詩「狂犬」


貴女が好きですと
言ったことは一度もない

貴女といたいですと
言ったことは一度もない


それでも僕は吠えていた
貴女が好きだと吠えていた

そばにいられないと知っていた
いてはならないと知っていた


暗い底から這い出した
白い陽を浴びる貴女には
私は必要ないのです

未来が光に満ちている
自由を手にした貴女には
私は必要ないのです


私は貴女を忘れません
貴女が私を忘れても

雑踏に消える私の背中を
貴女の瞳が映していても

振り返ることはありません


貴女の心の傍らに
丸い心の傍らに
私の居場所はいりません

こんな陰気な結末が
たったひとつの生き様なのです

そんな輝く幸せに
背を向けるからこそ

似合いもせぬ清らかなエールなのです

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