリーダーを支援するのがファーストフォロワーです。

この枠組みでいえば、例えば幕末では勝海舟がリーダーであり、坂本竜馬はファストフォロワーであった、ということが出来るでしょう。坂本竜馬は一般にリーダーの典型だと考えられていますが、もともと彼に開国および貿易による立国のアイデアを示したのは勝海舟です。

坂本竜馬は勝の示す明確なビジョンとアイデアに心酔して彼の弟子になり、その運動を支援して歴史に名を残したわけで、先述したような枠組みで考えればリーダーというよりもファストフォロワーであったというべきでしょう。

世界を変えることになったアイデアの多くは、当初誰もが「?」と思うようなものでした。それが現実に世界を変えることにつながったのはファストフォロワーが現れたからです。

フォロワーというのは、一般にリーダーと比較して低く評価されがちですが、一番最初にリーダーについていくことを決めた人たちが現れなければ、リーダーはリーダーになり得ず、それらの偉業も成し遂げられなかったはずで、とても重要な役割を果たしているのです。 

ここで一つクイズを出します。

リーダーシップ、フレンドシップ、パートナーシップという三つの言葉に共通している要素がなにか、わかりますか? 

答えは、どの言葉も「人の関係性」についての言葉だということです。

一人ではフレンドシップもパートナーシップも発揮し得ません。二人以上の関係があって初めて成立しうるのがフレンドシップやパートナーシップなのですが、不思議なことにリーダーシップだけは個人の属性のように考えられています。しかし、これは全くの勘違いです。リーダーシップというのは能力や知識のような属性ではありません。

リードする人がいてフォローする人がいる。この二人のあいだに成立している関係がリーダーシップだということです。立教大学でリーダーシップの研究をされている中原淳先生はさらに踏み込んで「リーダーシップとは一種の現象である」と指摘していますね。

属性は「個人の内部」に存在するわけですが、現象は「個人の外側」、つまり環境側に生まれるものです。環境側にあるということは「リーダーシップの問題」は個人の問題としてではなく「環境の問題」として考えなければいけないということです。

ここに多くのリーダーシップに関する研修やトレーニングの問題の根幹が潜んでいる。こういった取り組みはリーダーシップを「個人の問題」として捉えて解決しようとしますが、リーダーシップは切り離し可能な部分問題ではなく「システムの問題」であり「社会の問題」なんです。

このように考えてみると、日本からリーダーが生まれない構造的な理由が浮かび上がってきます。そう、日本でリーダーが生まれない本当の理由は「リーダーがいない」ということなのではなく、実は「フォロワーがいない」という環境側、社会側の問題だということです。

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