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日進月歩 ~Road to MBA~#43

2020/11/11:スタートアップ・ストラテジー1⑦
 前回に引き続き水曜日のスタートアップ・ストラテジー1で、数ある経営者だけでなく、スポーツ(スキー)においても共通点が多い高柳先生の講義の7回目となります。秋学期2も、引き続き高柳先生の「スタートアップ・ストラテジー2」という講義を受講する予定です。

 毎週、受講生での「スタートアップの切り口で気になった記事」という内容を共有し、そこから色々と議論が始まっている。今回は、私自身が気になった記事をさらに深堀りして考えてみたいと思います。

【記事:11月10日(火)】
  電動バイクベンチャー「テラモーターズ社」がテスラの逆張りで成長

 上記の記事について調べてみたところ、2010年4月に設立されているため設立10年となり、国内および海外へ電動2輪を中心に電気自動車(EV)を提供している企業であった。今回面白いと思ったきっかけは、「逆張り」という概念で、成功している企業がいる中で、あえて逆をターゲットにした意図としてどんな要因があったのか。
 以下が、自分なりに「電気自動車(EV)」業界におけるポジショニングを考えてみた結果である。成功をしているテスラ社を高価格・高機能として主に中国の富裕層への提供をしていると仮定すると、テラモーターズ社は低価格・低機能として主にアジア地域の貧困層向けに提供していると考えられる。メーター・ボディー・シャーシーなど調達の65%は中国から、電池・モーター・コントローラー・タイヤなど35%はインド国内として、「高品質化」を目指し、安価で提供をしている(約20万円:サポートは日本水準)。

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 EVの領域には次々と他の企業も参入しており、「低速の近郊用電気輸送車のNEV(Neighborhood Electric Vehicle)」でメルセデス、ヤマハ、イージーマイル(仏)などがあげられる。テラモーターズ社は、以下3つのコンセプトを主軸とし、インド東部やバングラデッシュなどの貧しい地域に対して展開していくことで、成長を続けている。
 ①生活者の収入源としての手段として提供
 ②農村での交通インフラとして提供
 ③都市部での駅から目的地までの「ラスト・ワンマイル」としての提供

 なぜ、貧しい地域への提供をして成長しているのか。成功の要素をいくつか紐解いてみたいと思います。大前提として、市場規模があるということがあります。逆張りというと私のイメージは、そこに「市場の魅力度」が無いから企業は参入していないのだろうと仮説をもっていましたが、そうではないということ、環境・業界状況を把握したうえで判断する必要があると、この事例から改めて感じられました(以下テラモーターズ社のHPより抜粋)。

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 また、その他の成功要因として大きく6種類の要素に分類してみました。振り返ってみても「自社の優位性」および「市場の魅力度」が見られること、私はその中でも2つがきになったので、詳しく記載いたします。

▶Ⅰ:環境を読む力
 現在はインドに対して「集中」をしていますが、実はバングラデッシュにも進出をしていました。一時は10億円規模に成長させましたが、19年に撤退を決意しています。その背景には、バングラデッシュには税制や交通法規を決める3輪EVの定義がなく、ローンも使えないなど事業の将来に対し不確定要素が多いためということでした。そこでEV購入時の補助金に加え、電池や部品の国産化を目指すこと(24年には3輪車を、25年には150cc未満の2輪車の販売のすべてをEVにする計画)を打ち出している、インドのモディ政権に集中して成長しています。成長している「バングラディッシュの撤退」を決断すること、また、「インドへの進出に集中したこと」こそが成功の要因の主たる要因であるのではないかと考えました。

▶Ⅱ:低所得層でも利用できるローンの仕組み
 また、ここで問題となってくるのが、低所得層に約20万といえど購入できる仕組みがあるのかということです。うまくこの要素に着目し、前述のインドにもあったとおり、低所得層が購入できるローンの仕組みから提供することで、購入できるサポートも実施している。企業として「購入が可能な環境」までを提供していることこそが、さらなる成長をしていく要因であると私は考えています。

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 しかし、このような成長の中で日本に普及しない要素はどんなものがあるか。セグウェイの事例が出て、なぜはやらなかったのか・・・EVはここまでメリットがある中で何で流行らないのか、などの提議をいただいた。
 ✔  地域制(充電スポットがない、車が大きくて車庫に入らないなど・・)
 ✔  電気自動車として、2輪・3輪・4輪が一緒の括りになっている
 ✔  買っても指定地域のみでしか走れず、公道が走れない

 この事例から見てとれるように新しいビジネスモデルを考えて成功しているのではなく、「環境の変化」「地域の変化」「ターゲットの変化」などに柔軟に対応し、違った視点からの発想、そこが成長市場となるような仕組み自体を提供することで変革させるトータルサービスの提供、大企業と戦うためのポジショニングと戦略、新型コロナウイルスという環境の変化を”チャンス”として活用しする、といった全てが詰まった事例ではないかと考え、記事としてさらに深堀りをさせていただきました。

        立教大学大学院ビジネスデザイン研究科   平岩 宗

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