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J1第25節 川崎フロンターレ対京都サンガF.C データレビュー

コロナ禍でホームでの声出し応援が2試合目となる川崎はアウェーで敗戦した京都と対戦する。前節清水に勝利し首位マリノスがG大阪に負けたことで勝ち点差は5に縮まったが依然として逆転は難しい状態。川崎は奇跡を信じして勝ち続けるしかない試合だ。一方の京都もホームで勝利している相手だけに自信を持って臨む試合だ。

EPP 独自に計算した効果的にパスを繋げたかを示す指標で相手守備ブロックの中にパスを送れると高くなる。
PPS パス/シュートの値でシュート1本に対して平均的に何本のパスを繋いだかを示す。
パスヒートマップ 上図の各エリアにパスが入った回数を示しており、パスの本数が多いほど濃い色になる。

1.前半~ハイプレスとビルドアップの攻防~

前半のボール支配率は京都が53%とほぼイーブンだが若干京都が上回った。しかしEPPを見ると川崎が26で京都の12.4の2倍以上の数字だった。またPPSも川崎は18.3と非常に低い数字の一方、京都は52.3と高い数字だった。このような数字になった要因として、詳しくは後述するが川崎がハイプレスでボールを奪い少ないパス数でシュートを打っていたからだ。そしてハイプレスで奪えなくても、京都のパスヒートマップを見ればわかるように守備ブロックの外でボールを回させることに成功していた。川崎は裏へのボールが6本と多いがポジトラでスペースのある攻撃が多かったからだ。

・川崎のハイプレスはハマっていたのか

前半の川崎は前述したようにハイプレスでボールを奪い少ないパス数でシュートに繋げていた。しかしそのハイプレスは本当にハマっていたのか。

例えばこの10分15秒のシーン。京都は川崎ビルドアップの構造的弱点であるWG裏の荻原にパスを出す。すると川崎はIHの脇坂がサイドに追撃する。それに対して京都はIHがサイドに出て来たため中央の武田へパス。そこをアンカーの橘田が前に出てインターセプトした。

そしてこの20分45秒では悠が上福元にプレスをかけるが川崎へのパスコースを切りきれずパスを出されてしまう。橘田も川崎を潰せず川崎はWG裏の白井へパスをダイレクトで出すがチャナがギリギリ足を出してカットした。

ここで紹介した二つのシーンは橘田やチャナがリスクを冒してギリギリインターセプトできた。またWG裏を使われた27分20秒と39分25秒のシーンでは京都の選手がミスしたことでボールを奪えた。これだけリスクをかけているので14分30秒のようボールを速く回されて一対一で負けると運ばれてしまう。もちろんしっかりとハメてボールを奪うシーンもあったが、ギリギリの場面で奪うことが多く、言い方は悪いが京都のクオリティに助けられたと言えるかもしれない。

・ハマっていた京都のハイプレス

一方で京都のハイプレスは川崎のビルドアップに上手くハマっていたように思う。京都も川崎と同じ433でハイプレスをかけWGが外切りをしてWG裏を使われた時はIHが追撃するのも同じだ。しかし川崎と一つ異なることがあった。

それがわかるのがこの41分50秒。川崎はGKの丹野からCB谷口を経由してノボリへパスを繋げた。これに対して豊川がまず丹野にプレスをかけ、三沢が谷口へ外切りでプレス。谷口はそれを回避してノボリへパスを出したので京都IHの福岡がノボリにプレスをかけた。ここまでは川崎と同じ。異なるのはノボリのサポートへ行った橘田を一度丹野までプレスをかけていた豊川がしっかり捕まえていたことだ。そのためノボリはパスの出し所がなくハマってしまった。

川崎は先述したようにWG裏使われて中央に戻されたところをアンカーの橘田が前に出てギリギリで奪っていたが、京都はしっかりCFがアンカーを抑えることを徹底していた。川崎はハイプレスや撤退守備で奪ってそのまま運べることが多かったためビルドアップの回数自体は多くなかったが、12分10秒や16分15秒などハマってしまうシーンも多かった。また前節と同じように26分に山村が運んだがサポートがなく失ってしまうなど、ビルドアップはやはり改善できる部分が多いと思う。

2.後半~ボールは持てなくても大丈夫~

後半の両チームのEPPを比較すると川崎が26から28.8になり、京都が12.4から16.4へと両チームとも少し増加したがほぼ変わらず。ただPPSを見ると川崎は18.3から68.8へと大幅に上がり、京都は52.3から26.6へと減少した。前半にカウンターからシュートを打っていた川崎だが、強度も落ちてあまり高い位置からプレスを行うことが少なくなりシュート数が減少したためだ。一方の京都は川崎を自陣に押し込む時間帯があり、そこでシュートシーンをいくつか作ることができた。パスヒートマップを見ると川崎は左ハーフバイタルに最も多い5本のパスが入っているが、これはカウンターでマルシーニョと荒木の一対一が多かったためだ(51分30秒など)。

・クローズドな展開に持っていくことができた川崎

今シーズンのレビューで書いてきたことだが、川崎は強度高くハイトランジションが得意な相手には苦戦しやすい。そのような相手にはなるべくクローズドな展開に持っていくことが重要だ。クローズドと言ってもボールを保持してトランジションを減らしていくのが理想。荻原のクロスバーを叩くシュートはあったもののエリア内に進入されることは少なく60分くらいまではできていただろう。

そんな中で決まった三点目は前節の三点目と全く同じ形で、バックパスを受けた脇坂が右サイドPA角あたりから、逆サイドからゴール前に飛び込んだマルシーニョに浮き球で合わせた形だ。この形は難易度が高い分非常に有効。その理由として二つあり、まずバックパス直後に裏へボールが出るため相手がDFラインを上げた背後を使える、そして逆サイドのマルシーニョをマークする選手はボールとマルシーニョを同一視野に捉えられないことだ。このファー裏を使う攻撃は81分に宮城でもあったためチームとして狙いがあるのだろう。

60分あたりまでは京都のプレスに対して川崎のボール保持が上回ることができていた。ここで勢いに乗った川崎は京都にハイプレスをかけるが、前半のようにギリギリで奪うこともできず、ついに突破されてしまいクロスを上げられて失点してしまった。この突破のされ方もWG裏と同じように当ブログでずっと指摘してきたやられ方だ。悠が上福元にプレスをかけるが京都アンカーの川崎がフリー。そこに遠野が遅れて出ていったため、遠野とマルシーニョの間を三沢へ楔を入れられる。すると川崎の中盤3枚は横方向にギャップができるため、その間をイスマイラへ再び楔を入れられてサイドに展開されクロスで失点。ボールを奪い返すためにハイプレスをかけるのは良いが、やるならこのフロントエリアの管理をしっかりしたい。

こうして京都は川崎のハイプレスを構造的に攻略して一点を返した。すると流れは京都に傾く。川崎は現在39失点でこれはリーグ10位の成績で優勝争いするには失点が多い。この数字だけ見ると川崎は守備が上手くいっていないと思われるかもしれない。しかしプレビューでよく書いているが、この失点のほとんどはハイプレスを突破されたりカウンターを受けたりなど、守備ブロックが整っていない状況での失点だ。この試合でも京都がボールを握り続ける時間帯はあったが守備ブロックを形成できていたので失点はしなかった。確かに数回決定機を作られたもののしっかり人数はそろっていてシュートブロックできていた。このように川崎はたとえボールを持てなくてもクローズドな展開に持っていければ大丈夫。もちろん理想はボールを持つことだが。

3.まとめ

川崎はホームで二連勝を飾った。一方でマリノスはホームで二連敗。まだマリノスがリードしているものの残り二試合で勝ち点差2と現実味のある数字にはなった。ただ水をさすようにはなるが、この試合はハイプレスとビルドアップのところで京都にしっかり対策されていた。しかしデュエルを見ると川崎が64勝で京都が37勝、ドリブルは川崎が12/16回成功で京都が5/19回成功と個人のレベルで川崎が圧倒していた。また京都がカウンターでロングボール一本を蹴ってることが多く川崎としては対応もしやすかった。もちろんチームとしてクローズドな展開に持ってくことができたのはプラスだが、ハイプレスとビルドアップの攻防は高めていく必要がありそうだ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

4.データ引用元


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