#014 なぜインターネットは「呪い」に満ちてしまうのか?

最近、「呪い」というものについて色々と考えていまして、これから何回かにわけて「呪い」というものについて記事を上げてみたいと思います。今回はまず第一回ということでお題となっている「なぜインターネットは呪いに満ちてしまうのか?」という問題について、です。

まず皆さんは「呪い」と聞いて、直感的にどのように感じますか?おそらく、多くの人には「前近代的で非科学的なもの」と感じられるのではないかと思います。呪術を宮中で司る陰陽師が活躍したのは平安時代から室町時代にかけてのことですから、そのように感じられるのも無理はありません。

とんでもない、と思うのですね。これほどまでに社会が呪いに満ち、多くの人が呪いにかかって人生に閉塞感を覚えている時代は、かつてなかったと私は感じています。

そもそも「呪い」とは何でしょうか。「呪い」とは 

人から選択肢を奪う言葉[1]

のことです。

ある種の言葉を人からかけられる、あるいは自分でかけることによって、その人から選択肢を奪ってしまう、身動きが封じられてしまう。そのような言葉のことを「呪い」というのです。

選択肢を別の言葉で言い変えれば可能性です。つまり「呪い」というのは、その人の人生からさまざまな可能性を奪ってしまう言葉のことなのです。

この定義をもとにさらに思考を前に進めてみましょう。足掛かりとなるのは「呪いは言葉でできている」という点です。ある言葉を自分に思い込ませる、あるいはある言葉を人に浴びせることで呪いは発動します。言葉とはすなわち情報ですから、要するに「呪いは情報でできている」ということです。

人は生きていく上でいろんな選択をします。いま、これを読んでいる皆さんがいる場所、やっている仕事、一緒にいる人も全て選択の結果です。その選択の集積によって人生が織り上げられていくわけですから、選択の是非・巧拙は非常に重要だということになるわけですが、では何が、その人の選択の是非・巧拙を左右するのか。個人の選択は、その人の持っている価値観・道徳観・世界観によって左右され、場合によっては歪められることになります。

先ほど「呪いは情報でできている」というお話をしました。そしてまた、人がもつ価値観や道徳観や世界観などの観念もまた全て言葉でできています。情報でできた観念のシステムに呪いというウィルスが入り込むことでシステムの働きがおかしくなる。おかしくなるというのはつまり、いろんな刺激や環境変化などの入力に対して自分というシステムを幸福にするための最適な出力を返すことができなくなるわけです。

呪いにかかっている人の脳は常にバグっている状態にありますから、人生のさまざまな判断の局面で自分にとって最も適切なオプションを選ぶことができません。不幸になっていく人には「余計なことをする」という特徴がありますね。なんでそういう余計なことをやるのか、周囲からすると不思議でしょうがないわけですが、脳がバグってるんだから仕方がありません。

平安時代から江戸時代にかけて宮中において呪う術=呪術を扱ったのが陰陽師です。宮中というのはとても狭い世界で人間関係が固定的ですからすぐに呪いにかかる人が出てくる。そうすると陰陽師が出てきて憑き物を落とすわけです。

陰陽師というのは平安時代においては陰陽寮という国家組織に使える国家公務員だったのですが、この陰陽寮というのは占い・時間・暦・天文などを担って帝に対するアドバイスをやっていた部署です。「変化するもの」を「変化しないもの」、つまり「情報」に変える仕事をやっていたわけで、現在の言葉で言い換えれば情報省です。情報の源を押さえていた。だからこそ、とても「この先に悪いことがおきます、避けたければ・・・」といったアドバイスに強い「呪力」が生まれたわけで、これも情報と呪いの関係をよく示していると思います。

インターネットは呪いに向いてる

私は前節で「これほどまでに呪いに満ちた社会はかつてなかった」と指摘しました。呪いが情報によってできているということを考えれば、これは当然のことでしょう。なぜなら、現代の社会はかつてないほどの大量の情報が行き交う社会になっているからです。

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