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J1第5節 川崎フロンターレ対セレッソ大阪 レビュー

開幕戦以来のレビューとなります。その間に川崎はリーグ戦で鹿島、湘南そして新潟と対戦し、1勝1分1敗とやはり苦戦が続いている。そして今節も湘南戦と同様に昨シーズンダブルを許してしまったセレッソ大阪とホームで対戦する。鹿島戦以来の勝利で流れを良い方向に持っていきたい。

1.概略

開幕戦のレビューでも述べたように、今季川崎の取り組むべき課題はビルドアップ。昨シーズンにセレッソと対戦した時も442のミドル・ハイプレスに苦しんだ。

セレッソのミドルゾーンより高い位置での非保持は2トップがどちらかのサイドに限定し、サイドに追い込んで最終的に相手SBでハメる典型的な442プレス。このプレスに今節もハマってしまうのかが注目ポイントだった。結論としてはセレッソのプレスが想定より強度が低く、シミッチや橘田に時間を与えてくれていたため、あまりハマるシーンは少なかった。ここでは正直セレッソに助けられた部分もある。

前半はこのように川崎のボール保持にセレッソがプレスをかける展開がほとんど。一方でセレッソも自陣からボールを繋いで前進する意図は見せる。狙い目としてはSBで特に山中だ。小菊監督もコメントしていたが、川崎のプレスは外切り433だからSBが空くというスカウティングと、山中のクロス精度を踏まえると、川崎にとってもそこが非常に脅威となる。

そして後半はよりセレッソのプレス強度が落ちたこともあり、川崎は敵陣までボールを運ぶのに苦労しなくなった。そのため試合展開としては川崎がゴール前でボールを保持してゴールを狙い、セレッソはそれを奪ってカウンターもしくはゴールキックからのロングキックでゴールを狙う展開だった。

2.川崎二通りのビルドアップ

今節の川崎は前述したようにビルドアップで苦労することは多くなかった。前提として今節のセレッソのプレス強度が前回対戦時や、川崎が苦労した時の相手に比べて低かったわけだが、具体的にはフロントエリア(2トップ背後のスペース)に立つ川崎の選手をフリーにしてしまっていた。それを利用したビルドアップがまず一つ目だ。

・フロントエリアを利用したプレス回避

この28:50のシーンは非常にシンプルだがこの日の川崎ボール保持とセレッソ被保持の構造を表している。登里がボールを持った時、香川と加藤の間にポジショニングしているシミッチがフリーになり、ボールを受けてすぐ前を向きマルシーニョへの長いパスを選択した。このように川崎対策では最も重要と言えるアンカーにボールを入れさせないという2トップのタスクが、この日のセレッソは徹底されていなかった。そのため川崎はボール保持に余裕を持てた。

上の例は川崎にとっては外的要因でフロントエリアを利用できたシーン。一方で内的要因つまり川崎自身によってフロントエリアを利用できたシーンが次の11:25だ。画像の時間が間違っています。すみません。

このシーンは今季川崎が取り組んでいるビルドアップの改善策で、山根が内側に入る偽SBの形でセレッソのプレスを回避した。シミッチが田邉と大南の間に降りるダウンスリーで、シミッチが大南にパスを出した時山根は内側でフリー。奥埜は橘田を見ており、鈴木は背後のチャナティップが気になる。そのため山根がフリーになった形だ。このように山根が内側に入りフロントエリアでボールを受けることでプレスを回避するシーンが複数あった。

この30:10からの流れも山根が内側に入ったことが起点。田邉が山根にボールを入れ、山根が橘田へそしてフリーの大南へワンタッチで繋いでプレスを回避した。そしてこれまでと異なったのが、シミッチが大南と家長の中継地点を作っていた事。これまでの川崎は山根が内側に入ったことで右CBから家長へのパスコースが繋がらず、ビルドアップが滞ってしまうことが多かったが、今節はシミッチが真ん中やサイドに降りることでこの問題を解決しようとしていた。
ただシミッチがこの役割を負うべきかどうかは微妙だ。できれば山根以外の残り三枚がしっかりスライドすることで解決したいが、ただこの家長へのパスコースを作る意識が見られたのは改善点と言えるだろう。

・セレッソSHを引き出しその背後

そして二つ目はセレッソのSHを引き出してその背後を使うプレス回避だ。このプレーは回数としてはあまり多くなかったが、相手を見て空いたスペースをしっかり使うことができた。

それがこの二つのシーンだ。両方ともCBと、降りて来たチャナや2トップ間のシミッチでパス交換することで、CBを解放。するとセレッソSHがその川崎CBにプレスをかけてくる。そこで空いたサイドのスペースを使うことができた。これは山根偽SBのように、自ら狙って起こした現象ではないと思うが、相手を見ることができていた。

3.川崎442ミドルブロックとセレッソボール保持

川崎は通常の433ではなく非保持でチャナティップを一列前に出した442でミドルブロックを敷く。この変更が異なるメンバーによる一時的なものなのか、それとも完全にチーム戦術を変更したのかはわからない。昨シーズンのレビューでも書いたように、川崎外切りハイプレスにはフリーのSBへボールを届けるという対抗策が一般化し、それによって中盤3枚が動かされてしまうなど、プレス回避されてしまうことが増えた。セレッソもそれを狙ってくると予想しての442かもしれない。

これに対してセレッソのボール保持はCBを中心にGKキムジンヒョンを使ってボール保持を安定化させる。川崎と違ってGKを使ってやり直すことができていた。例えば川崎の13:40はソンリョンに下げることができれば逆サイドに展開できた。一方でセレッソの36:20ではキムジンヒョンを使ってボール保持を安定させた。

こうしてボール保持を安定させたセレッソだが、その後の狙いはショートパスでボールを前進させるというよりは、ロングボールでの前進を狙う。そのターゲットはさきほどの36:20のように加藤の場合もある。しかし最も狙っていたのは山中だろう。

そしてそれをピッチ上で指揮していたのが香川だ。香川はビルドアップで鳥海と山中の間に降りて来て、山中に高い位置へ上がるように指示していた。この10:15がまさにそのシーンで、前述したジンヒョンを使ったビルドアップから山中へロングボールを蹴った。

このようにセレッソのロングボールの狙い目は左サイド。27:20や32:05では山根に対して山中と加藤や為田で数的優位を作りだしていた。このように山中へボールを届ける時は、必ず誰かが山根の背後にポジショニングしていた。そのため山根は山中へ出るのを躊躇するシーンが多かった。それによって17:45のように山中がフリーでクロスを上げることができた。

このようにセレッソのロングボールは前後半共に脅威だったが、細かいパスでのプレス回避はあまり質が高くなかった。しかし川崎の442ブロックもあまりコンパクトとは言えず、もしこれを続けるなら改善が必要だとも思う。

4.まとめ

最終結果は0-0で引き分け。ホーム初勝利はお預けとなった。ずっと当ブログで注目しているビルドアップに関しては、山根の偽SBを継続してチャレンジしていく方針で良いように思う。WGへのパスコースを繋ぐなど完成度を上げていきたい。
しかし今節は新たな問題が露呈した。後半のようにたとえボールを敵陣まで運ぶことができても、守備ブロックをなかなか崩せないということだ。これまでビルドアップを多く取り上げてきたのは、それを改善できれば崩しの段階は問題なくゴールを増やせると考えていたからだ。しかし実際はそんな簡単ではなかった。負傷からの復帰組に期待したい。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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